青い林檎の転がる先に
青い林檎の 転がる先に
忘れ去られた 昨日があった
青い林檎の 転がる先に
思い出したくない 明日もあった
青い林檎の 転がる先に
涙を流した あの場所が 浮かんでいた
青い林檎の 転がる先に
喜びを語らった あの時間が 流れていた
青い林檎の 転がる先に
あの 失われた理想が まざまざと 浮遊していた
青い林檎の 転がる先に
また どうにかして 戻れないものか
青い林檎の 転がる先に
どうにかして 戻れないものだろうか
青い林檎の 転がる先には
まだ 誰も見たことのないような 夢があったから
青い林檎の 転がる先に
どんな 不安がはびこっていようとも
青い林檎の 転がる先に
僕は また 行こうと思うのだ
そして 青い林檎の転がる その先には
僕が いつか見た 悲しみと 喜びとが
壊れたおもちゃ箱のように ひしめいていて
誰も聞いたことがないような 物音がしている
その ひとつひとつの音を 思い出して
僕は 忘れていた あの感情を また 蘇らせるのだ
蘇らせるのだ
生きているという あの感情を
喜びも 悲しみも すべて包みこんでしまう
あの おそろしい 感情を
あの とてつもない 疲労と 生き甲斐とを
悲しみも 喜びも すべて包みこんでしまう
あの 感情を
青い林檎の転がる その先には 何があるのだ
そんなものは 誰も知らない
ただ 白い壁が 冷たく 横たわっているばかり