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改装記ライブリマスター  作者: 聖千選
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第7話 AR(拡張現実)島への挑戦!!(五)

今回のお話のSF考証で参照した資料を後書きに記載します。

参考していただければ幸いです。

(五)


 この島の再生には資源の再生産だけでなく嘗てこの島で生活していた人々を働き方のモデルケースにしたい事があると言う。SDGsの目標達成が各企業で叫ばれるなか、先人たちの知恵を拝借しようというもの。長年の閉塞感が漂う現代のこの国において懐古主義の訴えはよく響いていた・・・しかし・・・。


 「紘一、我々はこの島を甦らせるために来たんだ。」


 「ふっ、前にここで工場を建てた輩も同じようなことをほざいていたよ。この島の発展のためとね。でも実際は自分たちのためだったんだよ。工場の利益のために自然を汚し土壌を荒らして島の資源を根こそぎ奪っていった。」


 「だから、この計画はその反省から・・・。」


 祐市の説得を遮り、紘一はおもむろに手にしたジュラルミンケースを掲げる。


 「こんな微生物を使ってこの島の生態系を破壊しようとしているのか?」


 「それは太陽製作研究所の・・・貴様、諸角さんたちをどうしたんだ!」


 「さあな・・・。」そう言って紘一は爪先で土を叩いた。祐市はその仕草から諸角隊がその足蹴の餌食になった事を知り憤って、鼻息を荒げた。


 (グジュ、グジュ・・・。)


 紘一の手にしたジュラルミンケースから不気味な音がする。同時に紘一は腐敗したような柔らかい感触を覚えた。


 「こいつ!」


 それは紘一に足蹴にした怪物がケースを腐らせていた。怪物にとってケース内の微生物もまた栄養源となる。


 紘一は思わずケースを道端に投げ飛ばした。そのケースのジュラルミンは溶け出して中の微生物が衝撃で飛び出してきた。祐市たちがその様子を目視できるほど中の生物は微かではないほどの大型化していた。タランチュラのようなその生物は地質を変化させるが、土壌の色合いは変色しどろのように溶け出した。溶け出した劣化泥はそのまま怪物化したサビに流れ込み餌となる。


 「うっ!」紘一が思わず仰反るほどサビは周囲を腐食化させて自らの体に変えて巨大化していく。


 「紘一、僕らはこんな事をするために来たわけでは・・・。」


 「うるさい!」紘一の目はより血走る。


 「兄さん、もう止めよう。」いても立ってもいられず舞は紘一に駆け寄る。


 「舞・・・。」


 妹を前に紘一はようやく我に帰った。だが、その頃には紘一兄妹の周りには腐食した地形となっていた。サビにも足蹴にされた因縁は忘れないらしい。切り立った崖が連なる道の先にまで追い詰められた兄妹を祐市はどうすることもできずに見守ることしかできなかった。

 その祐市を見つめて紘一はようやく笑みを見せた。


 「じゃあな・・・。」


 そう言って、紘一は変色した足元を蹴り上げた。崖は切り崩されてサビの怪物と共に奈落へとその闇へと消えていく。陽が没した今となっては祐市もその行方を確認することはできない。


 「悪夢はこれで終わりですか?」


 真田は声にしたと同時に地べたに尻餅をついた。祐市は後輩を落ち着かせるためにその肩をポンポンと叩く。幸帰り道は腐敗せずに確保されていた。


 「そうだな・・・帰ろう。」



 一方で日本薮蚊協会の明日葉チームが倒れ込んだ諸角チームを発見した時は日が沈もうとしていた頃だった。完全に日没となっていたら発見することもなく、去って行ったことだろう。


「おい!どうした?」


 薮蚊協会の現場チーフである明日葉は慌てて声をかけて近づく。「うっ・・・。」手を掛けたことで諸角が、反応を見せて明日葉は安堵した。


 (ゾワ、ゾワ・・・。)


 たが、周りに不穏な空気を覚える。明日葉は長年の薮蚊の研究で肌の敏感さには自信があった。


 (ゴゴゴ!)


 合流した二班の後ろから崖が崩れる音がした。明日葉の予感の通り霧を纏いながら怪物が目を光らせていることが、明日葉チームの面々も目撃する。


最後までお読みいただきありがとうございます。


今回の参照記事を以下に記載します。


DX 変革を迫られる日本の産業(中)自動車の新たな事業機会

(日刊工業新聞2019/11/20掲載)

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/538758


次回もお楽しみに。



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