表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1、田舎の少女

 朝、一日が始まるのが嫌でいつまでも寝ていた。夜、次の日がくるのが嫌で限界まで起きていた。富岡友一は規則的な生活を忘れて、海を漂う流木のような何もないゆらゆらした日々を送っている。

 

 日差しが温かい春の昼下がりに寝起きの友一は歯を磨きにを鏡の前に姿を現した。寝起きで緩んだ目をしていても口元だけは一文字に固く結ばれ、癖になっているのが覗える。顔を水で洗っい歯を磨いたら、寝癖もそのままに友一は自室に戻った。

 石を詰められたように重い頭を枕に落した。ベッドにうつ伏せになって考えるのは今日の予定じゃなくて昔のこと。制服を着ていたころの記憶ばかりがでてくる。 制服を脱ぐことになり、家を出ない生活になってからの記憶は代わり映えのないもので、時間が記憶の情報の中に入っていない。幾日も夜を迎えているはずなのに同じ日かのような感覚が続いている。自分の中で時間が進んでないのだろう。

 努力を辞めると決めたのいつだったか。それすらもすぐには思い出せないが、口癖にもなっている一念だけは太陽よりもはっきりしている。

 陽光が窓を通して友一の体を優しく照らす。群青の空に浮かぶ太陽が薄暗い友一の部屋を覗いていた。友一は太陽の優しさを背中に受けながら忌々しく、太陽に呟いた。

「熱い」



 世界中が喪に伏していた。世界の存在を救った英雄の命日だと理解する生き物全てが一日殺生を止め、静かに過ごしている。聞こえるのは天地創造より延々と繰り返される風と水の流れる音。それと祈りの声。

 英雄の墓は知らされていない。どこの都市からも離れた林にひっそりと英雄は永眠している。近くの村が生前英雄が訪れた場所として作った記念碑が英雄の遺体が眠る真の墓だ。林に数人が寛げる程度の空間が整備され、飾り気のない石板に当時のことを刻んだ簡素な記念碑。

 英雄はおとぎ話として語り継がれ、大木のような安心感を与える存在として静かに眠る、はずだった。



 ベットに倒れたままの友一はただ、無為に時間を過ごしていた。なにも考えず、開けた目から入る光景を人形のように受け止めていた。

 生きる意味はもう無くした。生き始めてからまだ17年だけれども、諦めるには十分だった。

随時更新と加筆。

しばし待ってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ