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天王寺学園!  作者: チル兄
家族集結、そして野球大会?
27/29

ただいま

バカップルを書くのって何でこんなに楽しいんだろ?


 あの二人と別れた私は、その後も街を散策しながらも

 歩き続け、ある店の前で立ち止まった。

 喫茶店デッドライン……私が彼女と共に

 開いた店であり、私の帰るべき家。

 ようやく帰ってくることが出来た……


 彼女は私を見たらどんな反応をするだろう?

 ……きっと大泣きされるだろうな。

 出来ることなら、彼女の涙は見たくないのだが……

 ……まぁ、なるようになるか。

 私はそう頭の中で結論付け、扉を開けた。




 俺は空いた席に突っ伏していた。

 やる気が一切出ねェ……

 何時もなら、こんなことしてたら一に

 ぶっ飛ばされるか、朱鷺乃や深紅に叱られるンだが

 今は三人共居ねェから俺を働かせようと

 する奴はここには居ねェ。

 ……さっき誰かに声かけられた気がしないでもないが、

 どうでも良い。

 そんなことを気にしてる余裕は今の俺には無ェ。



 「……あ~時雨に会いてぇな~帰ってこねぇかな~」



 どうせまだ帰ってこないんだろうけどさ。

 今頃、ゲリラの村とかに居てガキ共に勉強でも

 教えてるンだろうなァ。

 ……俺の気持ちも知らずによォ。

 ああクソッ!また腹が立ってきた!

 帰ってきたらブン殴ってやるからな!あンちくしょー!


 俺が時雨をブン殴る決意を固めた時、

 店の扉が開かれた。

 --が何時ものような威勢の良い挨拶が

 聞こえてこず、代わりにざわめきが聞こえてきた。

 店の奴らには、腹の底から声を出して

 挨拶することを徹底させてる。

 威勢の良い挨拶をすることが、この店に来てくれた

 客に対する一番の礼儀だと思ってるからだ。

 アイツらにもその事は話したはずなんだが……



 「て、店長……」


 「あンだよ……俺のことは放っておけよ」


 「いや、だけど……そのぉ……」


 「チッ一体なんだっ……て……」



 苛立ちながら席を立ち、顔を上げる。

 下らない用件なら一発殴ってやろう。

 その時はそう考えていた。

 だが--



 「……え?」



 そんな考えは、扉の前に立っている人物を

 視界に収めた瞬間に呆気なく崩れ去ってしまった。

 長くて綺麗な銀髪、女にしか見えない顔、

 そして口元に浮かべている穏やかな笑み……

 間違いなく俺の旦那の時雨だ。

 遂に俺は幻覚まで見るようになったのか?

 突然のことに働かない頭でそンなことを考えていると、

 時雨はゆっくりと俺に歩み寄ってきて--



 「あ……」



 俺を抱き締めた。この安心する温もり……

 これは幻覚なンかじゃない。確かに時雨はここに居る。

 それを確信したのと同時に、目から止めどなく

 涙が溢れてきた。もう時雨をブン殴る

 ことなんて頭には無い。

 ただ、時雨が帰ってきたことが嬉しかった。



 「時雨ェ……」


 「勝手に旅に出てすまなかった。

 怒っているだろう?」


 「怒って……ヒック……ない……」


 「泣かないでくれ結華。私は、君の涙を見たくない」


 「だって……嬉しくて……」



 時雨が帰ってきた嬉しさや泣いちまった

 恥ずかしさがごっちゃになって満足に

 喋ることも出来ねェ。

 だが、これだけは言わないと……



 「時雨ェ……お帰りィ……」


 「あぁ……ただいま」





 「……で?ずっとあのままなのか?」


 「へい……」



 私の問いに左頬に湿布をつけた小田島が頷いた。

 店に戻ってきた私たちが見た物は、

 盛大にイチャつく我が両親だった。

 ……帰ってきたんだな父さん。



 「あーん」


 「あーん♪」


 「美味しいか?」


 「うん♪もっとちょうだい♪」


 「フフフ……良い子だ」



 ……突っ込まんぞ。

 四十代にもなって何イチャついてるんだとか、

 少しは周りの目を気にしろだとか

 絶対に突っ込まんぞ。



 「では、そんな良い子には特別に口移しで

 食べさせてあげよう」


 「わ~い♪」



 ……絶対に……



 「……なぁ、あの二人止めた方がええんちゃうか?」


 「小田島にでも止めさせろ」


 「いやいや、あん人じゃ無理やろ……」


 「じゃあお前が止めろ」


 「あの二人を止める勇気はわっちにはないわ」


 「私にだって無い。……終わるまで我慢しろ」



 その後も二人はイチャつきつづけ、

 夜になるまで落ち着くことはなかった。



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