プロローグ
真っ赤な夕焼け空に、コツ、と彼女のショートブーツが乾いた音を響かせる。彼女はこちらを見ずに、まっすぐと太陽を見つめて言った。
「後悔してる?」
「……ああ、してるよ」
俺はふっと息を漏らす。こんな結末、後悔しないわけがない。
見渡す限り、荒れ果てた街。建物は大きさ問わず崩れ、地面はひび割れている。倒れた街灯に、へこんでひどい有様になった車。
もちろん俺らの他には人一人いない。いるのは、俺と彼女と、そしてもう一人と一匹。
もう一人が言う。
「こんな……こんなの聞いてない!」
「言ってないもの」
「っ!」
「言ったか言ってないかなんてどうだっていいじゃない。ねえ、レオ?」
ガゥルルル、とレオが鳴く。耳をなでられて気持ちよさそうだ。
さら、と長い髪を揺らして、夕焼けに赤く照らされた瞳で彼女がこちらを振り返る。
「どうする? またやり直しする?」
「いや。任せるよ」
「じゃあやり直しはなしね。やり直しは?」
リスタート、と俺は復唱する。
「そう。私達をここから再起動させるの」
その言葉を聞いたもう一人は黙って去って行った。彼は、これからどこに行くのだろう。
「君はどうする? 私と一緒に来てもいいし、ここにいてもいい。どこか違うところに行ってもいい」
「行くとしたら、どこに行く予定なんだ?」
「さあ、どこでもいい。行かなくてもいい」
私と居るかどうかは君に任せるよ、と言い残してもう一人とは反対方向へ彼女は歩いていく。ガゥ、とレオは俺に向かって一度吠え、彼女の後を追っていった。
髪を風になびかせて歩き、彼女は一度も振り返らない。
このまま、彼女は去ってしまうのか。
「──待てよ!」
彼女は立ち止まらない。慌てて背中を追いかける。
「おい」と肩をたたいてようやく彼女はこちらを見た。
「やり直そう。やっぱりこんなのだめだ」
自分でもなにがだめなのかよくわからない。だが、このまま彼女と別れるのは嫌だった。だけど彼女についていく勇気もなかった。だから、やりなおしだ。
「それは、リトライ? リスタート?」
「リトライだ」
「どこから?」
「それは、任せる」
また彼女と居られるなら、何でもいい。
「オッケー。じゃあ、リトライしよう」
新連載です。よろしくお願いします。




