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廃村


 俺の趣味はドライブだ。結婚してからは週末だけのお楽しみとなってしまっているが、理解ある嫁のおかげで週末だけはいくらでもドライブをしてもいいことになっている。

 今日もドライブを楽しんでいたがうっかり道に迷ってしまい不本意な遠出となった。それもかなり遠くの見知らぬ田舎まで来たようだ。普段遠出をする時は嫁も連れてくるのだが、今日は元々こんな遠くに来る気はなかったので一人ぼっちだ。


 帰りのナビを入れる前にせっかくなので少しここらをぶらつく事にする。どうやらここらはちょっとした集落があったみたいだが、もうずっと昔に廃村になったようだ。家屋のほとんどは朽ち果ててしまっていて、なんだか寂しい雰囲気を出している。

 ビクビクしながら車をUターンさせようとしたら、ふと井戸があることに気づいた。俺は井戸を見たことが無く、また喉も渇いていたのでせっかくだから井戸の水を飲んでみることにした。


(おー、これはつるべというやつだっけか。なんか田舎を舞台にしたアニメとか夏休みに田舎いくゲームでよく見るあれまんまだな)


 そんな事を考えながらキコキコと古びたつるべを動かす。ゆっくりと桶が底から引き上げられる。初めて井戸を使うが、意外と深くまで掘られているようだ。


「よいしょ……うわぁ!!」


 引き上げられた桶の中を見てみると……なんと水は黒ずんだ赤色に濁っていて、何か腐敗臭もただよっていた!


(貯水されてからずっと使われずに放置されて、変色するほど腐ってしまったのだろうか?)


 とにかくこんな水を飲むわけにもいかないので桶を放り出し、車へと戻る。血にも似た井戸水を汲んでしまい、なんだか背筋が寒くなった俺はさっさと帰ろうとエンジンをかけるが……

 なんだか調子が悪いみたいで、何度キーを回しても始動してくれない。仕方がないのでレッカーを呼ぼうとスマホを取り出すと、なんとここは圏外だった。

 とにかく落ち着いてどうするか考える。俺はドライブは好きだが、車に詳しいわけではない。今まで出先で何か問題があればすべてスマホで調べて対処してきたのだ。

 なので、とりあえず車を降りて誰か人に助けを求めることにした。圏外なので電話も出来ないのが本当に歯がゆい。


(……ん、ドアが開かない!? 鍵は開いてるのにどうしてだ?)


 なんとドアまで壊れたのだろうか? 運転席だけでなく、助手席から出ようと試みるも結果は同じ。ならば後ろはどうだ、と後部座席に目を移したら……


「う、うわああああああああああああああ!!!」


 なんと後ろの席には、水に長い間浸されたみたいにぶよぶよに膨れ上がった、"男のような"何かがいた!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「奥さん、こちらが旦那さんのスマホの現在位置です」

「警部さん、ありがとうございます。今すぐそこへ……」

「もちろんです。しかし旦那さんも不吉なトコに居るようですね。何もなければいいですが」

「不吉?」

「ええ、この場所はですね……」


 今から二十年ほど前。とある小さな村の生活用水をすべてまかなっていた井戸に、原因不明の毒物混入事件が起こった。数十人の村人は全員死亡してしまい、すべてを失った村長は廃村の根源である井戸へ身を投げたという。

 呪われた土地と見なされた村の跡地には、忌み嫌われて活用されることも、人が立ち入ることもなくなり、朽ち果てた家屋と忘れ去られかけている凄惨な事件だけが残っている。


「さあ着きましたよ、奥さん。あの車はおたくのモノですか?」

「はい、そうです。あの人ったら、なんでこんな薄気味悪いとこに……」


 二人が車に近づき車の中を覗くと、そこにはまるで毒を盛られたように緑色に体が変色している夫の姿があったのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


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