大会開始っ!
野球大会当日、私達は体操服に着替え、
グラウンドに集合していた。
「こーゆー行事はアタシの独壇場だぜぃ!」
有紀が気合い十分といった様子で柔軟体操をしている。
まぁ、コイツは基本的に運動系の行事しか活躍出来ないからな。
気合いが入るのも当然だろう。
「うーん、良い天気ッスねぇ。まさに運動日和ッス!」
「蘭は野球が好きなんか?」
「野球というよりは運動そのものが好きなんスよ。
体を動かすのは気持ち良いッスからね♪」
「健全やなぁ。まぁ、わっちもなんやけど」
深紅と蘭も会話を楽しんでいた。
二人とも仲良くなれたようで何よりだ。
他の者達も気合いを入れたり、準備体操をして大会に備えている。
そんな中、グラウンドの一角に人だかりが出来ていた。
そこに居る者達は全員特攻服を身に纏い、
手にはヤンキーでも分かる野球ルールと
書かれた本を持ち熱心に読んでいる。
その中心には……盛大にイチャついているうちの両親が居た。
「ン~♪時雨の髪は良い臭いがするな~♪」
「そう言う君の胸もマシュマロのように柔らかいぞ」
「アンッ♪もう……時雨のスケベ」
「否定はしないよ」
……恥ずかしい。顔から火が出そうだ。
見ろ、皆見てるじゃないか。頼むからこんな場所で
イチャつかないでくれ……
「なァ、今から保健室にでも行って一発ヤらねェか?
俺はもう我慢の限界だよ」
「全く……イケナイ子だな、君は。
だが、私は君のそんなところが何よりも愛おしい」
「へへっ俺も、時雨の全部が大好きだぜ♪」
「嬉しいことを言ってくれるな、君は……。
その想いに応えて快楽を与えて上げなくてはな?」
「わーい♪」
耳を塞ぎたくなるような甘い言葉の応酬の後、
二人は学園へと消えて行く。
開会式が始まるまで、二人は戻ってくることはなかった。
開会式はつつがなく終わり、掲示板に対戦表が貼り出された。
「私達は三試合目か」
「少しの間時間があるッスね」
「どないしよか?」
「ポーカーでもする?」
有紀が何処からかトランプを取り出す。
お、中々準備が良いじゃないか。
「ここでトランプは不味いッスよ。ねぇ朱鷺乃?」
「いいや、ここはポーカーよりもババ抜きだろう」
「朱鷺乃もッスかっ!?」
「いーや大富豪やろ」
「深紅もっ!?」
暇を潰すにはトランプが一番だからな。
それに、学園もトランプをすることぐらいは
許してくれるはずだ。
「おっしゃあっ!早速俺達の出番だっ!
格の違いってヤツをガキ共に思い知らせるぞっ!」
「「「おーっ!」」」
「結華さん達気合い入ってるねぇ」
「こっちとしては、あまり気合いを入れないでほしいんだがな」
「あーわっちも気合いは入れて欲しくないなぁ」
母さん達が何をしでかすか分かったもんじゃない。
頼むから問題は起こさないでくれよ……
「それではこれより第一試合、3年Cクラス対
デッドライン選抜チームの試合を始めます。礼っ!」
『よろしくお願いしまーす』
グラウンドに集まった両チームが審判に促され礼をする。
早速第一試合から出番が出来た結華達だが、
相手の3年Cクラスはブルゾンタークスの悪共の巣窟であり、
どんな卑怯な手段を使ってくるか分からなかった。
「よぉ美人さん、おっぱいでけーなぁ」
「あとで俺達と遊ぼーぜ。うへへっ」
それぞれの選手がベンチに戻っていく中、
3-Cの二人の生徒が結華に言い寄る。
「ハッ!もしもテメェらが試合に勝てたら
好きなだけ俺を抱かせてやるよ」
それを結華は鼻で笑い、トンでもないことを言い出す。
「うっひょーっ!マジかよっ!こりゃ死んでも勝たねーとなっ!」
「へへへっその言葉、忘れんなよ?」
結華の言葉を聞いた二人は一気にやる気になり、
足取り軽くベンチに戻っていく。
結華は意気揚々とベンチに戻ったところで
突然時雨に抱き締められた。
「……急にどうした?」
「君はいつも無茶をするな」
「あ、聞こえてた?」
「私にはな。……頼むから二度とあんなことは言わないでくれ。
君が私以外の男に抱かれる姿を想像するだけで
おかしくなってしまいそうだ」
そう言って抱き締める力を強める時雨。
結華は背中に手を回し、安心させるように
優しく背中を叩いた。
「大丈夫だって、あんなガキ共に負けやしねェからさ。
それに、もし負けたとしても守ってくれるだろ?」
「……あぁ、もちろんだ」
「それでこそ俺の旦那だぜ♪」
結華は明るい笑みを浮かべる。
試合が始まるまで二人は抱き締め合っていた。