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何とか、今日中に間に合いました。

校舎内に入り、ダルそうに下駄箱へ向かう陽太。下駄箱へ靴を入れ、上履きを取りだし、履きかえ、教室へと向かう。


教室へ向かう途中に、置いてあるゴミ箱をガサガサとあさりながら、「さすがに、まだ捨てないか…。」等とブツブツ言っている。


どうやら、少年スキップが捨てられていないか、チェックしているようだが、周りは完全に不審者扱いだった。


「何、あいつ。」やら「うわっ!気持ち悪い。」等など、散々の言われようだが、聞こえているのか、いないのか、本人は全く気にしていないようだった。


結局、少年スキップが見つからないまま、自分のクラスへ着いてしまった。


5thフィフスと書かれた札が付いている扉をガラガラと開け、自分の席へ向かう。


陽太の席は、窓際の一番後の席と、怠け者にとって最高の立地だ。ガタリと、椅子を引き腰かける、バックを机の横に取り付けてあるフックへと引っかける。


椅子の背もたれに、全体重を掛けるかの如く、グデッと座り、ボーっと青空を窓越しで眺めている。


「また、副委員長ともめたんだって?」


陽太の前の席に座る、少年。短髪茶髪で、これと言った特徴の無い、モブキャラの代表の様な顔をした少年が、陽太に話しかける。


「おぉ。モブ夫。いたのか?」


「おい!モブ夫じゃねぇ!陽介だ!大神陽介おおがみようすけ。」


「おいおい。バカにするなよ。そんなことは知っている。大神陽介、略してモブ夫だろ?」


「何をどう略したのか言ってみろ!一文字も略されてねーだろが!んなことより、副委員長ともめたんだろ?」


自覚しているからなのか、陽介はモブキャラネタを本気で嫌がっているようで、強引に話題を戻した。


陽介とは、入学式の次の日に行った席替えで、現在の席、つまり陽太の前の席になったのがきっかけで話すようになったクラスメートだ。


お互いクラス内では、一番話す相手だ。友達と言うか、悪友と言うか、バカ友である。


「あ!そうだ、そうだよ。あいつのせいで、少年スキップが…そういや陽介、スキップ今週号持ってないか?」


「おう。あるけど、まだ読んでないのか?」


「アホ女に焼かれちまったんだよ。じゃ、貸してくれ。一限中には、読み終わっから。」


「絶対ヤダ。俺まだ読んでねーんだよ!」


「おいおい。俺の速読、なめんじゃねーぞ。1限と言わず、0.5限で十分だ。どうだ?」


「いや、どうだじゃねーから。そもそも、授業中に読むなっての。昨日もお前に貸した本、授業中に読んでるの西ちゃんにばれて、燃やされてたじゃねーか。昼休みに読め。」


「はぁ…しょうがない。分かったよ。昼休みに読むことにするわ。」


陽介の意見に賛同した陽太は、スッと、右手を陽介に差し出した。


「…。何この手?」


「いや、だから、スキップは昼休みに読むから、とりあえず、今俺があずかっておく。だから、はい。」


陽太はそう言うと、も一度、要求する様に右手を陽介へ差し出した。


「はい。じゃねぇー。昼休みになったら渡す。」


「減るもんじゃねーんだから、ガタガタ言うなよ。」


「減るどころか、燃えてなくなるだろーが!絶対嫌だ!」


そんな二人のアホなやり取りを聞いていた少女が、割って入る。


「ひな、しつこいんじゃない?授業中は黙って勉強しなさいよ!!」


陽太の隣の席の少女だ。ごげ茶色の髪をアップにしている為、小顔が更に際立って見える。目は大きくて、鼻口が小さい。お人形の様な綺麗な顔立ちをした少女の名は、王月夕おうづきゆう


夕も、陽介同様、席替えがきっかけで陽太と話すようになったバカ友である。


「授業中に、目を開けたまま、鼻ちょうちん作って爆睡こいている、品のねー女に言われたくないわ。何あれ、一発芸か何かのたぐいですか?」


夕に反撃する陽太。


「そ…そんなこと、するわけ…無いじゃない。ねぇっ!」


夕は周りに同意を求めるが、全員夕から視線をそらしている。みんなの行動が、陽太の言っていることを肯定していた。


「うぅ…。皆酷い…」


しくしくと、項垂れる夕であった。


「夕はともかく、そもそも、1限、2限の、魔法学は実技だし、3、4限は、移動教室だ。どっちにしろ読めねぇよ。大人しく、昼休みまで待て。」


「けっ!」


陽介の説得により、不満たっぷりに、諦める陽太だった。




SHRショートホームルームが終わり、5thクラスの生徒は、1限目の魔法学を学ぶ為、魔法教室へと向かう。


魔法学には、実技と、学科があり、学科の場合は、魔法学についての知識を学ぶ為、基本的には教室で行う。


実技の場合は、実際に魔法を使う為、専門教室である魔法教室で練習を行う。


魔法学は、実技をメインとして行うので、7を実技とすると、3で学科を学ぶ割り振りだ。


では、魔法学の実技を行う為の場所、魔法教室とは何かと言うと、失礼ではあるが、体育館と言うのをご存知だろうか。


体育館とは、体育を行う為の専用の教室だ。その為、激しい衝撃などに耐えられる造りがされている。


それと同じように、魔法教室も、激しい衝撃は勿論、魔法攻撃の耐久性も抜群な造りとなっている。ただ、魔法教室は、かなり特殊な造りがされている為、設置費用は、かなりの額が必要となる。


かなりとはどれ位かと言うと、魔法教室が設置されていない学校を一つ建てるのと大して変わらない位の費用だ。


なので、魔法教室の数が学校の地位をあらわしていると言われている。これも、魔法優劣社会ならではの現象と言うやつだろうか。


ちなみに、この光ヶ丘高校は、魔法教室専用の棟があり、5階建てで、1階につき、二つの教室が設置されている。


数で言えば、10教室設置されているのだ。一つの高校にこれだけの数の魔法教室が設置されているのは光ヶ丘高校以外は無い。


「さて、俺達も行くか。」


陽介は、陽太に呼びかけ、二人は、教室を後にした。




「こりゃすげーな。さすが、天下の光ヶ丘高校だな!」


陽介は、魔法教室専門棟を見上げて、驚いていた。


棟の中に入ると、大きな廊下があり、「1-A」と書かれた大きな扉と、「1-B」と書かれた大きな扉がある。


更に、大きな廊下の左奥には、エレベーターが、右奥には、大きな階段が備え付けられていた。


「かー。中もまた、えらい金がかけられているな。」


「大きな大会の会場や、各業界の著名人の講演会などでも使われていますからね。他にも、緊急避難場所なんかでも使われているみたいだね。」


驚きが止まない様子の陽介の背後から、説明が聞こえてきた。


声するほうへ陽太と陽介が振り返ると、「やぁ。」と片手を上げて、爽やかに話しかけてくる少年、今野友晴こんのともはるだ。


今野は、5thクラスの代表であり、クラストップの実力者である。小柄な体格に、坊ちゃん刈り、小さい顔に似合わない大きなメガネを掛けている。


「へぇー。さすが、代表。何でも知ってんだなぁ。」


感心したように、言う陽介に、今野は、人差し指を立て、立てた人差し指を、陽太と陽介へ向けて、笑顔で言った。


「何でもは、知らないよ。知ってることだけ。」


その瞬間、陽太は、目の前に出された、今野の人差し指をガシッと乱暴に掴んだ。


「何こいつ。今、すっげーイラッとしたんだけど。ファンを代表してこの指へし折ってもいいんだけど。」


「まぁまぁ。」と陽介が陽太をなだめる。


「ははっ。こいつは失敬。さぁ、もう授業が始まってしまうぞ!」


そう言うと、爽やかな笑顔で今野は、「1-A」と書かれた魔法教室へ入っていった。


「いちいちむかつくヤツだな!」


「気にするなよ。俺らも行こうぜ。」


最後の捨て台詞で更にイライラが増した陽太をなだめ、今野の後を追うように、魔法教室へと入っていった。

次も頑張ります。

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