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天王寺学園!  作者: チル兄
学園入学
12/29

仲直り……か?

ようやく一日が終わった……

 母さんの部屋の前に到着した私は、

 取り敢えずドアをノックし、

 中に居る母さんに声をかけてみる。



 「母さん?」



 だが、母さんから応答は無い。

 部屋に居るのは間違いないはずだ。

 大方拗ねて出てきたくないのだろう。

 私は深い溜め息をついて、ドアを開けた。





 部屋の中はカーテンが閉めきられ、

 薄暗かった。

 部屋を見渡して母さんを探す。

 すると、ベッドが不自然に盛り上がっていることに

 気が付いた。

 恐らく母さんだろう。

 私はベッドまで歩み寄り、声をかけた。



 「……母さん」



 盛り上がった物がビクリと動いた。

 やはり母さんだったか。



 『……なンだよ』



 ぐもった母さんの声が返ってくる。

 その声は、普段聞き慣れた自信に溢れた

 声とはかけ離れた、か細い物だった。



 「母さん、ベッドから出てきてくれないか?

 これでは話も出来ない」


 『……話したくない』



 驚いた、まさか拒絶されるとは。

 こんなことは初めてだ。

 朝の言葉が相当ショックだったんだな……



 (どうするか?)



 今のままではとても話しは出来ない。

 かといってこのまま立っている

 訳にもいかないだろう。



 「あの、母さん?朝のことは冗談で--」


 『嘘だッ!絶対に信じないぞ!

 どうせ俺のことなンて嫌いなんだ!』



 ……まるで取り付く島もない。

 これは中々骨が折れそうだ……





 「戻ってこねぇなぁ……」



 俺はそう呟いて、コーヒーを口に含む。

 お嬢が店長の部屋に向かって、既に三十分が経っていた。

 だが、お嬢も店長も一向に戻ってこねぇ。

 きっと店長が拗ねて、満足に話も

 聞いてもらえてないんだろうなぁ……


 「小田島さん」


 「どうしたぃ明智」



 俺の舎弟である明智が歩み寄ってきた。



 「今日はもう店を閉めた方が

 良いんじゃないですか?

 幸い、今日は客も少ないですし……」


 「あー……」



 確かにそうした方が良いかも知れねぇが、

 店長の許可なしに店を閉めちまっても

 良いもんか……?



 「良いんじゃない?店を閉めたくらいで

 あいつは怒りゃしないわよ」



 いつの間にか側に居た副店長が

 閉店を許可してくれる。



 「良いんですかい?」


 「あいつには私から話しておくわ。

 仕事ほっぽり出して部屋に籠ってる奴に、

 文句は言わせないわよ」



 そう言った副店長の目は、怒りに染まっていた。

 この人、見かけによらず真面目だからな。

 店長が仕事に出てこなかったことに

 腹を立ててるんだろう。

 後が怖いったらないねぇ……くわばらくわばら。





 母さんに謝り倒して早三十分。

 どうにか機嫌を直すことに成功したのだが……



 「ムー!ムー!」


 「コラコラ、くすぐったいじゃないか♪」



 現在、母さんの豊満な胸による

 乳固めを受けています。

 えぇもうね。

 腹は立つわ息は苦しいわ背骨は痛いわの三重苦。

 いくら腕を叩いても、

 乳固めを解いてくれる気配がない。

 元々私が悪いとはいえ、これはひどい拷問だ。



 「ムー……ム……」



 不味い、意識……が……





 「おりょ?」



 なんだ?朱鷺乃が動かなくなったぞ?

 寝ちまったのか?


 「おーい朱鷺乃ー?」


 「……」



 軽く頬を叩いて起こそうとするが、

 朱鷺乃は一向に目を覚まさねェ。

 ……何か変だな?

 そう思い、抱き締めていた手を離すと、

 朱鷺乃は床に倒れた。



 ……



 「と、朱鷺乃ォォォォ!?」



 一体どうしたってんだ!?

 さっきまでは元気だったのに!!

 俺は必死に朱鷺乃の身体を揺するが、

 朱鷺乃が目を覚ましたのは、それから十分後だった。





 「……今日は色々と悪かったな。

 怖かっただろう?うちの連中は……」



 死の淵から生還した私は、吉村を送るために

 二人で道を歩いていた。



 「イエイエ、とても優しい人達デシタヨ♪」



 吉村は笑顔でそう言ってくれるが……

 無理して言っているのが丸分かりだ。



 「本当のところはどうなんだ?」


 「ふぇっ!?アノ、その……」


 「どうなんだ?」


 「……ちょっと怖かったデス……」



 だろうな……

 それが普通の反応だ。



 「で、でも優しかったのは本当デスヨ!?」


 「確かに性格は良いんだかな……」



 あの顔が全てを帳消しにしている。

 特に小田島とか一さんとか一さんとかな。

 その後は他愛の無い雑談をしながら歩き、

 しばらく歩いた所で別れた。

 入学一日目だと言うのに、随分と疲れたな……ハァ……





 一方その頃、デッドラインでは--



 「イデデデデッ!!頭が割れるゥゥゥゥ!?」


 「あんた……仕事ほっぽり出して部屋に籠るなんて、

 随分と偉くなったもんねぇ……」


 「だって俺店長だし……」


 「お黙りっ!店長だからって、仕事ほっぽり出して

 良い理由にはならないのよこのお馬鹿!!

 しっかりと反省なさい!!」


 「ちょッ!?それ以上力籠められたら、

 マジで頭砕けるから!!砕け--」


 結華が一にアイアンクローをされながら、

 説教をされていた。



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