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恋のてつがく!  作者: 蜂矢ミツ
6/8

『恋』の歌

「どうしてみんな、『恋』を歌うんだろう?」


 古今東西、恋は実に様々な形で謳われています。

 その最たるものが、歌でしょう。

 近現代のポップミュージック、西洋のクラシック音楽。

 大昔から書かれてきた、詩歌、和歌。

 どれをとっても、『恋』とは切っても切り離せないものがあります。


 でも、どうしてなのでしょう。

 『恋』について考えている内に、翠狸はふと、そう思ったのでした。


 自分でふんふん唸って考えてみたものの、答えらしきものが見つからなかったのでしょう。

 翠狸は、紅狐のきものの袖を引っ張って、もう一度問いました。


「紅狐さんは、どう思う? どうして『恋』は、こんなにも多く、歌われるんだろう?」


 紅狐は、しばらくじっと動かず、翠狸を見つめた後。

 その頭をやさしく撫でて、静かに答えました。


「伝えたい、とか、募りすぎて溢れんばかりの想いを吐き出す、とか。理由は、それぞれ違うだろうけど。

 恋を、その想いを『秘める』のって、本来、つらいものだからじゃないかな。

 ……なんでもあっけらかんと、ひどいことじゃなければ全部喋っちゃうキミには、分かりにくいかもしれないけれど」


 好きなら、好きって言えばいいじゃんか。

 そんな風に思ってしまう翠狸には、確かに、恋の歌はむずかしいのかもしれません。


「つまりは、一言では収まらない想いを表すために、歌にする、ってことかなあ」

「……その大きくなりすぎた火に、焼け焦がされることがないように。あるいは、水嵩が増えすぎて、濁流に流されて溺れ死ぬことのないように。想いに形を与えることで、ある程度の整理をつけられる、ということもあるかもしれないね」


 納得できたような、やっぱりまだ、なんだかよく分からないような。

 甘い恋、悲しい恋、恋の喜び、恋の苦しみ。

 様々な恋の歌。

 似ているようで、どれも違う。


 翠狸はそれらをひとつひとつ、噛み締めるように歌いながら。

 ぼくの恋は、どんな歌になるだろう?

 そんなささやかな思いを巡らせたのでした。


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