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改装記ライブリマスター  作者: 聖千選
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第7話 AR(拡張現実)島への挑戦!!(九)

今回のお話のSF考証で参照した資料を後書きに記載します。

参考していただければ幸いです。

(九)


 巨大な戦士を前にして残されたメンバーは死のフチから意識を取り戻す。


 「あれは・・・。」


 「救世主ですよ、きっと。」


 この状況で死を免れたとなればその巨人は神か悪魔か判らない中でもそう思えるところだろう。ともかく後はビーガルとサビの怪物の決闘の場と化した祐市にはお決まりの展開である。しかし現実世界では初めての事例である。そしてビーガルは敵と対峙しながらも周囲の異様な空気を読んだ。ここは既に劣化媒体のフィールドと化している。何が起こるのか分からない。向かい合うこの敵にも自分のことは既に分析されているのだろう。

 祐市はリマスターパーツを解除して即座に巨大戦の場へと駆け出した。立ち会ったオペレーターチームはことの経緯を知らないため何がなにやら概要がさっぱりつかめなかった。


 「これは・・・私は巨大化しているのか?」


 祐市は現場に向かいながら焦った。今回のビーガルは自身が巨大化できたことに未だに戸惑いを覚えている。誰よりも彼を見てきたセコンド役の祐市にはそれが気掛かりで仕方がない。


 「グオオオーーーーーーーッ。」


 「!!・・・ハッ。」


 それでも襲いくる敵には咄嗟の行動で間合いをとり瞬時に怪物の顎に「バシッ」「バシッ」っとキックを見舞う。どうやら戦闘のプロではあるようだ。

ビーガルは戦いを優位に進めるなか、その周囲に微細な振動を感じていることを見逃さなかった。


  (なんだこれは・・・?)


 そう感じた刹那、突然地面が陥没した。ビーガルも対応できずそれに巻き込まれる。一気に肩まで浸かる身体を起こそうとするビーガルはその地面にタランチュラのような影を見た。


 「あの新種か?」


 祐市は下山するさなか、山の中腹から戦いの全容が目に入る位置にきた。祐市が目にした新種の微生物型のサビは最初のミカ時と姿は同じながら、森の大木をその顎で食いちぎるほど巨大になっていた。

 ビーガルが埋まる地面の裂け目から続々とその新種が増殖して辺りの地面を食い尽くして腐食した。そして、そのぬかるみはビーガルの身体をさらに埋没させてついには祐市にも見えなくなった。


 (ビーガルが負けた。)


 祐市の中に一瞬、その思いがよぎったが、すぐに我に帰りその現場近くにいるであろう大杉たちの行方を追った。

 リマスターパーツ装着時に島の現状を把握していた祐市は一直線でその現場に向かっていた。大杉たちと遭遇したのはその未知の途中のことだった。幸い逃げ遅れたメンバーは全員無事であったが、誰もが一様に震えをきたしていた。

 「大丈夫か?」と言いながらそのメンバーの腕を肩に掛ける祐市を見て多すぎは安堵する。それと同時に二人はその道端でしゃがみ込む人影があることに気づく。


 宮下であった。誰よりもいち早く現場から離れたこの男は何事もなかったかのように足元の土壌をつかんで手持ちの機械で地質を調べていた。


 「怪物に怯えて逃げ出したリーダーがずいぶん呑気なご様子ですな。」大杉が窘めた。


 「逃げるというのも戦略のひとつだ。今どき困難に逃げずに現場に居続ける美徳は非効率的なことさ。」


 「避難勧告は無視するダブスタなクセに!」


 「先にも言ったが、無駄な時間は使いたくない。思わぬ怪物のハプニングで余計な時間を取られた。イチイチ立ち止まるわけにはいかない。」


 宮下は対抗策として島の浄化作用のある凝固剤を再度サンプルする企てだった。しかし、それでは怪物を追い払うまでに至らない。宮下には逃げる最中に見たあの漆黒の巨人の力がこの腐敗した離島を復活できる鍵になると睨んだ。あの巨人は地下深くに埋められた。宮下はいまだに地面を見ては粘土質の地面の感触を触れている。


 「あの巨人を復活させる。」


 樅乃山に一同が戻って早々、宮下は宣言した。


 「それならば、我々も協力しよう。」


 対策を語る宮下たちの前に太陽製作研究所の諸角、日本藪蚊学会の明日葉ら各研究機関が樅乃山の開発本部に集まっていた。島に残っていたのは宮下だけではなかったのだ。

 サーキュラーエコノミー。廃棄することなく循環して資源を再活用し循環する経済の考え方のモデルケースでもあるこの八尾須美島には挙って投資していた。

 この島を捨てることは結局、リニア型経済と変わらない。彼らにとってはこの逆境こそがチャンスと捉えて、今ひとつになろうとしていた。


 それを期待していたLAR社の佐野は高齢者に該当しているためすでにこの島を離れておりついにはその光景を目の当たりにすることができなかった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回の参照記事を以下に記載します。


三菱ケミHD、新興企業の開発支援 代替たんぱく質など、循環経済へ技術革新

(日刊工業新聞2020/11/19掲載)

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/578853


水銀汚染土を不溶化 東京カンテイが実証、処理費低減など訴求

(日刊工業新聞2019/12/10掲載)

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/540971


次回もお楽しみに。


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