人にいきなり殴りかかるのは止めましょう
性格ってのは簡単に変わっちまうのさ……
「もう起き上がったッス!大丈夫なんスか!?」
「何、こいつはゴキブリ並の生命力があるからな。
このぐらいでは大して堪えん」
「いやぁ~照れるなぁ」
何を勘違いしたのか、有紀が勝手に照れ始める。
本当におめでたい奴だ。
「こいつのことは気にするな。馬鹿だからな」
「わ、分かったッス。……ところで朱鷺乃は、
部活はどうするッスか?」
「部活か?一応入るつもりではあるが……」
「やっぱりそうッスか。……実はここに来る前に
良くない話を聞いたッス。
最近道場が不良の溜まり場になってるらしいッス」
「溜まり場?なぜわざわざそんな場所に?」
「さぁ……自分は偶然聞いただけッスから、
詳しいことは分からないッス」
蘭の言葉が本当なら、道場は使えないことになるが……
それを確認するまでは、剣道どころではなさそうだ。
「取り敢えず、行って確かめるしかないだろう。
もし本当ならば--」
「ぶっ潰す……だろ?勿論あたしは着いてくぜ」
有紀は普段の気の抜けた顔から一変して、
獣のような獰猛な笑みを浮かべ、指の関節を鳴らす。
有紀は普段の姿からは想像がつかないが、
かなりの実力者で、素手で戦えば
私では勝つことが難しい。
そして、戦闘狂という厄介な一面もある。
「自分も行くッス。数は多いに
越したことはないッスからね」
「あぁ、助かる」
蘭に礼を言って、私達三人は道場へと向かった。
「……誰も居ないな」
「居ないッスね」
「居ねぇなぁ」
道場に来てみたものの、道場には誰も居なかった。
取り敢えず周りを調べてみると、
酒の空き缶や、煙草の吸い殻などが見つかった。
溜まり場として使われていることは間違いないようだ。
「……話は本当のようだな。みろ、吸い殻や空き缶が
こんなにあったぞ」
「それだけじゃないッスよ。ほら、寝袋やラジオ、
あとマンガもあったッス。
よくもまぁこんなに持ってきたもんッスねぇ」
「こりゃ完全に黒だな。これで心置き無く
ぶっ潰せるってもんよ。ケケケッ」
次々にここを溜まり場にしている連中の
娯楽品が出てくる。
連中は道場をなんだと思っているんだ?
……あと有紀、貴様は性格が変わり過ぎだ。
その後も色々と調べてみると、道場の扉が開かれた。
扉の方に向くと顔に沢山の青あざを作った
男子生徒が立っていた。
「……誰だ?君達は?」
「私は「あんたがここを溜まり場にしてる奴だな?
悪いがぶっ飛ばさせてもらうぜっ!」なっ!?待て!!」
私が言葉を発しようとした瞬間に、有紀が
勝手に男子生徒に殴りかかっていく。
あの馬鹿が!!まだそうだと決まったではないというのに!!
有紀にいきなり殴りかかられた男子生徒は
それを避けることも出来ず--
「グハッ!?」
あっさりと殴られ、気絶してしまった。
「……あれ?」
静まり返った道場に有紀の声が空しく響いた……