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01 パパとの約束

 私には大好きなパパがいました。


 もう昔のことですけど、私にはパパがいました。

 とても優しくて、格好良くって、私のお願いをなんでも叶えてくれた素敵なパパ。

 私はそんなパパが大好きでした。


「七海ー! 七海は本当に可愛いなー! 七海はパパの天使だよー! ぎゅうぎゅうー!」


「あはははー! ぱぱー、くすぐったいよー!」


 パパはいつも私は抱っこしては頬ずりをたくさんしてきました。

 今にして思えば、かなりの親バカだったのかもしれません。いや、間違いなく親バカでした。

 そんな親バカなパパがある日、私に問いかけました。


「なあ、七海。七海は将来の夢とかないかなー? パパがなんでも叶えてあげるぞー!」


 まだ幼かった私は将来の夢を聞かれて、この時、なんと答えたのか。


 お嫁さん? 確かにありがちだけど違う。

 看護婦さん? まだこの頃はそこまでの知識はありませんでした。

 アイドル? 近いけれど、ちょっと違います。


 この時の私の答えは――


「おひめさま!」


 それは毎週日曜日の朝にあっていたアニメ番組のヒロインに憧れて答えたもの。

 ヒロインはとある国のお姫さまで、そこで起きる問題を自ら冒険して解決していくお転婆プリンセスストーリー。

 私はそんなヒロインのお姫さまという立場にものすごく憧れました。


「わたしね、せかいでいちばんのおひめさまになっていろんなぼうけんしてすごすのー!」


 それはまさに物語の中の世界。

 空想のおとぎ話であり、絶対に叶うはずのない夢のまた夢。


 けれど、パパは強い決心を抱いた笑顔を浮かべて言いました。


「分かった。それじゃあ、パパが必ず七海のその夢を叶えてやるからな!」


「ほんとうー!?」


「本当だとも! パパが今まで嘘をついたことがあったかい?」


「ううんー!」


「だろう! それじゃあ、楽しみに待っててくれよ。必ずパパが七海を世界で一番のお姫様にしてあげるからな!」


「うん、やくそくー!」


 ああ、そうでした。

 パパはそんな私の叶うはずのない夢を叶えてくれると約束してくれました。


 そうして、その日からパパは家から姿を消しました。

 お母さんに聞いてもパパは急なお仕事で遠くに行ってしまったと答えて、すごく悲しみました。

 けれども、パパは私の夢を叶えるために頑張ってると聞いて私は寂しいのを我慢しました。


 それから何年かしてもパパが戻ることはなく、私は自然とパパとママが別れたのだと思いました。

 私の夢を叶えるために遠くに行ったというのも、きっとママがそれを知られないための嘘だと思うようになった。


 それから、更に何年かして私はパパの事を忘れて、平凡な人生を歩んでいました。

 なのになぜ、今そんなことを思い出しているのか。

 答えは簡単です。


 いわゆる走馬灯。

 死ぬ寸前の記憶。いや、これはもう死んだ後の記憶でしょうか。


 世良七海。十七歳。花の女子高生活エンジョイ中。

 その日、唐突になんの前触れもなく、けれどもある必然性を抱いたまま――私は死にました。

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