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第5話『一筋縄ではいかなそう』

 ひとまず荷物を取りに家へ帰宅したライズ。ちょっと長くなりそうなので着替えを詰めていると──左頬をぶん殴られ、殴り飛ばされた。

 殴ったのはライズの母親であるワミラだ。ライズと同じピンク髪を揺らしながら腰の入った拳を叩きつけた。


「このバカ息子!」


「母さん!? お、起きてましたか……」


「起きてるに決まってるでしょ。今朝の十一時よ」


「もう歳だから寝てなって。な?」


 ──またもや顔面を撃ち抜くパンチ。なんか最近はよく殴られるな、と案外余裕そうなことを考えてライズは吹っ飛ばされた。


「息子の顔面を躊躇なくぶん殴るなよ!」


「殴るでしょ普通! アンタがヤミさんとこの店の前で四日間も土下座してたって噂が流れてきてんのよ! どこほっつき歩いてんだと思ったら、土下座してるとは思わなかったわ!」


「いいだろどうせ大雨で店開かなかったんだから! つか、それしたって分かってんなら弱ってる息子の顔面を殴んなよ!?」


「結果論でしょ!? あーもうほんっとに馬鹿だよもう!」


 ワミラは頭を抱えている。よく考えなくとも、息子が度を超えた狂人と分かったなら、どんな母親だって頭は抱えると思うが。


「……んで。荷物まとめてどこ行くの。家出?」


「なわけないだろ。ヤミさんから頼まれたんだ。リバーウッドで下着ドロが出てるから捕まえてくれって」


「へぇ、あそこがねぇ……わざわざお店閉めて行くつもり?」


「母さんよろしく」


「よろしくじゃないわよ!? 店ほっといてまでやることそれ!?」


「当たり前だろ! 母さんだって孫が見れるなら本望だろ!?」


「……孫?」


 ワミラはライズの部屋を見渡した。……一面に貼られた少女の絵。艶のある紫の髪に、綺麗な碧の瞳。おそらく全部同一人物だ。


「……はぁぁ」


 ストーカーと言うのだろうか。犯罪者にならなかっただけマシだが、ちょっと頭がおかしいと思う。もう頭を抱えるしかないのだ。


「まぁ母さんが無理なら兄貴にでも頼めばいいじゃん。あの人確かレイサ街にいるだろ」


「あのバカ息子が帰ってきてるとは思わないけど……はぁ、私とお父さんのどっちの血がそうしたんだろうね」


 ただ流石にこの狂人を二十歳まで育てた母親。ため息をつきながらも、ライズのバックに下着を投げ入れた。


「さっさと終わらせて帰ってきなさいよ」


「まかせんしゃい」


「……ヤミさんは何を考えてこの子を選んだのかしら」


 それはとてつもなく切実な疑問であった。



* * *



 ──リバーウッド。名前にもある通り『ブルーハワイ』という美しい川が村の中央に流れており、自然に囲まれたその景色は見ているだけで人の心を癒す景色となっていた。

 街の喧騒から離れたこの土地はライズにとって、かなり新鮮な景色。丁寧に並べられてる木造建築も風情があっていい。


 自然の空気を体内で循環させながら歩き、ライズは目的の家へとたどり着いた。『グレイ』と書かれた看板を通り過ぎ、戸を叩く。中から出てきたのは──見た目年齢二十五歳くらいの若そうな女性だった。


「あーら。貴方がライズね。意外とイケメンさんじゃな……なんで鼻血出てんの?」


「母親とちょいとトラブルがありまして」


「へ、へぇ……まぁ、いいわ。ヤミからは話を聞いてるわ。どうぞ中へ入って」


「失礼します」


 一瞬だが、『ほんとに大丈夫かこの子』という目をされたのをライズは見逃さなかった。まぁとりあえずライズは中へと入る。

 家の中には奇妙な形の棚、それに変な絵画や気味の悪い壺などが置かれてあった。内装も木材に紫とオレンジ色を交互に塗ったような変な柄だし。外の風情ある建築が全部台無しになってる。なんというか……見てて不安になってきた。


「じゃあ早速だけど事情を説明するわね。いい?」


「は、はい」


 先にこの部屋をどういう気持ちで作ったのかを説明してほしかったが、長くなりそうだし分からなそうだからやめた。


「リバーウッドではシルクが有名で、特にそのシルクで作った下着類が名産品なの。ここの人たちもシルクの下着を履いててねぇ。私も履いてるのよ。見る?」


「結構です。僕にはもっと見たい相手がいるので」


「ははは! 面白いわね貴方。見たくなったらいつでも見てもいいのよ?」


 妖艶な雰囲気で誘ってくるがライズは反応しない。心に強い決意があれば色慾など跳ね返すことは容易なのだ。

 ……事前にヤミから『見た目若くてもあの人エルフ基準でもオバサンだから』と聞かされてたのもある。自分の母親がこんなことをしてると思うと誰だって萎えるだろう。


「とまぁ脱線は置いておいて。それがここ最近の話、村のあちこちで下着が盗まれるようになったのよ。最初はアンダーさんの家から。次はカミラさん、その次はストゥさん。カミラさんの家は特に夫と息子二人と暮らしてたけど、カミラさんの下着のみが盗まれてた」


「つまりあれですか。女性物の下着のみを盗んですと?」


「そう。男しか住んでない家には侵入の形跡もないの」


「露骨ですねぇ……」


 男として恥ずかしくなってきた。特にエルフは老齢が多いと言うのに。意外と熟女好きなのか。それとも見た目若いから妥協してるのか。


「ちなみに僕以外に外部からの人間って来ました?」


「片手で数えられるくらいしか来てないわよ。この村のシルクは外に輸出してるからね。村には宿くらいでお店とかもないし。面白いものもないから人は来ないのよ」


「片手で数えられるくらいの人は長居しました?」


「いや? 一日、長くても二日目には帰ってたわね。単なる旅の人っぽかったし」


「なるほど。となると内部の人間が怪しい……ですよね」


「その可能性ももちろん考えたわ。でも答えはノーよ」


「え? なんで?」


「『ギブアンドテイク(感覚共有)』の魔法を村の人全員がかけたのよ。誰がどの行動をしてるのかを村人全員が監視してみた。けど下着ドロは発生した。誰かが盗んでる様子もなかったし、外部の人間に合図してる感じもなかった」


「そうですか……」


「そもそも私たちは貴方たちとは違って千年以上は一緒に暮らしてるからね。時間の流れる感覚が違うとはいえさ、ほとんど家族みたいなやつのパンツなんか誰も盗まないわよ。貴方だって母親のパンツは盗まないでしょ?」


「……言われると納得です、ね」


 考えただけで寒気がしてきた。確かにこれでは内部の人間が盗む可能性も低いと言えるだろう。

 それじゃあ外部の人間の仕業……だがそうなるとどうやって?という疑問が浮かび上がってくる。


「盗まれた時間帯とかは分かります?」


「そこよ。何よりも疑問な部分がそこなの。──それが夕方なのよ。感知魔法で見張ってたんだけど、夕方に突然消えたのよ」


「……消えた?」


「うん。これに関しては私もよく分かんないの。高速移動とか、瞬間移動とかではないのは確かなんだけど……」


「『アポート(等価交換)』の魔法では?」


「それは同じくらいの価値のものを交換する魔法よ。下着だって価値がある。下着のみを移動させるなんて無理だわ」


「じゃあ事前にマーキングしてたとか。それが領域を作ってたとか」


「ここがエルフの村ってことを分かってる? 魔法に関しては一級品よ私たち。マーキングしてたら逆探知だって簡単にできるし、仮に領域なんてしようもんなら中からぶっ壊せるわ」


「ですよねぇ……ダメだ。全然分かんないや」


 単なる下着泥棒と侮ってかかってみれば意外や意外。これはかなりの難題だ。

 内部の人間は関与しておらず。外からのマーキングや領域もなし。それなのに下着は突如として消えた。どうやったらこんな芸当ができるのだ。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

面白いと思ったら是非星5評価をお願いします。あとついでに感想とか、なんか感情出してるマークのやつとかやってくれると嬉しいです!


今後とも是非お贔屓にお願いします。ありがとうございました

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