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インセイン(リライト資料用)  作者: 森内カンナ
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お人形遊び

萌香の初潮は小学5年の秋だった。同学年の子達よりも早かった。

初潮が来てしばらくして、徐々に萌香の体の線は少女のそれから女のそれに変わり始めていた。

しかしながら身長の伸びは低調で中学に入る頃にはもうそれ以上伸びなくなってしまった。

学校でも性教育の為のビデオを見たりなど、性的なことへの関心が生まれてくる年頃。早くも胸が膨らみ始めていた萌香は母親にブラジャーを買ってもらった。

友達がまだ身に着けていないその下着を初めて身に着ける嬉しさと恥ずかしさ。学校では早々に萌香がブラジャーを着けていることが同学年の女子の間で話題になったものだ。


萌香には4歳上の兄がいる。小柄な萌香から見ればはるかに大きく少し怖い兄。それでも萌香が小学校低学年の頃はよくじゃれて遊んでもらったものだ。しかし急にキレて怒り出すことがあり、そんなときは本当に怖かった。

ある日のお風呂上り、パジャマ姿で室内をうろついているとある日突然兄にそんな恰好でうろつくなと叱られた。何故だかわからなかった。

後はもう寝るだけだったのでおとなしく自室に戻り灯りを消してベッドに入る。小さく伸びをしてあくびをする。

眠りは速やかに訪れて萌香は静かな寝息を立て始める。静かな、いつも通りの夜。


萌香は急な違和感で目を覚ました。身体の左側を下にして寝るクセのある萌香は、そうして寝ていると部屋のドアに背を向けた格好で寝ることになる。

かけ布団がまくり上げられていて背中が寒い。

そして。

誰かが萌香のお尻を触っていた。気持ち悪さと恐怖に萌香は身体を固くする。気配の変化で萌香が目を覚ましたことに気付いたのだろう。動作が徐々に大胆になっていく。

「声出すなよ」

ささやいたのは兄だった。

身体を仰向けにされる。怖くて目は開けなかった。あくまでも寝ているふうを装う。目が覚めていることは相手にもわかっていることは承知しているのに。

兄の指がパジャマのボタンをはずしていく。中に来ていたキャミソールを捲し上げられる。

あらわになった胸が寒い。兄はそのまましばらく萌香の体を眺めていた。

右手が胸に触れる。思わずビクっと身体が震える。しばらく胸の感触を確かめた後、兄は萌香の乳首を舐めた。

背中がぞくぞくする。気持ち悪いのか気持ちよいのかわからない。でもこれはいけないことだ。それだけはわかる。絶対に誰にも知られてはいけない悪いこと。

兄は萌香の両の胸を好きなだけ嬲り部屋を出ていこうとした。去り際に言う。

「誰にも言うなよ」

萌香は目を瞑ったまま答えない。反応がないのを了解と捉えたのか、そのまま部屋を出てドアを静かに閉める。

兄の部屋のドアが閉まる音がかすかに聞こえた。

萌香はぎゅっと閉じていた目を開き、乱された衣類を直す。

どうしたらいいんだろう。こんなこと、ママに言ったら絶対叱られる。

ベッドに戻り胎児のような姿勢になって布団にくるまる。

締め付けるように苦しい胸を抱きしめながら目を閉じる。

怖い。汚い。助けて。

声にならない声を頭の中でリフレインするうちにいつの間にか萌香は再び眠りに落ちていた。


萌香は夜が怖かった。あの日以来、週に一、二度くらいの頻度で兄は深夜に訪れる。

急に訪れる体の違和感が萌香の体を凍らせる。ぎゅっと目を瞑ったまま、まるで眠っているように振る舞う。人形を弄ぶように兄は萌香の体を好きなように扱った。

好きなだけ「お人形遊び」をすると兄は部屋を出ていく。


そんなことが中学二年の秋頃まで続いていた。

徐々に夜更かしが出来るようになった萌香は兄より先には寝ないようになっていた。萌香が起きていれば兄はやってこないからだ。

そうするうちに兄は進学とともに家を出ていった。

夜更かしはすっかり習慣となり、兄がいなくなったあともそれは変わらなかった。


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