03 マルクと占い師
ギルドで採取先の山の地図を記憶した帰り道、当たり前のように裏道を通っていると、ふと薄暗い影の向こう側に机と椅子を設置した怪しいローブの人影を見かけた。
「いらっしゃい。」
「あーこんにちは。」
思いの外、若い女性の声だった。
「こんなところで、何をしてるんです?」
「私は占い師だからね、占いをしているんだよ。 一回5ペリだ。やってくかい。」
この世界において、占い師とは普通に普及している職業である。
但し、スキルが存在しているため、詐欺師等の職業についている者に騙される事もあるが、そんなことは大掛かりな犯罪をする前準備等に使われるくらいで占い師に化ける詐欺師は早々いない。
その理由として、職業に従事するものは一部の例外を除き、身分証を持ち、職業によって国の管理する施設、ギルドホームから職業証を渡されるからだ。
騙されると思ったらまず身分証や職業証を確認させてもらえばいい。
占い師を見ると、首から垂らしているカードをこちらに見せていた。
「詐欺じゃないさ。」
「……それじゃあ、一回だけお願いします。」
「あいよ。」
お金を袋から取り出し机に置く。占い師はそれをニィ、と手元に寄せて握りしめた。
「……ー。」
小さく何かを呟いたかと思うと、オレをジッと見る。今この占い師にはオレの未来が見えているんだろう。
どんな未来だろうと、今とそんなに変わらないと思っていたオレは肝を冷やされることになる。
「……女難の相が出てるよ。」
ぶわっと背中に寒気が来た。
心当たりがありすぎて、ピンポイントすぎて竦み上がる。
未来のオレは一体どんな酷い目に合うというんだ。
占い師は深刻な声で告げる。
「キミの仲間……女たちだ。このままだと大変な事になる。早めに誰か一人に決めなさい。血で血を洗うことになりたくなければね。」
それからどうやって宿まで戻ったか覚えていない。
誰か一人を決める。そんなことは何度も考えてきた事だからだ。
でも結論は出ない。血で血を洗う。そんなことにこれからなるらしい。
アリーはオレの幼なじみだ。3人の中でも一番わかりあっていると思う。直情的で素直で感情的で笑顔が可愛い。昔は一時の感情で色んな事をお互いにしてしまった。最後の一線は越えてないけど。責任を取って彼女とくっつくのが一番いいんだろう。
しかし最近の彼女は何を考えているのか分からなくて恐い。
シャリアはお姉さんのような人だ。何時だってこっちの事を考えてくれる。オレの至らないところを誰よりもサポートしてくれる。そして彼女も昔、お互いに色々してしまった、というか教えてもらった仲だ。勿論一線は越えていない。
ミーアは出会ってから1年半たつ。そういったことはなにもしていないけど、隣にいて一番疲れない。贅沢かもしれないけど、彼女が一番アタックがささやかだから彼女を選んでしまいたいと思ってしまう。
贅沢なのはわかっているつもりだが、それでも最良を選びたくて躊躇う。
考えに耽るオレの横を、綺麗な銀糸が流れていった。