自己紹介
暑い……このままでは溶けてしまいそうだ……
有紀をしばいていると、
チャイムがなったため席に戻る。
気絶した有紀は、扉の前に放置した。
その内目を覚ますだろう。
……
…………
………………
「……来ないな」
チャイムがなったというのに、
教師が一向に来ない。
何か問題でも起きたのだろうか?
この学園では問題の一つや二つは、
当たり前のように起きるだろう。
そう考えた時--
「ち、遅刻だぁぁぁぁ!!」
廊下から大きな声が聞こえてきた。
その直後扉が思いっきり開け放たれ、
オイルなどで汚れてしまっている
作業用のツナギを身に纏った外人の女性が、
背中まで伸びる金髪を靡かせて駆け込んできた。
「ブファッ!?」
その際有紀が踏みつけられたが、
女性は全く気付くことなく教壇に上がった。
「いやぁ、ごめんね……車を弄ってたら、
つい夢中になっちゃって。たはは……」
女性が頭を掻いて苦笑いする。
……なるほど、問題があるのは
学園長だけではなかったか。
車を弄っていてHRに遅れるとは問題外だな。
というか、外人なんて居たんだな。
「初めましてっ!皆の担任を勤める
ことになりました、フェン・スタイリーです。
これからよろしくね♪」
スタイリー女史の自己紹介を聞いて、
男子生徒達が歓声を上げる。
「やはは……なんか照れるちゃうな……」
スタイリー女史は照れているのか
頬を朱に染め、頬を掻く。
それを見た男子生徒達は更に歓声を上げた。
「と、取り敢えず自己紹介しよっか!
そこの君から始めて!」
スタイリー女史は男子生徒達から発せられる
歓声に耐えられなくなったのか、
適当に目に付いた生徒を指名して
自己紹介を始めさせた。
指名された男子生徒が立ち上がる。
髪を金色に染めて耳にピアスを着け、
制服を着崩したその姿はいかにも
不良といった物だった。
「……木宮朔」
ただそれだけを言って木宮は席に座る。
それに続いて後ろに座っている
背中まで伸びる水色の髪を一つに纏め、頭の上に
アホ毛を生やした小柄な女子生徒が立ち上がった。
「自分は立浪蘭、趣味はテコンドーッス!
これからよろしくお願いするッス!」
ほぅ、武道経験者か。
今度手合わせでも頼んでみるか。
その後は淡々と名前を言うだけの自己紹介が続き、
有紀の番になった。
「次は愛染さんの番なんだけど……遅刻かな?」
いえ、入口に倒れています。
しかもさっき貴女が、
思いっきり踏みつけていました。
「遅刻なら仕方無いか……愛染さんは飛ばして、
次の人が自己紹介しちゃって」
スタイリー女史の指示で、自己紹介が再開される。
すぐそこに居ることも気付いて貰えないとは……
哀れな奴だ。