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第十一話 そして彼女は途方に暮れる

(1)


 ある晩、優司宅のダイニングキッチンは甘い香りが漂い、女性達の楽しげな声で華やいでいた。セレナは優司の母とデザートのお菓子を作っていた。食卓では、できあがりはまだ先なのに、マリアが頬杖をついてニコニコしながら二人を眺めている。

 その視線が気になるセレナが口を開いた。

「マリア…そこで待っててもしょうがないと思うけど」

「へへーん、いいの。なんか作ってるの見てるだけで幸せになれるんだもん」

「それなら手伝ったらもっと幸せになれるかもね」

 途端、マリアはすっぱい顔をした。

「それは無理。みんな不幸になるから」

 そのやり取りに、優司の母は思わず大笑いした。


 しかし笑いながら、泣いている。

 セレナは慌てて優司の母に近寄った。

「! どうしたのママ。指でも切った…?」

「ううん、違うの。なんだかとってもありがたくって…」

 優司の母の言っていることが分からず、セレナとマリアは頭からはてなマークを飛ばした。

 優司の母、めぐみは、新しくやってきた娘達に自分のことを「ママ」と呼ぶことを笑顔で厳しく要求していた。優司も幼少の頃はママと呼んでいたのだが、思春期になるとさすがに恥ずかしくなり、おふくろ、と呼ぶようになった。一揉めあり、百歩譲って「母さん」と呼ぶことで落ち着いた。優司の母にとって、ママと呼ばれることは、若さを維持するためにとても重要なことだった。もちろんそれは、単なる気持ちの問題ではあるのだが。彼女は妻であること、母親であることと同時に、女であることのどれにも妥協することはしなかった。そして、そのどれもを楽しんでもいる。彼女の気丈さ、華やかさは、近所の奥さん連中にも良い影響を与えていた。

 マリアはさして抵抗がなかったが、セレナが普通にママと呼ぶようになるのにはかなりの時間を要した。


 ママはエプロンで涙を拭い、フッと大きく息を吐いた。そして、ちょっと恥ずかしそうに二人を見ながら話し出した。

「わたしね…本当は女の子が欲しかったんだけど…優司を生んだ時が大変でね。子供ができない体になっちゃったの」

 意外なことを切り出したママの顔を見て、セレナとマリアは黙ってお互いの顔を覗った。

「あ、でもあの子がいらなかったわけじゃないのよ。望んで産んだ子だったから、とても愛してるわ」

「それは分かります。親バカといってもいいくらい」

 セレナが大きく頷きながら同意した。セレナは、むしろママにいいように振り回されている、ただ優しいことだけが取り柄のようなパパを不憫に思っていた。献立にカレーが多いのも、優司の好みが反映されているからだろう。恐らくこの母親は、ダンナか子供か、と聞かれたら、寸分迷わず子供を取るだろう、と常々思っていた。

「えへ、やっぱりわかっちゃう? …でも、優司はやっぱり男の子でしょう? お台所手伝ってくれたりはしないし、おしゃれしたり、女の子らしいこといろいろ教え合ったりもできないしね…」

 ママは少し寂しそうな顔をして、遠くを眺めるように視線を虚ろにした。数秒感慨に耽った後、二人に優しくほほ笑みかけた。

「こっちに来て」

 ママは手を広げた。セレナとマリアは、吸い寄せられるようにママに近づいた。ママは小さな子を抱くように、二人の顔を自分の胸にぐっと引き寄せた。ママの豊かな膨らみと、柔らかく優しい抱擁は二人に心地よかった。

 ママはまるで小さな子をあやすように、二人の髪を優しく手でいた。

「あなた達が突然来た時は、ちょっとびっくりしたけど…。家が明るくなった気がするわ。わたし二人にはとっても感謝してるの」

 そういうと、ママは頬を二人の頭に当て、また抱きしめた。


 その状態がほんの少し続いた。

 マリアはふとセレナの顔を見て驚いた。感極ったのか、セレマが鼻水を垂らしてだー…と滝のような涙を流していたからだ。

 マリアはプッと吹き出したが、見知らぬ自分達を優しく迎い入れ、今もまたこうして抱きしめてくれることを思うと、心の奥からこみ上げてくる熱いものを押さえることができず、自分も泣き出してしまった。

 そして三人は、それぞれの想いをかみしめながら、お互いを抱く手に力を込めた。


 やがてママは二人を解放した。

「ごめんなさいね。勝手なこと言っちゃって」

 セレナはず・ずーと鼻をすすり上げた。

「ひぐっ、とんでもないです!」

 まだ涙声だった。赤くなった鼻から、鼻水がまた垂れてきた。

 ママはさりげなくティッシュを数枚渡した。

「仕事だからとか全然考えなくていいのよ。できればずっといて欲しいくらい」

「ありがとう…ママ」

 マリアは涙を手で拭った。


 二人の娘がやや落ち着いたところで、ママが切り出した。

「さ、残りもちゃっちゃとやっちゃいましょ。済んだらお夕飯も作らないと」

「はい!」

「うん」

 セレナとマリアが元気に答えた。


 セレナとママは作業を再開した。そのやり取りは、本当の母と娘のようであった。

 一人取り残されたマリアは、

「わたしは…て、定位置に戻るね」

と二人の背中に呟いて、また食卓の椅子に座った。


(2)


 夕飯が終わると、いよいよデザートの登場となった。優司一家とマリアが座る食卓の中央に、セレナが直径二十センチほどの焼き菓子を置いた。表面にはオレンジ色のペースト状のものが載っている。

「わぁー…!」

 その美しさに、一同は歓声を上げた。

「今日は甘夏マーマレードチーズケーキ」

 セレナはテレ隠しからか、相変わらず感情が微妙にこもっていない言葉を発した。だが、その言葉とは裏腹に、そのケーキは情熱的であった。

 一同が見守る中で、ケーキは完璧に七十二度の角度で五等分された。普通の人間ならばなかなかできることではないが、セレナならば造作もないことだった。小皿に取り分けられたケーキは三つの層に分かれていた。きめの細かいタルト生地の上には白いレアチーズケーキがたっぷりと載せられており、その上に手製の甘夏マーマレードが分厚くコーティングされていた。

「いっただきまーす!」

「…んん!?」

 マリアはそれを口にすると、衝撃を受けたように目を見開いた。適度な歯ごたえを保った香ばしくミルキーなタルト、口の中でやさしくとろけるレアチーズケーキ、そして酸味と甘みと苦みが調和した甘夏マーマレードが、彼女の口の中で一体となった。

「おいしい…」

 あまりの感動に、それだけ言うとマリアはもう死んでもいいかのようにほわーんと幸せに満ち足りた顔をした。

「いやーセレナちゃん、これホントにおいしいよ」

 甘党のパパもご機嫌だった。

「あ、ありがとうございます…」

 セレナは頬を赤らめ、不器用に笑みを浮かべた。

「ほんとセレナちゃんはお料理上手よねー。ママいい娘を持って幸せだわぁ!」

 ママはセレナに抱きついた。

「ま、ママ…」

 セレナは嬉しいのか困ったのかわからないような顔をしている。

「娘ってホントの娘じゃねえだろ…」

 優司がツッコミを入れた。

「あら。セレナちゃんとマリアちゃんはホントの娘になったのよ、さっき。ね?」

 ママはセレナとマリアを交互に見た。二人の精霊は驚いた顔でママを見て、次に互いに顔を見合わせた。

「う、うん…」

 セレナは頷いた。もちろんそれはママの方便だとは思ったが、こんなにも暖かく迎え入れてくれるママの好意がありがたく、今は家族の一員でいることにしたのだ。

「わたし何にもしてないけど…いいのかな?」

 マリアはちょっと困ったような顔をしてママに言った。ママは即答した。

「マリアちゃんは食べる係だからいいの。あなたが幸せそうに食べるのを見るだけでママも幸せなんだから」

「…うん! わたしもママの娘!」

 ママと二人の娘達は笑った。

 優司だけはこの団らんから一歩引いた様子で、苦い顔をした。

「なんかよくわからんけど…ま、いっか」


 和やかなムードで会話が進み、皿の上のデザートは空になった。

「おいしかったわぁ。ごちそうさま、セレナちゃん」

 大満足のママは、満面の笑顔でセレナを見た。

「そんな、ママも手伝ってくれたし…」

 セレナはまたしても赤くなった。

 恥じらうセレナを見ていたママは突然、掌を合わせて頬に当てた。

「そうだわ! セレナちゃんも学校に行ったら?」

「え…?」

「行きなさいよ。きっと楽しいわよ」

「……」

 その提案は、セレナにとっては非常に興味のあることだった。学校での出来事をほぼ毎日楽しそうに話すマリアを見て、羨ましいと思ったことも少なくなかった。だが、彼女は新しい環境に飛び込む勇気が持てなかった。

 セレナは少し困った顔をして、優司を見た。

(うわ、わっかりやすい…行きたいけどどうしようって顔じゃん)

 優司は戸惑うセレナが微笑ましかった。

「ああ、いいんじゃん? これも社会勉強ってことでさ! それに、身近なほうがオレのこと何かと警護しやすいだろ?」

「う、うん…」

 セレナは流れに乗って、自然に頷いていた。

「じゃ、決まりね! …そう言えばセレナちゃんってずいぶん若く見えるけど…中学生ってことはないわよね?」

「ち、違います! マリアと同い年です!」

 セレナはぷるぷると首を振り、ムキになって修正した。

「ほお、同い年ねぇ…」

 優司は目を細くしながらニヤニヤした。

「じゃあセレナ、わたしの制服合わせてみよっか」

 マリアはニッコリ過ぎるほどニッコリ笑った。セレナは、その笑みの下の真意を読み取った。

「い、いい…」

「そりゃいいや。よし、やろうぜ」

 セレナの拒否を遮るかのような優司の許可により、それは決定事項となった。

「ほんじゃごっそさーん」

「あうあうぁ…」

 セレナはマリアと優司に引っ張られるようにダイニングを後にした。


..*


 優司はマリアの部屋で、掃き出し窓を開け、網戸越しに暗い外を眺めている。といっても視線の先の暗がりには何が見えるということもない。それにも飽きて、ちらりと後ろを見ようとすると、

「まだダメッ!」

とマリアの制止する声が飛んだ。優司は下唇をぷい、と出した。


「…いいわよ」

 優司が振り向くと、マリアの冬服を着たセレナが立っていた。赤いブレザーは青い髪のセレナにはちょっと不釣り合いだったが、クラスのかわいい女の子、という感じで新鮮だった。

「うん…いいんじゃん…?」

 優司はぼそりと言うと、セレナを上から下へ、下から上と眺めた。

「そ、そんなじろじろ見ないで…」

 セレナは肩をすくめ、身をよじった。そのしぐさがまたなんともかわいかった。

「あー! 優司、なんかえっち!!」

 マリアは優司の腰のあたりに抱きついた。

「…なぜ抱きつく?」

 優司は怪訝な顔をした。マリアはぷぅ、と膨れた。

「セレナばっかり見てるからバランス取ってるの!」

「はあ!? よくわからん…それよっか、やっぱちょっと大きいな」

「え?わたしのおっぱいが?」

 マリアは顔を上げ、嬉しそうに目を輝かせた。

「違うわい! マリアの制服、セレナには大きいってことだよ!」

「しょうがないよ…」マリアはセレナを見た。「セレナのほうがちっちゃいもん」

「それ言うな!」

 セレナは絶妙なタイミングでツッコミを入れた。

「…んーじゃあ、ちょっと丈合わせてみよっか」

 マリアは再びセレナをいじり始めた。


(3)


 カスミは自室の窓を開け、風に当たっていた。暗がりには星がまばらだったが、じっと見ていると、次々に星が見えてきた。毎度のことではあるが、都心から少しはずれたこの街でも、それなりに星が見えることに少し安心した。

 しばらくそうして星を見つけていると、向かいの家から優司達の声が聞こえてきた。四、五メートル先のその音源に目をやると、マリアの部屋の掃き出し窓はカーテンが開いたままで、窓も開けられていた。網戸越しに優司とマリア、それに羽高の制服を着た見慣れない青い髪の女の子が見えた。

(知らない子だわ…)

 時折り優司の笑う声が聞こえてきた。女の子はマリアによって、夏服を着せられたり冬服を着せられたり、ブラウスを変えたりスカートの丈を変えたり崩して着せて色っぽい格好にさせたりと、さながら等身大の人形のようだった。そして女の子の見栄えが変わる度に三人がわいわいと騒いでいるのだった。

(何よあいつ、デレデレしちゃって…)

 端から見れば、むしろ優司はマリアに無理矢理絡まれていやそうな顔をしているのだが、カスミビジョンでは優司が女の子達といちゃいちゃしているように見えた。しかしそう思いつつ、心のどこかでは、

(いいな…わたしもあそこに加わって、一緒に笑ったりしたいな)

と羨む気持ちもあった。しかしそれに気づくと

(何考えてんのよ、あたし。…違うわ。あたしはそんな不謹慎じゃない!)

と猥雑な気持ちを振り払った。そして、その光景をこれ以上見るのが苦痛になった。

「ふん、いちゃいちゃしちゃって!」

 カスミはぴしゃりと窓を閉め、外の世界をカーテンで完全に覆った。しかしそう思ってから、心の中に生まれた黒い塊のようなものが蠢く気がして、嫌な気持ちになった。

 自分だって友達に不自由はしていないし、父親ともうまくやっている。でも、心が自由に飛び回ろうとすると、その周りに張られた見えない壁のようなものに阻まれ、うまく身動きが取れない。そしてその窒息するような窮屈な感覚は、ここ最近、マリアが来てから強くなった気がする。これは何なのだろうか。わからない。自分の心なのに!

 もやもやする気持ちが、カスミを不快にさせていた。


 カスミは考えるのをやめ、まだ宵の口だが早めにベッドにもぐり込んだ。


..*


 翌朝。あんなに早く寝たのに、カスミはよく眠れていなかった。

 カスミは朝練がある日は、制服をスポーツバッグに入れ、ジャージ姿で登校していた。早朝ならあまり人はいないし、家から学校も大した距離ではない。

 家を出る時、隣の優司の家を見た。あいつはまだ呑気に寝ているに違いない。そう思うと、なぜか腹が立った。

 カスミはきびすを返し、ずんずん歩き出した。

 そしてまた腹が立っている自分に気づき、後悔するのだった。

(やだ、あたしったら、また八つ当たり…)


 学校に着くと、まっすぐ校庭の陸上部の集団に向かった。既にジャージ姿なので、部室には行く必要がない。多くの部員らが同じことをしていた。

「おはようございまーす!」

 カスミを見かけた一年生達があいさつをする。まだ五月ということもあり、彼女らは妙に元気だ。

 それがまた、カスミに不快感を与えた。

「おはよー…」


 カスミは、荷物を他の部員達が置いている所に置いた。部活ではいつも一緒の友達、太田清美が声をかけて来た。

「カスミー、おはよっ」

「うん、おはよー」

「カスミぃ、寝不足? クマできてるよ」

「えっ? …うん、ちょっとね」

 カスミはちょっと恥ずかしくなった。

「そっかー。カスミもお年頃だもんねー。悩みがあったら、なんでも親友に話すんだよっ」

 清美は優しくボディタッチをした。そんな友達の言葉に、カスミは少し気が和らいだ。

「うん、ありがと。大丈夫」


 ピピッ。

 笛とキャプテンの声が響く。

「はーい、じゃ柔軟始めるよー」

 一、二年が集まる。すでに三年生もちらほらいる。三年生はこの夏で引退ということもあり、時間を惜しむものが少なくないのだ。キャプテンの石山千尋は、三年生については行動を自主判断に任せていた。男性的な包容力を持つ千尋は、他部員のみならず、顧問にも信頼を寄せられていた。

 カスミは集団からレベッカを探したが、見当たらなかった。どちらにしても、朝練は基礎練習なので器具は使わない。レベッカと話をする理由がない。

 先輩なら、自分の悩みにどう答えてくれるだろうか。


 だが、今はまだプライベートなことを言う気にはなれなかった。


..*


 朝練が終わり、カスミは教室に向かっていた。隣のクラスが何やら騒がしかった。


 そのクラス、2-Cでは、生徒達が優司とマリアを取り巻き、毎度同じタイミングで登下校することを問い詰めている最中だった。優司が平然と「ああ、同じ屋根の下で暮らしてるからな」と言うと、騒然となった。

 女子達はマリアに事実を問い詰める。

「ええ、ちょっと理由があって…。でも、優…和田くんのご両親も一緒にいるし」

「おお、家族公認かっ!」

「いやそーじゃねえっつの」

「まりあちゃん、だめよ! こんなヘンタイと一緒にいるなんて」

「そーだ! 我々はまりあちゃんをこのヘンタイスケベ大王から守らねばならん!」

 生徒達は男女結託している。実の所、これをオカズにふざけているのだが…。

「のりっぺ、止めなくていいの?」

 取り巻きの後方にいた倉田紀子に、友達が尋ねた。

「わ、わたしは別に、和田くんがヘンタイだなんて思わないけど…」

「おおっ、いいんちょが赤い顔してっぞ」

 その声で、周囲の視線が紀子と優司を往復する。

「まさかーっ!?」

「いいんちょまで毒牙にかけたのか!」

「いやそれは違う! あれは事故だ」

 優司は口が滑った。

「なんだ?!もうヤッたのか」

 この騒ぎに、隣のクラスの男子達もギャラリーとしてやって来た。

「新情報ー!! 和田の家にはもう一人、青い髪の美少女がいる模様!」

「なんだって───!?」

 取り巻きは、それぞれがああだこうだと騒ぎ始めた。

「ああ…もういいよお前ら」

 優司は半ばうんざりしていた。だが、このクラスメイト達は、喉元が過ぎれば落ち着くことを知っていた。取り敢えず今はだまってこの場が燃え終わるのを待つことにした。


(なんなのよ、みんなして優司優司って…)

 カスミはD組の教室に入り、机にカバンを置いた。

 少し離れたところで、男子生徒達が浮足立っている。

「おい、隣が祭りになってっぞ」

「和田のオンナ遊びがバレて吊るしあげられてるらしい」

「へへ、見に行こーぜ」

「俺も!」

 男子達は教室を出て行った。


 女子が呆れている。

「なんなのかしらね、あいつら…」

 カスミと仲の良い女子達も心配して声をかけてくる。

「あんたも大変よねー、お向かいさんがあんなんだと」

「カスミは大丈夫? あいつ夜這に来たりとかしない?」

 カスミは胸の辺りがムカムカした。

「べ、別にあたしは関係ないんだってば!」


「はあ…もーなんなのよ…」

 カスミは一人呟き、机につっぷした。まだ朝だと言うのに、何かどっと疲れが出た。

(カンケーないのに…なんでさっきからいらついてるの?あたし)

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