夢の魔物
ある村に起きる、それはそれは摩訶不思議な事件。
老若男女関係なく、次々と村人が消えていく。
原因は分かっている。
だが、村人にはどうすることも出来ない。
だって、それは村人が魔物を起こしてしまった代償なのだから。
そう。現実でも決して現れる事はない。
だけど、魔物は現れる。
それも...夢の中で...
魔物に選ばれる村人は、ある晩に夢を見る。
それはそれは、とても豪勢で、心地の良い夢を見る。
一生味わう事の無い贅沢も、夢の中でなら味わうことが出来る。
城、宮殿、屋敷、夢の中に出て来る建物は、どれも素晴らしいと言う。
何故夢を見せるのかは分からない。
それは魔物の恩情か、それとも只の気まぐれか。
私はまだ夢を見た事が無いけれど、多分...近々夢を見る事だろう。
それはそれは、幸福な夢を...
魔物は必ずやって来る。
それは村人を誘導するため。
魔物は必ず夢の中。
それは夢でしか会えない為。
魔物は必ず現れる。
それは...約束だから。
綺麗な夢をお見せしよう。
心地良い感覚を味合わせてあげよう。
消えない夢を、届けよう。
村人が起こした魔物。
だけど魔物は繰り返す。
夢と現実は交差しない様。
現実は夢であると。
夢から覚めてしまわない様に、夢へと導く。
魔物は誘う。
手に入れた小鳥を逃がさない為にも。
夢の籠に小鳥を閉じ込め、魔物は可愛がる。
だけど小鳥が籠から逃げたら、魔物は小鳥を追いかける。
鋏を持って、舌なめずりをしながら小鳥を追う。
魔物が小鳥を捕まえたら、小鳥は鋏で切り裂かれる。
真っ二つに切り裂かれた小鳥からは、赤黒い液体が零れ落ちる。
その小鳥を見て、魔物は満足する。
まだ壊れていない、と。
魔物は動かない小鳥を再び籠に入れ、小鳥が目を覚ますのを待つ。
何時までも何時までも...
そして小鳥が目覚めたら、魔物はまた、小鳥を夢へと誘う。
繰り返しても繰り返しても逃げる事は出来ない。
それは何度も何度も何度も何度も。繰り返された事。