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第1話Part7『森羅さん、どこにいるの』
牧野:湾岸 昼
秋のある日、私は趣味の釣りに興じていました。
ボーっと一人で考えるのは森羅さんのことばかり。
本当に、一体どこへ行ってしまったんだろう。
森羅さんの家に押しかけたら、すでに転居済みでした。
大家さんも行き先は知らないそうです。
森羅さんは東京にいる。
本当にいるかな?
多少の不安を感じつつ、私は自分の直感を信じることにしました。
絶対にミュージシャンになる。そして森羅さんと再会する。
私が考え事をしていると、魚に逃げられてしまいました。
いけない、いけない。ちゃんと釣りにも集中しないと。
牧野:自室 昼
秋田の厳しい冬を乗り越えて、春が来ました。私は自動車免許を取得しました。
雪国は車が無いと生活が成り立ちません。しかし高校卒業後即上京する私には
車は不要だったんですが、父さんが中古の安い車を買ってくれました。
高校時代店の手伝いで貯めた100万円が上京資金です。
家はキチンとした仕事が見つかるまで、暫くは指野さんの家にご厄介になる予定です。
引越し準備を着々と済まし、後は家を出るだけになりました。