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あとがきと登場者紹介

 北欧神話。その出典によって、色々な解釈やストーリーのあるお話しです。

 どの出典に準じたと言うことはありません。また、明らかに反れた部分もあります。たとえば、バルドルの為に泣かなかったのは、人ではなく女巨人(ロキの変装)だとか。

 あ。そもそもヨルムンガンドは神じゃなかったか。

 こんなに長くなる予定じゃなかったのですが、十万文字ぐらいなら、さらっと読める量じゃないでしょうか。(ちょこちょこ修正していたら、少し増えてしまったような気がしなくもない)

 以下、登場人物等の紹介です。本編では語られなかったエピソードも少し入ってます。

 普段は活動報告に載せる部分なのですが、ちょっと量が多すぎたのでこちらに。

 活動報告には、「あとがきと言い訳とおまけ」を載せます。



≪主要登場人物≫

・レイヤ

 農業を営む家の三番目の子供として生まれた長女。兄をも超える長身を気にしている。周囲や両親からもその背の高さを揶揄されることは非常に多く、その劣等意識を更に深めることとなった。

 面倒見が良く、弟妹からは慕われている。弟妹たちの勧めにより、冒険者の道を選んだが、要領が悪く優し過ぎる性格の為、冒険者としては劣等生。

 ヨルムと出会ってからは、彼のつがいとして行動を共にする。本人は生け贄としてヨルムのものになったと思っている。

 のんびりマイペースな性格。信仰心が強い。可愛い悲鳴を上げるのは自分に似合わないと思っているので、滅多な事では叫ばない。度胸があるように見えて、暗闇が怖いという臆病な面も。

 彼女がお話しの中で手に入れた剣はドヴェルグ・ダーインが作った剣。つまり、ダーインスレイヴ(ダーインの遺産という意味らしい)。曰く付きの剣ですが、正当な持ち主が持つ限り、その剣は持ち主を守る為に持ち主に従う。という設定。(というか、呪われた品っていうのは、ちゃんと呪われることになった過程がちゃんとある気がします。)

 彼女の外見の想像はお任せします。背が高いと言う描写以外に特別な記述が無いのは、このお話しが彼女によって書かれたことを想定しているから。更に、その話しにヨルムが追記しているという形を取っているから。ヨルムも彼女について詳しい描写を入れることはありませんでした。美しいものを語るのに、美しい以外の言葉は必要ないそうです。


・ヨルム(ヨルムンガンド)

 大きな白い蛇の姿をした大地の神。

 ロキとアングルボダの息子。兄はフェンリル、妹はヘル。


 多くの人間から信仰を集め、彼が司るものは多岐に渡る。

○大地を司る豊穣の神(作物の実りを助ける)

○水の神(雨を呼び、川の流れを管理する。虹も彼の眷属)

○知識と医療の神(病気の治療方法を教える)

○毒の神(毒の全ては彼から生まれた)

○契約の神(決まりの順守、契約に立ち会い、承認する)

○愛の神(夫婦と恋人の守護者、一対の愛の為に不倫を悪とする)

○子宝、多産の神(子供が欲しい夫婦の願いを叶える)

 とまぁ、とりあえず、人の願いを何でも叶えてくれる人間大好きな神さま。春の祭典は、この神への感謝と、今年の豊穣を願って行われる。

 元々司っていたのは大地だけだったが、子供の時にオーディンによって地上に投げ捨てられ、その時に海に浸かって水の力を得た。また、その時に落ちた場所にあった土地は彼のものとなった。

 彼の土地は、地上では西側(ヴァルハラから西側)に位置する。南には火山がある。

 成長する過程で、彼の本体の半分は土地と同化してしまった為、彼があくびをしたり、しゃっくりをすると大地が揺れる(地震)。怒ると大地震を起こすらしいが、誰もこの神が怒ると思っていない。

 自分の体の毒で苦しむ人の為に、それを取り除く方法を創造し、知識と医療の神となる。毒は元々彼の血である為、毒の神の名も得た。

 父であるロキから、さんざん嘘を吐くな、約束を守れと言われて育った為、契約の神となる。その流れで婚姻を取り仕切る側面も持ち、愛の神と呼ばれるように。

 生き物の蛇が多産の為、子供が欲しい人々からの信仰も集める。最も、人々から勘違いされているが、子供を与えたりはしない。子供は好きだが、与えるのは祝福だけである。

 宗教においては、聖礼と呼ばれる行事(主に出産、成人)の時に人の姿で現れて祝福を与える。騎士の誓いを絶対にする為の聖礼では、騎士に祝福を与え、その騎士に相応しい花を贈るとされる。


 地上で人間と共に成長した為、とにかく人間との関わりが深い。その信仰を一身に集めるのも、人が何を必要としているか良くわかっている為。この国の人々が親切なのは、化身の姿の彼が人に対し無償で救いを与えることに由来する。情けは人の為ならず。親切は親切で返す文化が根付いている。

 クラーケンと戦って人の姿を失ったヨルムが何をしてたかって言うと、春の祭典で賑わう街を訪れては、恵まれない子供に白い蛇の姿を使って金貨を置いて回っていました。人の願いを叶える時は人の姿じゃなきゃいけないはずですが、慈善活動であればセーフって所でしょうか。


 本体が蛇の為、彼が単独で作れる化身は蛇のみ。その為、人の姿が必要な時には人間の生け贄が必要となる。男性の生け贄を得た場合は女性の姿を、女性の生け贄を得た場合は男性の姿をとる。化身の姿を得た後は、生け贄は、つがいと呼ばれる。

 つがいとなると、外見が変化しない(見た目に老化せず、体型も変わらない)。内側の変化(病気や内面の老化)はする。不老不死にはならない。

 神の加護で体が丈夫になり、毒に強くなる。食事に含まれる信仰心を直接神に捧げることが出来る。化身と触れることで、神に近い存在になれる。最も、その力を自由に使えるのはヨルムだけ。

 ヨルムは、生け贄としての役目を終えれば自由を約束する。しばらくは、つがいとしてヨルムと一緒に居ることを望む者が多いが、その生涯の全てをヨルムと共に過ごすことは稀。危険な冒険の果てに若くして死ぬか、誰かと結婚して去る。ちなみに、婚姻、出産によって、ヨルムの加護を失う(つがいとしての役割を失う)。

 また、彼の生け贄の儀式で悲鳴を上げなかったのはレイヤだけ。白い蛇の姿を彼女が受け入れたことは、彼にとってもの凄く嬉しい事だった。レイヤが好みの女性だったことも手伝って、ヨルムはレイヤに対して気を許し過ぎ、(以下略)。

 人の化身の姿は、色白で背が高く、金髪に菫の瞳を持った麗しい人とされる。子供の姿は化身としては不完全の為、つがいであるレイヤの力が必要。ヨルム曰く、力のバランスを取るのが難しいらしい。

 神の妻となった者は、その出自が何であろうと神性を得る(神と同じ存在になる)。


・リヴ

 リヴが騎士の聖礼を行う時、美しく光り輝く剣がその前に現れた。リヴはその剣を恭しく受け取ると、その剣の所有者となった。聖礼で神は、剣の名をレーヴァと告げ、深紅のヒナゲシを騎士の花として与えた。

 国の第一の騎士として誉れ高い、正義を愛する優しい騎士。騎士・リヴの姿が華麗だったのは、深紅のヒナゲシをイメージした為。

 ヨルムの下へ来てからは、森の植物について学ぶ。他にも、世界の創世の話し、薬や毒の知識等、ヨルムの知識は彼の書物と共にリヴに受け継がれている。


・ラシル

 神へ捧げる生け贄として選ばれた美少女。

 その出自は本編で語られる通り。

 針仕事が大好き。料理は得意な方ではないが、パンを捏ねるのは好き。野菜を刻んで煮込むことしか出来ないのは本編の通り。でも、ラシルが作るスープは体に優しく、とても美味しい。食材の扱いは上手いはずなので、やろうと思えばいろんな料理も作れるはず。

 蜂蜜が好き。実は、背の高いレイヤに憧れている。



≪神さまシリーズ≫

 以下、本編での役割です。

 元ネタは調べればいくらでも出て来るので割愛。

 このお話しには巨人族が出て来ないので、巨人は、神あるいは人になっています。巨人という言葉は出て来るのですが、この世界にも巨人は存在はするらしい、程度の意味でしか使っていません。

 たぶん、ヨトゥンヘイムには暮らしていると思われる。けれど、神々と敵対はしていない。そんな感じです。

 また、この世界の神は信仰によって力を得て、その神性を保ちます。信仰は人に限らず、動物でもなんでも良い。そのほかに神性を保つ為のアイテムとして常若の林檎が出てきます。誰からも信仰を得られない神は、常若の林檎を食べないとすぐに神性を失います。失うと神ではなくなります。

 本編で出てこない名前は、 ※名前 と表記してあります


・オーディン

 神々の王。(※アース神族の王)

 正妻はフリッグ。そのほかにも愛人や一夜限りの関係の女性が多数居る。

 子供は、フリッグとの間にバルドルとヘズ、他にトール、ヴィーザル、ヴァーリ。本編では名前しか出てこない詩人の神・ブラギもオーディンの息子。

○戦争を司る神(中でも計略に優れるとされる)

○予言の神(アングルボダから予言を得た為、未来を見通せると言われている)

○魔術の神(古今東西あらゆる魔術に長ける)

○死者の神(戦死者を選定する)

 主に戦争の神として信仰を集める。

 ドヴェルグによって造られた魔法の槍・グングニルを持つ。(本編では全く活躍しない)

 黄金の宮殿・ヴァルハラに住み、神々の饗宴を主宰する。饗宴では、神に捧げられた供物と酒、常若の林檎が振る舞われる。

 変身の能力を持つ。空を飛ぶ時には鷲の姿を使う。

 戦争は人の本性と語るだけあって、東の土地で、戦争の種を撒いては戦争を引き起こし、そこで死んだ戦死者たちをヴァルキュリアたちにヴァルハラへ運ばせている。戦死者たちはエインヘリヤルとしてオーディンに従う戦士となる。ヨルム曰く、本当は英雄だけを選定しヴァルハラで持て成すと言っていたはずなのに、勝手にヘルの取り分まで攫っているらしい。

 ロキと義兄弟の契りを交わした癖に、その子供に次々と酷い仕打ちをする。ヨルムは、この神が大嫌い。好きになる要素が無い。


・フリッグ

 オーディンの妻。子供はバルドルとヘズ。

 たぶん、婚姻を司る女神。

 主に夫婦となった妻から信仰を集める。この女神に夫の不貞を取り締まるよう願うと、不貞を働いた夫に罰が当たるらしい。

 光の神・バルドルを溺愛するあまり、誰もこの神を傷つけないよう約束させたり、過保護過ぎてバルドルをヴァルハラから出さないようにしたりしている。駄目母。

 その愛を盲目のヘズに与えることはなかったらしい。

 一応、オーディンからバルドルの未来を聞いていた為に起こした行動らしいが、それにしても、ちょっとねぇ…。


・イズン

 本編には名前しか出てこない、常若の林檎の管理人。

 夫はブラギ。

○常若の林檎の女神(林檎を管理し、饗宴で林檎を配る)

 今回のお話しでは、常若の林檎は神々が神性を保つ為に食べているという設定です。まぁ、老いるって意味と大して変わらないはず。

 ヨルム曰く、安定した信仰の得られる神ならば、そんなものにすがる必要はない。あれは、人の願いも聞かずに怠惰に過ごす神が頼るもの、だそうです。

 人間が食べれば不老長寿の恩恵を受けられる。一口齧っただけでも、長い期間、空腹や飢えから遠ざかるでしょう。


・テュール

 軍神にして裁定の神。古い神きっての善神。

 家族は不明。※父は巨人のヒュミル。

○天空神(天空はテュールが支配する場所)

○戦神(正しい側に勝利を与える)

○裁定の神(善悪を決める)

 主に戦争の神として信仰を集める。この神の名において戦争や勝負が行われると、正しい方に勝利がもたらされると言う。勇敢な神としても知られ、広く信仰を集めている。

(オーディンの息子って説をどこかで見た気がするけれど、それはないと思う。テュールという言葉は、北欧神話では「神」を意味する。オーディンよりも、よっぽど主神っぽい)

 古い神々の中で最も善神であり面倒見が良いことから、多くの神々から慕われている。その為、オーディンの嫉妬を買うこともある。

 フェンリル捕縛の際に右腕を失い、同時に調停の神の名を失う。その後継者にフォルセティを指名し、フォルセティの師となった。

 フェンリルと仲が良い。捕縛後もフェンリルの世話をしている。

 ヨルムからも慕われている。


・トール

 剛腕の神、雷神・トール。

 父はオーディン。※妻はシフ。

○雷神(ミョルニルの所有者として。一応、雷も起こせるはず)

○冒険者の神(ロキと一緒にあちこち放浪して武勲を立てる)

 主に力を求める騎士や剣士、更に冒険者から広く信仰を集める。

 ドヴェルグによって造られた槌・ミョルニルを持つ。とても強い槌だが柄が短い(だいたいロキのせい)。ロキと一緒にあちこちに冒険に出かける逸話が有名。

 結構、古い神のはずなのに、直情的で子供っぽい。ヨルム曰く、馬鹿だけど良い奴。ヨルムとは良い友人。


・ヴィーザル

 森で隠遁生活を送る神。

 父はオーディン。※母は女巨人のグリーズ。

○強い神(トールと並ぶ強さを誇る)

 人間からの信仰は集めていないが、森の生き物から信仰を集める。

 強い神ってなんだ。でも、トールと並ぶ強さを持っているのは事実で、他の神々からも困った時は助けてくれる存在として一目置かれている。

 森で隠者のような生活をしている。自分の力を正しく使う為の方法について考えているらしい。

 たまに饗宴に来る。誰の味方でも敵でもないと公言するが、オーディンの行動には、やや疑問があるようで、ヨルムに何かあった時はヨルムの味方になると言っている。


・バルドル

 誰からも愛される光の神。

 父はオーディン。母はフリッグ。弟はヘズ。妻はナンナ。

○光の神(バルドルの輝きは、すべての輝けるものをより一層輝かせる)

○戦の神(オーディンの息子として)

 まだ若く、母のせいでヴァルハラに引き篭りがちなので、あまり信仰を集めていない神。戦の神と言っても戦ったことはなく、父の影響を受けただけ。

 フリッグが何ものもバルドルを傷つけないよう約束して回った為、饗宴ではそれを祝った悪趣味な遊戯がいつも行われていた。バルドル自身は喜んでいるわけでは無いが、何でも受け入れる神は、この遊びを止める術を持たない。母も自分の息子が傷つかないことを喜んでいるので止めてくれない。この遊びを止めてくれるのはヨルムだけだったので、バルドルはヨルムを慕っている。

 愛妻家。


・ヘズ

 大人しい目の見えない神。

 父はオーディン。母はフリッグ。兄はバルドル。

○盲目の神(目が見えない)

○第六感の神(視覚がない為に、それ以外の感覚が鍛えられている)

 第六感を授ける神として、盲目の人はもちろん、一部の魔術師からも信仰を集めているらしい。

 トール曰く、盲目でなければ一緒に戦場を駆けまわっていたぐらいの力を持つ。流石、オーディンの子供は力持ち揃い。しかし、その力は不幸な方向で発揮されてしまった。


・ヴァーリ

 バルドルの復讐の為に生まれた神。

 父はオーディン。※母はリンド。

○裁きの神(その生まれ方に由来する)

 バルドルとヘズの悲劇が起きた直後に生まれると、一夜にして大人の姿に成長し、ヘズに裁きを与えた。

 更にその後、ロキに裁きを下した。(狼に変えられたロキとシギュンの息子・ヴァーリの役割もちょっと兼ねてもらいました)

 ヨルム曰く、これだけ恐ろしいことをしたのは、幼さ故仕方ないことらしい。そうじゃないと、ちょっとグロ過ぎる。

 後に改心した模様。


・フォルセティ

 両親を幼くして失った平和と和解の神。

 父はバルドル。母はナンナ。

○司法の神(人々の平和と秩序を願う祈りから生まれた)

○調停の神(テュールから受け継いだ。神々を裁くことが出来る)

 法の神として絶賛勉強中。テュールを師に仰ぎ、契約の神として人の信仰を集めるヨルムを慕っている。

 ヨルムから言われて、ヴァーリの教育係を請け負う。


・ヘイムダル

 虹の番人。

 家族は不明。※九人の波の乙女の息子。

○光の神(おそらく光の神の元祖)

 ロキ曰く、光の神の名をバルドルにも太陽にも月にまで奪われたらしい。それでもヘイムダルが怒ることはない。

 どんなことにも動じない落ち着き払った性格。虹の橋・ビフレストの番人として、その役目を粛々とこなす真面目な神。(その割に、ミョルニル奪還作戦では、トールに花嫁になって取り返しに行けって提案してるんだよなぁ。本人は名案と思ってる辺り天然。ホワイト。流石、白いアース)

 招かれざる客が来た時には、角笛・ギャラルホルンを鳴らして神々に危険を知らせる。しかし、ヘイムダルが追い払えないような者は居なかったので、角笛の音が鳴ったのはラグナロクの時が初めて。という設定。


・フレイ

 よそ(※ヴァン親族)からやって来たと思えないぐらい有名な豊穣の神。

 父はニョルズ。双子の妹はフレイヤ。※妻はゲルズ

○勝利の神(戦争で勝利を与える)

○豊穣の神(実りと糧を約束する)

○子孫繁栄の神(フレイヤと並んで)

 このお話しでは、勝利の剣=レーヴァテインとしています。でもって、フレイはレーヴァテインの最初の所持者でしたが、ゲルズを娶る為にその剣を失います。その剣が流れ流れて、今の持ち主の元に来たという設定です。スルトの持ち物でも、その妻シンモラが保管しているわけでもないのです。

 お話しの中で活躍させてあげられなくてごめんなさい。ゲルズを娶る話しぐらい入れるべきだったか。オーディン、トールと肩を並べるぐらい北欧神話では有名で信仰を集めた神さまなのですが、他の神と絡むような逸話も全然探せなかったのでどうしようもなかった。

 豊穣の神の側面がヨルムと被ることもあってレイヤからさんざん言われてますが、北欧神話で豊穣の神って言ったらフレイを指す。というか、多分、アース神族は農耕神が居なかったからフレイに来てもらった、あるいは攻め入った場所で農耕を行う際に、そこに居た神をそのまま祀ることにしたとかじゃないのかな。なんて。

 ヨルムが所有する西の土地での存在感は薄いですが、東の土地では、ちゃんと豊饒の神として崇められている。

 有名な逸話はゲルズを娶る話。ロキの口論で罵られるのもゲルズの為に剣を失ったこと。そしてラグナロクでは、剣を失ったせいでスルトに敗れてしまう。うーん…。

 子孫繁栄の面ではフレイヤと並んで子供を願う人々の願いを叶えていた神さまです。主に男性からの信仰かな。

 活躍させてあげられなくてごめん。本当にごめん。


・フレイヤ

 愛と美を司る奔放すぎる女神。

 父はニョルズ。双子の兄はフレイ。※夫はオーズ。娘、愛人も居る。

○愛の女神(どんな愛でも祝福してくれる)

○美の女神(すべての美はフレイヤのもの)

○豊穣の女神(実りと糧を約束する)

○子孫繁栄の神(フレイと並んで)

○魔法の女神(セイズを使いこなせる)

 誰もが知ってる輝く女神。自分が性にだらしない面があるので、夫婦や恋人関係にない間柄の愛でも祝福してくれるらしい。

 欲しいものは、その美貌を使って何でも手に入れて来た。首飾り・ブリーシンガメンが欲しくて小人のドヴェルグと四夜を共にしたのは有名な話し。物欲も強いらしい。

 自分になびかないヨルムをいつか自分のものにしようとしているらしいが、いつも煙に巻かれる。作中でヨルムの知り合いのドヴェルグ・ナッビが、またフレイヤに無理難題を突き付けられたのかと言っている辺り、ヨルムはフレイヤの頼みを聞いてやるぐらいには仲が良いらしい。そうじゃないとヨルムと敵対する神がたくさん居るヴァルハラでレイヤを預けたりしないか。

 ちなみに、ラシルがレイヤの衣装に雛菊をつけたのは、雛菊が女神フレイヤに捧げられる花だから。

 オーディンにセイズを教えたのはこの女神。

 その美貌は女性のあこがれ。その美しさは男性の理想。


・スカジ

 ヨルムも慕う明るい山の女神。

 夫はニョルズ。義理の息子はフレイ、義理の娘はフレイヤ。※父は巨人のスィアチ。

○山の女神(山で暮らしている。山を豊かにする。登山の安全を担う)

○狩猟の女神(弓矢が得意)

 山への信仰はスカジへの信仰に等しい。人々は、山に出かける前は必ずスカジに安全祈願をする。

 地上に居ることが多い女神なので、ヨルムとの親交もある。山を豊かにしてくれるので、ヨルムは、スカジが自由に自分の土地に入ることを許している。

 元々、神ではなかったが、神々と一悶着あった後、神の一人と結婚して神の一員になることにした。本当は美形のバルドルを選びたかったが、脚を見て選べと言われ、ニョルズと結婚。しかし、もともと趣味じゃなかったことに加えて海の神であるニョルズと反りが合うはずもなく別居中。

 ロキと浮気したことがあるらしい。ロキがシギュンに、ニョルズのとこで従順にやっていけない暴れ女神なんて、お前と比べようもないだろうと言っていたが、ロキの口論でスカジの浮気について、うっかり喋ってます。シギュンはちゃんと聞いていましたよ。

 ロキの捕縛の際に蛇を取り付けたのはこの女神。一体、どれだけの恨みがあったんだ。ヨルム曰く、明るく快活な女神らしいが、やっていることは結構、陰湿。ロキの自業自得と言われればそれまで。


・ロキ

 何を司っているのか良くわからない神。オーディンからは、すべてを終わらせる神と言われた。実は、炎の国・ムスペルニウムの炎の巨人の流れを汲む。ということは、火の神っぽい。でも、奸計の神と言う名の方がしっくりくる。

 妻はアングルボダ。後妻はシギュン。

 子供は、アングルボダとの間にフェンリル、ヨルムンガンド、ヘル。シギュンとの間にも子供が居た。

○火の神(たぶん…?)

 ヨルムが言う通り、人の願いを聞いてくれる神なので、案外人々から信仰を集めている。

 契約の神・ヨルムに誓った内容は、反故にすると呪われると言われているが、ロキにお願いすると呪わないようヨルムに取り成してくれると言われている。元々、ヨルムは呪ったりしないのですが、皆、ロキのおかげで呪われないと思っている。

 ロキがオーディンの義兄弟となって神性を得た為、その後に生まれたロキの子供は皆、神性を持つ存在となった。

 誰もが認める暴言王。口から先に生まれたんじゃないかと思うぐらい良く喋る。それでも、神々が困った時に奸計を練るのはロキの役目。本人はヴァルハラ一美形と言っている。フレイヤも認めるぐらいには美形らしい。(北欧神話は、誰が一番美形なのかわかりにくい。少なくとも、ロキ、フレイ、バルドルはどこかで一番だって言われてる気がする。出典によって違うのか、自己申告なのかは謎)

(ちなみに、ロキの捕縛に繋がった、神々に暴言を吐きまくった上に自分の罪もばらしちゃう逸話はロキの口論と呼ばれ、実際の現場はヴァルハラではありません。)

 ヨルムからも家族思いと言われるほど、家族を大切にする性格。だったら、もう少しあの兄弟妹を助けてあげたらどうなんだろう。この性格でも、子供からはそれなりに慕われている不思議。

 本編では描かれていないが、地上に落とされた後、育ったヨルムを饗宴に連れて行ったのはロキ。ちなみに、ロキが次の饗宴に息子を連れて来ると言ったら、神々はあの姿では困ると慌てて参加できるのは人の姿に限定すると決めた。饗宴の場で彼が優秀であることを示し、ヨルムを他の神々から一目置かれる存在としたのもロキ。ちゃんとパパしてるんですよ。

 変身の術を自在に使い、他者を変身させることも出来る。空を飛ぶ時は、鷹に姿を変える(原典では鷹の羽衣を借りて鷹になる)。自由に飛べるので、たまに死者の国のヘルに会いに行っている。もちろん捕縛されたフェンリルにも会いに行っている。この辺が家族思いと言われている所以かもしれない。(本編では出てきませんが)

 変身の術を使えるので、化身や伝令も色んな姿のものを作れる。オーディンよりも魔法使いっぽいかもしれない。

 主人公のせいで全体的に堅苦しい雰囲気になったこのお話しの唯一の癒しだったかもしれない。フレイヤと話している時もそうだったけれど、ヨルムは口喧嘩や暴言吐いている時が一番生き生きしてたような。やっぱり、ロキの子供なんだなぁ。


・アングルボダ

 世界の創世から現在を知り、その知識から未来を予見することが出来た女性。※女巨人

 夫はロキ。子供はフェンリル、ヨルム、ヘル。

 出自は不明。夫のロキが神の一員として神性を得たことで、妻のアングルボダも神の一員となったはず。子供を産んだ後、間もなくして死者の世界へ旅立った。死者の国までやって来たオーディンに予言を与えてしまう。

 ちなみに、オーディンとロキはアングルボダの言葉を「予言」(必ず起こる事)、ヨルムは「予見」(起こる可能性が高い事)と言っています。オーディンとロキは予言の力に打ちのめされていますが、ヨルムはまだ希望があると思っています。

 裏設定…。と言えるほど形になっていないものですが。アングルボダは火山の噴火でムスペルニウムから飛ばされてきた幼い(あるいは赤子の)ロキを育てた。その後、結婚して子供をもうけたが、寿命で亡くなってしまった。…というイメージがなんとなくあります。


・シギュン

 ロキの妻となった大人しい女神。

 何を司っているのかは不明。癒しの女神とも。

 神性が低く、神の中では末端の方に数えられる。

 神性が低いので、あまり輝いていない。

 ヴァルハラの門番がヨルムに対して神の輝きが無いと言っていたが、とんでもない。化身の姿な上に服を着ていたせいで輝きが見えなかっただけで、ヨルムは高位の神々と肩を並べるレベルで神性の高い神ですよ。岩に繋がれたロキがすぐにヨルムに気付いたのもこの為。シギュンに気づかなかったのもシギュンに神さまオーラが足りなかったから。

 テュール曰く、ロキが戯れに娶った。しかし、本人はロキからとても愛されていると思っている。子供にも恵まれているぐらいなので、家族関係は良好だったんでしょう。

 最後まで慈悲深くロキに尽くした。


・フェンリル

 巨大な狼の姿をした神。

 父はロキ。母はアングルボダ。弟はヨルム。妹はヘル。

○狼の神(すべての狼を従える)

 たぶん、生まれた時に司っていたのは狼だけではなかったと思う。素早く、フェンリルが走ると風を巻き起こすことから、風の神のイメージもある。でも、おそらくフェンリルは、その神の役割を放棄した。という設定。(もちろん、原典では神ではない)

 狼からの信仰があるので、それだけで神性を保っていられる。

 今回のお話しでは、北欧神話のすべての狼はフェンリルの眷属ということに。ガルムもフェンリルに従います。

 自由奔放で、人の姿を欲しいとは思っていない。テュールと仲が良い。オーディンが嫌い。まぁ、この兄弟がオーディンを好きになるわけはない。


・ヘル

 死者の国を任された死者の国の女王。

 父はロキ。母はアングルボダ。兄はフェンリルとヨルム。

○死者の国の女神

 たぶん、その姿から、生まれた時から生死を司る女神だったと思われる。(もちろん、原典では女神ではない)

 オーディンによって生きたままニブルヘイムに流された。そこで死者の管理を任されて、死者の国の女王となる。体よく地上から捨てられた可哀想な女神。

 その容姿は、半分は人の姿をしているが、もう半分は青白い死者に似た姿をしていると言われている。普段は真っ黒いドレスに黒いヴェールを被っているので、誰もこの女神の本当の姿を見たことが無い。

 神として死んだ者は、ヘルの館に住まわせている。

 バルドルの死は不憫に思っていたので、蘇らせても良いと考えていた。しかし、オーディンやフリッグの言うことに従うのは面白くないと考えていた為、フリッグに条件を持ちかけたというのが裏話。ヘルは、ヨルムが頼めば簡単にバルドルを蘇らせてあげたのです。結局、ロキのせいでバルドルは復活しませんでした。

 何故、ロキがこんなことをしたのかは不明。予言に従ったのか、それとも、散々自分の子供が酷い目に遭わされた仕返しなのか。真実を知っているのはロキだけです。


・ミーミル

 賢者。

 オーディンの伯父らしい。

○賢者の神(神々の中で一番賢い)

 ニョルズ、フレイ、フレイヤ一家と交換で別の神族(※ヴァン神族)の元に送られたが、首を斬り落とされて首だけ帰ってきた。

 オーディンは、その首をヨルムが住む森の湖に投げ入れた。オーディンは、知識と医療の神・ヨルムならミーミルの首の保存方法を知っていると考えて投げ入れたのだ。案の定、首だけになった賢者を哀れに思ったヨルムは、彼の持つ知識の全てを注いで、ミーミルの首が腐敗しないよう処理し、泉に癒しの力を与えて首を保存した。オーディンは、その後、ミーミルを復活させた。しかし、その泉からミーミルを運ぶのは不可能と知った。という設定。(原典では、全部オーディンが処理してる)

 だから、オーディンはたまにヨルムの森に勝手に来る。ヨルムから出入り禁止を食らっているのに勝手に入る。しかし、その神性すら魔術で隠せるオーディン相手じゃ、ヨルムがオーディンを追い払うのも一苦労。

 オーディンが自分の宝をこの泉に隠したのは予言の為。

 焼け落ちる予言のあるヴァルハラよりも安全な場所を探した時に、ユグドラシルとも繋がっていて、ヨルムが住処としていて、ミーミルも居るなら安全だろうと考えた。そして、ラグナロクでは、ミーミルが居るこの場所は絶対に攻撃しないよう神々に告げ、自分も、この場所だけは攻撃しないよう細心の注意を払うことにした。まぁ、来る前に全滅したけどね。


・スルト

 ムスペルヘイムの炎の巨人の王。

 神さまじゃありません。太古の存在。(原典では、王ですらなかったような。もしかしたら、火山の化身かもしれない)

 作者の中で、ラグナロクは巨大怪獣大戦争。ヨルムとトールの戦いにしろ、スルトの戦いにしろ、その戦いに巻き込まれた者は生きてないよね、という感じです。

 原初の生き物なので、知能が低いという設定。炎の巨人がわらわら居る感じは、きっと可愛い。でも、そのサイズはスルトに比べると小さいだけで、普通の人間よりは大きいはず。


・虹の竜

 神さまじゃありませんが、ヨルムの眷属。

 ヨルムが管理する川の化身で、虹色をした美しい竜。その姿は、西洋ドラゴンではなく、東洋の蛇っぽい竜。むしろ蛇か。


※もちろん、実際の北欧神話では眷属でもなんでもない。

すべて、ニヴルヘイムにある泉・フヴェルゲルミルと繋がっている川の名前。

フィヨルムは、ヨルムと名前が似てるので虹の竜に姿を変えて登場。

フヴェルゲスヴォル、グンスラー、スリーズ、フリーズ、スュルグ、ユルグ、フィンブルスル、ヴィーズ、レイプトも死者の魂を導くために登場。

もう一つ。ギョッルも同じ川なのですが、ちょっと意味合いが違うので使いませんでした。



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

この物語は北欧神話をモチーフとしたフィクションです。

北欧神話は面白い。

実際の神さまとは無関係なのであしからず。



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