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今回は、短めです。
「うへ…。もう食べられないよ…」
ニヤニヤと、幸せそうなニヤケ面で、よだれを垂らしながら、お決まりの寝言を言う夕は、保健室のベットに運ばれていた。
「幸せそうだな…。」
呆れた声を漏らすのは、担任の西ちゃんこと西園寺だった。
「…だから、もう食べられないってば…、生卵50個はきつい…、むちゃむちゃ。」
「拷問!?」
「…ん。あれ、西ちゃん…」
拷問?の夢から目覚めた夕は、薄らと目を開け視界に入る西園寺に、声を掛けるが、寝起きのせいか、声が擦れており、ボーっとした顔をしていた。
「…大丈夫か。」
「…」
まだ、頭が寝ぼけているせいか、少しの間を置き、思い出したように、話し始めた。
「ヒナは。ヒナは大丈夫だったのですか?」
「ヒナ…?おい、おい。まだ寝ぼけているのか。生卵50個の事か?」
「…?生たま…。何言ってんですか?」
ちなみに、西園寺は、夕が尾上陽太をヒナと呼んでいることは知らない。
更に言うと、夕が言っているヒナを雛鳥のヒナと、勘違いしている。
「いや、夢で見ていた生卵50個の、あったであろう未来の話をしいるのでは?」
「…?生卵、未来…。そうか、分かったわ。」
何かを悟ったように、目を閉じて薄ら笑いを浮かべる夕に、「何がわかったんだ」と、突っ込みを入れる西園寺だが、全く聞いていない。
夕は、少し間を置き、ドヤ顔で、西園寺を指差し、言い放った。
「…。あなた、西ちゃんになり変って、未来から来た、卵泥棒ね!?」
「違う。」
「…ですよねー。ところで、ヒナ…尾上陽太は?」
強引に、話を戻す夕は、再度陽太について、質問する。
「尾上か。あいつなら、昼食でも取っているんじゃないか。」
「昼食…」
夕が気を失ってから、気がつくまでに、学園では、昼食タイムに突入していた。
「じゃ、ヒナは、無事だったんですね。」
陽太が無事であることを知った夕は、ホッした表情をした。
「無事も何も、私が教室に入ったら、魔力使い果たして、力尽きている王月を尾上が抱えて経っていたんだ。」
「…力尽きた私…?」
話を不思議そうに聞いている夕に、疑問を持つ西園寺は、質問する。
「違うのか?」
「…いや、気を失う直前の事をあんまり思い出せなくて…、なんか…でっかい?火の玉が…、白い空間にのまれて、ピカピカって赤い光が…。」
思い出しながら話しているせいか、途切れ途切れで話す夕だったが、ついに話が途中で途切れてしまった。
「ピカピカって赤い光が…どうしたんだ?」
「んー。…赤い光が…光っていたそうな。」
「なんか、日本昔話みたいになって終わってるけど!?まぁー寝ぼけていたんだろ?」
「…そうですかね。」
「もう少し、休んでいろ。魔力を使いきった後は、力が入らないからな。」
「…はい。」
返事をした夕は、目を閉じ、あの時あったことを思い出していた…が、でもやっぱり思い出せそうもないから、直ぐ寝たのであった。
次回も頑張ります。