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天王寺学園!  作者: チル兄
家族集結、そして野球大会?
23/29

親の愛は唐突に無くなってしまうことがある

後半シリアス?

 「ふィ~何とか撒いたぜ……」



 大きく息を吐きながら、ときめき五郎から降りる。

 アイツら、しつこく追ってきやがって……

 おかげでもっと遅れちまったぜ。

 驚いた表情でベンチに座ったまま固まっている

 深紅に歩み寄り--



 「久し振りだな。深紅」



 わしゃわしゃと頭を撫でた。

 頭を撫でられた深紅はすぐに正気に戻り、

 ベンチから立ち上がった。



 「いやいやいやっ!久し振りじゃないやろ!?

 人跳ねたんやで!?人!!」


 「……気のせいじゃね?」


 「気のせいやないて!ほら!!」



 深紅が指を指した方向を見る。

 そこには--



 「しっかりしろ明彦!!」


 「い、一体……何が……ガクッ」


 「明彦おぉぉぉ!!」



 ………………



 「さてっ帰るとするか」


 「何も見てない振りせんでや!」


 「だってさーこれ以上問題起こして朱鷺乃に

 怒られたくないンだもンよー」


 「元々悪いのは結華さんやないか!

 少しは反省せぇや!」


 「バッカお前、俺はもう申し訳なさで一杯だぞ?

 今すぐ土下座して謝りたい気分だからな。

 気分だけで実際にはしねェけど」



 そう言いながら、深紅にヘルメットを被せる。

 そして深紅を横抱きに抱き上げた。



 「ちょっ--」


 「暴れンなよ?別に取って食うわけじゃ

 ねェンだからよ」



 深紅を横抱きにしたままときめき五郎まで歩き、

 そのまま座席の上に降ろす。

 俺も深紅の前に座った。



 「さーて、マジでそろそろ帰るとするか」


 「その前にあの人の手当てせんとあかんやろ!」


 「大丈夫だって。ありゃ大した怪我じゃねェよ」


 「何でそんなこと分かるんや?」


 「目の前で人がバイクに跳ねられたことが

 何度もあるからな」


 「何でや!?」


 「内緒だ。そら、腰に手ェ回せ。

 ときめき五郎走らせンぞ」



 深紅が腰に手を回したことを確認して、

 ときめき五郎を走らせた。





 俺たちは来た方向とは真逆を移動していた。

 来た道はサツが網を張ってる。

 無理に抜けれねェことはねェが、

 深紅が居るし少しばかり面倒だ。

 だからサツには知られていない抜け道を

 使うことにした。

 遠回りにはなるが、余計な手間がかからないで

 済むンだから文句は言えねェ。



 「それにしても、よく養子の話を受けてくれたな?

 俺はてっきり断られると思ってたンだが……」


 「断るわけあらへんやん。

 結華さんの子供になれるんやから」


 「そう言ってくれるのは嬉しいンだがよォ。

 アイツらときちンと話しはしたのか?」


 「……あいつらと話すことなんて何もあらへん」


 「……」



 そんなことはない。

 そう言おうとして口を開くが、

 言葉に出すことが出来ずに口を閉じる。

 親とろくに会話もせず、顔を合わせれば

 すぐに口論になり、終いにはそれが原因で

 勘当されてしまった俺に、それを言う資格は無い。


 荒井深紅……この子と出会ったのは、

 十五年も前のことだ。

 当時仲が良かった深紅の両親に名付け親に

 なって欲しいと頼まれ、産まれたばかりの

 深紅と初めて会った。

 その頃はまだ朱鷺乃は産まれていなかったから

 赤ん坊の抱き方なンざ知らなくて、

 色々と苦労したことは今でも良く覚えてる。

 それから暇を見て様子を見に行くように

 なったンだが……

 家族の関係が悪化していることに気付いたのは、

 深紅がまだ六歳の時だった。


 あの日、何時ものように様子を見に行くと、

 酷く落ち込んで元気の無い深紅を見つけた。

 話を聞いてみると両親が突然、

 冷たく接してくるようになったらしい。

 俺はすぐに二人を問い詰めた。

 そして、アイツらは感情の籠らない声で

 こう言いやがった。

 深紅が目障りで仕方ないと。


 その日から俺はアイツらの代わりに深紅を愛し、

 親が教える様々なことを教え、

 深紅とアイツらの関係を修復しようと奔走した。

 ひょっとしたらただの憐れみだったのかもしれねェ。

 だが、それでも深紅を実の娘のように

 愛していたのは紛れもない事実だった。


 結局、三人の関係が修復されることは無く、

 俺が(強引に)引き取ることになったが、

 これはこれで良かったンじゃねェかと思ってる。

 アイツらのところに居ても、

 居心地が悪いだけだろうし、アイツらが荒っぽい手を

 使って深紅を排除しかねねェからな。

 少なくともうちに居れば安全ではある。

 ……居心地が良いかは分からないが。



 「そう言えば、結華さんの娘って

 わっちと同い年なんやろ?どんな人なん?」


 「朱鷺乃か?……スゲェ真面目だな。その上頑固だ」


 「結華さんは毎日怒られてるんちゃうか?」


 「ウグッ!?よ、よく知ってるな?」


 「そんなんさっきの見たら簡単に想像つくわ」


 「クッ!返す言葉もねェ……」



 その後、店のことや店員達のことを話ながら、

 店への道を急いだ。



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