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恋のてつがく!  作者: 蜂矢ミツ
8/8

(おまけ)恋は『盲目』、愛は『刮目』

 てってって。

 とっとっと。


「あらよっと」


 翠狸は目隠しをしながら、よそのお家の塀の上を、軽快に進んでいます。

 多少は危ないかもしれませんが、落ちても大した怪我はしないでしょう。

 それでも気になってしまうのか、紅狐がその横を、あまり音をたてないようにして付き添っています。


「とおっ」


 そんな心配もよそに、塀の途切れるところで、翠狸は空高く跳び上がり。

 くるくると空中で回転し、地面に華麗に着地――はできず。


 近くにあった家の屋根に、べしょっとぶつかってしまったのでした。


「なんで、そういうことをしちゃうのかなあ……」


 それでも普段からすれば、まだマシな部類なのでしょう。

 怒ることもなく、もはや慣れっこというように。


 屋根からずり落ちる前に下にまわり、紅狐は翠狸をナイスにキャッチしたのでした。




「まだ、検証するの?」


 いいかげん、危ないことはやめてほしい。

 そんな空気を滲ませながら、怪我がないことを確認するかのように、紅狐は翠狸をくすぐっています。


「いやあ、目隠しなんてしたことなかったからさ。

 恋は『盲目』なんていうらしいし。なんでかな! って思ったら、つい……」


 多少は、心配をかけてわるいとは思っているのでしょう。

 翠狸はばつがわるそうにちいさく身じろぎをして、上目遣いに紅狐を見上げました。


「でもね、分かったこともあるんだよ!

 『盲目』になると、想像で補っちゃうんだよね。

 きっとこう、こうであってほしい、こうなはず! って。


 だから、相手のありのままを見ずに、自分の中に作り上げた相手を好きになった状態が、『盲目』ってやつなのかも」


 わかっちゃった! とでもいうように、両手を口に当ててにししと笑う翠狸のその姿をていると、紅狐も心配などはどうでもよくなって、一緒に笑ってしまいたくなるのでした。

 これが、惚れた弱みというやつか、などとわずかに自嘲しながら。

 ため息をつきつつも、それ以上は小言も言わず。紅狐は翠狸を抱いたまま、歩きだしました。


「でもって。紅狐さんは、ぼくのこと、とってもよく見ててくれるから。

 ぼく、愛されてるな! って思ってさ。


 だからきっと、恋が『盲目』だとしたら、愛は『刮目』なんだろうな、って!」


 ぼく、上手いこと言ったよね? などと調子に乗った翠狸を横目に見つつ。

 紅狐は、まあ、一理なくもないかな、などと思いながら。


 日が沈みはじめ、辺りが赤く染まる中。

 ふたりは、共に家路についたのでした。

おまけ。蛇足です。

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