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二重奏の終わるトキ  作者: 望月夕雨
1 再会
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4話 復讐の兆し

 今度こそおいていかれることのないように、慌てて残っていた動物たちを拾い上げて後を追う。なんか、死骸を抱えてるって思うと嫌な気分だ。


 今ルロは担いだ動物がなだれ落ちないようにすることにも気を遣わなければいけないから、割と簡単に追いつくことができた。


 ……とか調子に乗ってるとどうせまたすぐ滑ってこけるんだろうけど、と思った矢先に案の定足を滑らせてあおむけの状態で数メートル落ちる。


 当然ルロにもぶつかるわけで。仲良くさらに数メートル転げ落ちる。


「……おい」


「わ、わりぃ……」


「次やったら殺すぞ。なんだったら今殺してやってもいいぞ」


「やめろ、頼むからそれはやめろ」


 ルロの目が本気で殺しに来てる。悪かった、とりあえずすぐ殺すって言うのやめてくれ。ルロなら本気でやりそうで怖い。


 散らばった動物を拾い集めてからルロは俺の後ろにまわる。


「お前が先に行け」


「わ、わりぃ……」


 さっきと同じ言葉しか出てこない。まあ俺が後ろにいたらまた同じようにこけるだろうから適切な行動ではあるんだけど、なんだかなあ。


 さっさと行け、と冷たい目が言っているのでひたすらに前を進むことだけを考える。


「なあそういえばさ」


 進むことだけに集中しようとしても結局は違うことを考えるのが俺だ。


 落ち葉を踏みしめながら前を向いて問いかける。後ろでバキッと枝の折れる音がした。


「一か月後の俺がお前の仲間になることを決めた、みたいなこと言ってたけど。あれってなんだ? 仲間になって何をするんだ?」


「喋ってる余裕あるならもっと早く歩け」


 チッと舌打ちをして少しペースを上げる。喋る余裕と歩く速度は関係ないと思うなあ。今くだりだし。


「まあ、簡単に言うと()()だな」


「なんの? てか誰に復讐?」


「俺の……やっぱ言わない。言ったらお前逃げ出すだろ」


 ……なんかヤバいことに巻き込まれてるんじゃねえか俺。できるならすぐにでも逃げ出した方がよさそうな予感。


 逃げ出すっていってもあてがないから結局ここにいるんだけど。


「じゃあリトライってなんだ」


「昨日も言ったろ、()()()()だ」


「それくらいはわかる」


「じゃあなんだ」


 もうちょっと具体的に、と言おうとしたが俺は新たな問題に気付く。

 言ったらどうせまたバカにされるんだろうなあ。


「……小屋どっちだっけ」


「バカかお前」


 ほらやっぱり。だから言いたくなかったんだ。俺は足を止めて振り返る。どんどん間違っている方向に進んでいる気がしてならない。


「自分がどっちから来たかくらい覚えとけ。いいか、まず家はどこにあると思う」


「……山の麓?」


「昨日下山してないだろ」


 言われてみれば確かにそうだ。てことは山の中腹あたりにあるのか。


「で、お前はさっき合流したところに行くまでに右に曲がったか左に曲がったか」


「……覚えてないです」


 とりあえず転ばないように進むのと蛇から逃げるので精いっぱいだった。

 そんくらい覚えとけ、というルロの言葉に反論する余地もない。


「そのくらいわからないと生きていけないぞ。……今日は先に行くからお前は十歩以上後ろをついてこい」


 転んでも巻き込むなよ、という事だろう。

 今回は俺が悪いのでおとなしく従う。


 規則的な足音の合間にルロが口を開いた。


「リトライっていうのは、まあ一種の能力だ。文字通り、()()()()()()()()んだよ。時間を遡って、何度でも。制限はあるけどな」


「ああ」


「で、復讐を何回かやり直したんだ。()()()()()()()と。それで三日前、お前の感覚で言うと……まどろっこしいからいいや、とりあえずお前から見た未来に、復讐を遂げた。望んだ形が実現できた」


 いつのまにか家の前にたどり着いていた。ルロはドアを開けて動物たちを投げ下ろす。俺も倣って置き、お互い椅子に腰かける。


「で、一応ハルに、リトライするかどうか聞いたんだ。ハルは一度は首を振ったけど、最終的にまたやり直すことに決めた。で、時間を遡ってお前んとこに言ったら、一か月の誤差があってまだ何も知らないおまえを連れてきちゃったってわけ」


 リトライで時間を遡れんのは自分だけだからね、と最後に付け足す。

 やっぱり、わかったようなわからないような微妙な感じだ。


「そのリトライって能力は、この世界の人はみんな持ってるのか?」


「いや、そうじゃない」


 ルロは静かに首を振った。


「リトライは……できるのは、この世界で三人だけだ」


「それは、」


 どういう三人なんだ、と聞こうとしたが言葉が飲み込まれる。

 聞くな、という空気がルロから発されていた。


「そう、なんだ」


 無難な言葉で乗り切る。

 ルロはずっと俺をバカにしていたけれどここまで寄せ付けない空気は初めてだった。


 なんだ。リトライとは、なんだ。ルロは何を隠したがっているんだ。


 つい興味をそそられて、だが思い直す。あんまり首を突っ込むとルロに「殺す」と言われかねない。いやまあ、言われるだけならいいんだけども本当に殺されかねないからな。


 だけど、『復讐』は──手伝わなくちゃ、いけないんだろう。


「復讐の仲間になる拒否権は……」


「あるわけないだろ」


 うわばっさりかよ。まあ、だよなあ。


「ハルが、復讐の仲間になってやるっていったんだ。お前はハルだろ? 裏切るのはやめてほしいなあ」


 ……その上から目線の癖に身長の関係で下から見上げるのやめろ、こっちが悪いみたいじゃねえか。

 いやでも、実際約束したわけだから拒否する方が悪いのか?


「ん、なんかおかしくないか? リトライで時間を遡れるのがルロだけなんだったらリトライしたところで結局俺は何も覚えてない俺になってるんじゃないか?」


「違う。リトライして、こっちの世界にハルが慣れたあたりに遡れば大丈夫」


 うん、よくわかんない。とりあえず俺は従わなきゃいけないんだろうなーということは察した。


「……わかったよ。で、改めて俺は何すればいいの。言っとくけど俺狩りも狩った動物からなんか作るのもできねえぞ」


「知ってる」


 役立たず、とボソッと聞こえたのは気のせいか。実際役に立ってないから何も言い返さないけど。


 性格直したら割といいやつになると思うんだけど。いや、それはこいつに限らずみんなそうか。


「だけど役立たずでもできることがあって」


 やっぱり聞き間違いじゃなかった。


「これ被って」


 渡されたのはルロと同じような髪色の、これは……かつら?

 ルロの髪は男としては長めだが襟足が特に長いだけだ。だが渡されたこれはおそらく腰の少し上あたりまであるだろう。


「え、えと、いやなんで」


「いいからつけろ」


 うわ、目が怖い。言われる通り被ってみる。かつら付けたことないけど、これはただ被るだけでいいのだろうか。


「んー……なんか微妙だなあ」


「被らせといてそれかよ!」


「ああはいはい取らないで。んーどうすっかなあ……よし、こっち来い」


 服の襟を引っ張られて家の奥へ連れて行かれる。廊下の突き当たりから二個目の扉を開けてそこに押し込まれた。


「ったく、なんなん…………だよここは!」


「ん? ちょっと変装しなきゃいけないとき用の部屋」


 この部屋はただただ、いわゆる女の子の衣装部屋だった。


 私服っぽいのから何着ものドレスに靴が、壁にぐるっとおかれたクローゼットを埋め尽くしていた。やけに飾り立てられている棚にはなにやらカラフルな液体が詰まった小瓶がずらっと並び、その隣には小さな手鏡がある。

 さらに雑然と積み上げられている小ぶりの箱が大量に。


 特にこれと言った装飾のない、黒い枠のついた鏡だけがこの部屋で異質だ。



「……お前女装が趣味か?」

これは女装していく話ではないです。女装のとここの先も長いけど女装の話ではないです。

リトライと復讐の話です。なぜか女装しそうになってるだけです。


あとタイトル改め、「二重奏の終わるトキ」にします。

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