これはあくまで自己防衛です
こんなに早くバトルシーンを書くことになるとは……
作中に出てくる胡狼という単語は誤字ではありません。
「先に喧嘩を売ってきたのは奴等の方だ。
俺は火の粉を振り払ったに過ぎない」
「そうだろうなぁ……お前が自分から
仕掛けてこないってことはよぉく分かってるさ。
でもなぁ--」
落木が右手を上げる。
すると他の不良達が前に出てきた。
「俺達ブルゾンタークスにも、面子ってもんがあるんだよ。
だからよぉ……少しばかり痛い目に遭ってもらうぜ。
お前ら、やっちまいな」
それだけ言って落木は踵を返し、この場から
立ち去っていった。
「くっ!三人共下がって!」
先輩が私達を護ろうと前に出る。
その気持ちは嬉しいが、
私達はこの程度の輩に負けるほど弱くはない。
それに--
「なぁ……モウ殺ッテモイイカ?」
こちらには胡狼が居る。
負けるはずがない。
私は殺気を垂れ流しにしている有紀に
「あぁ……殺れ」
狩りの許可を出した。
別当琢磨は焦っていた。
ブルゾンタークスがいずれ報復しに
来るとは思っていた。
だが、まさかこんなにも早く報復しに来るとは
思ってもいなかった。
自分の浅慮さに怒りを覚えながらも、
チラリと後ろを見る。
この道場を訪ねてきた三人の少女。
彼女達はこの下らない諍いには何の関係もない。
だからこそ、巻き込むわけにはいかないのだ。
必ず護って見せる。
そう強く決意した瞬間--
「オォォォラァァァァ!!」
咆哮と共に一瞬で琢磨の横を誰かが通りすぎ、
不良の一人の顔に飛び蹴りを叩き込んで
昏倒させた。
その人物とは--
「まずは……一人」
自分が護ろうとしていた少女の一人だった。
不良達は突然のことに理解が追い付いていないのか、
ただ立ち尽くしている。
「次ぃ!」
有紀がそれを見逃すはずもなく、
すぐ近くの不良の腹を殴って怯ませ、
更に顔面を二発殴り、上段回し蹴りを叩き込んで
壁に叩きつけた。
「二人……」
不良達は二人倒されてようやく正気を取り戻し、
有紀に向かって行く。
だが、私と蘭が不良達の前に立ち塞がる。
「私達を忘れてもらっては困るな?」
「そうッス!自分達の相手もして欲しいッス!」
「んのアマァ!!」
「なめやがってぇ!!」
私達の言葉に逆上した二人の不良が、
こちらに向かってくる。
残り一人が制止しようとするが--
「おっと、テメェの相手はあたしだぜ?」
「くっ……」
有紀に目を付けられてしまい、
有紀と戦わざるを得なくなっていた。
上手い具合に分かれたな。
これで目の前の相手のみに集中出来る。
私は展開した特殊警棒を構え、精神を研ぎ澄ませる。
「……」
「何だ?びびっちまったか?」
不良が何か言ってきたが、耳に入ることはなかった。
相手は素人、焦る必要はない。
動きを見切り、最小限の動きで避け、一撃で仕留める。
「おりゃあ!」
不良が拳を振るってくる。
だが--
(遅い……)
ほんの僅かに身体を反らし、拳を避ける。
そして踏み込み、一気に距離を詰め--
「どぉぉぉぉう!!」
掛け声と共に、生徒の胴体に特殊警棒を打ち込んだ。
不良は声を上げることも出来ずに床に沈んだ。
ふん、造作もない。
「ほいっと」
「ごべらっ!?」
「一丁上がりッス♪」
蘭の方も片がついたようだな。
あとは有紀だが--
「そらそらそらぁ!」
「ぐあぁぁぁぁっ!!」
……これは酷い。
もはやサンドバッグ扱いだ。
気が済むまであいつは止まるまい。
冥福を祈るぞ、名も無き生徒よ……