パーマネント
はじまり、はじまり。
天の国では、天使たちが毎日、大きな石臼で小麦を挽いている。石臼の一周が地上の一日となり、こぼれる小麦が夜空の星となる、極めて重要な作業なのだが、大変骨の折れるものなので、来月のシフトが発表されるたびに「俺、この日法事でさ?」「私、未消化の有休があってね?」と、みっともない会話が交わされるのだった。
ある時、もう粉挽きをサボりたくてたまらない天使たちは、地上で最もサボる能力に長けた生物である人間に、自動粉挽き機の開発を委託した。委託費は地動説のネタばらしだった。
人間はたちまちの内に自動粉挽き機を完成させ、天使たちは「嫌なことをなすりつけ合うって、良くないよな!」「文明が私たちの心に平和をもたらしたわ!」と大喜びで、さっそく粉挽き機にすべてを任せて休息に勤しんだ。
ところで人間の開発した粉挽き機には仕掛けが施されていた。日曜日だけ、粉挽きの一周にかかる時間が少しだけ長くなるのだ。おかげで地上では休日を長く過ごすことができた。
それがばれたのは、地動説がいよいよ真実味を帯びてきたころだった。日曜日の延長が積み重なって、きっかり364日で太陽を一周してしまったのだ。
「なんだか一日ずれてるぞ」と天使たちは大騒ぎして、
神様に全部ばれ、
雷を落とされ、
天使たちは皆パーマになった。
もちろん粉挽き機も破壊され、元の石臼作業に戻されてしまった。
「人間たちめ!」「あのサボり魔!」
以来、天使たちの逆恨みによって、日曜日だけ、少しだけ短くなってしまった。うるう年の原因となる地球の自転のずれが、実は日曜日にだけ発生している事実について、NASAは黙秘中だ。
(おしまい)