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第19話『アッセンブル』

 四人は会議室へと通された。ブラインドの召集命令を聞いた権力者たちはすぐに城へと集まり、ライズたちが城へ連れて来られて僅か一時間。ポラリス生誕祭に関わるトップたちが集まった。


 流星商店連盟の会長ラートム。貴族連合のリーダーであるキャノン。王国騎士団二十七代目団長ルドロフ。他にも名前を聞くだけで震え上がるほどの著名人が会議の椅子に座っていた。

 場違い。こうなるならおめかしするべきだったと四人は思ったが、着替える時間もなく早速会議は始められた。


「四日後。この街で行われるポラリスの生誕祭にアンダーウェアとその配下と思われる十二神将が、王家の秘宝『ザ・ワン(この世は我の所有物)』『|ヴァーチャル・インサニティ《万物の番人》』そして我が娘の下着を盗もうとしているとの情報があった。報告したライズ殿の情報によると、アンダーウェアは『時間停止』なる神にも等しい魔術を扱い、その配下も高等魔法を使うと推察されている」


「……下着?」


「下着? 下着を盗もうとしてるのか?」


「秘宝は分かるが下着? なぜ?」


 ……ごもっともな質問が飛び交うが、説明が長くなりそうなので、ブラインドは無理やり話を続ける。


「続けるぞ。これが普通の相手なら我々のみで対応ができるが、今回はそうもいかない。エルフですらなし得ない事象を引き起こす危険人物。……恥ずかしいことだが、王家だけでは対応ができない。どうか我々に力を貸してくれ」


 なんと──国王が頭を下げた。とんでもない状況に四人は焦るも、会議に来た著名人たちは笑っている。


「頭を下げる必要はありません国王。我々は貴方の道具。貴方がすべきなのは『お願いします』ではなく『やれ』と命令することです」


「むしろそのような不敬な輩を事前に捕まえることができなかった王国騎士団の失態。謝罪するのはこの私の方です」


 彼らの言葉にブラインドは微笑みを取り戻す。


「ありがとう……。ではまず、アンダーウェアと相対したライズ殿とテルドリン殿から話をしてもらおう。話してくれるか?」


「は、はい!」


 ライズとテルドリンは立ち上がる。多くの著名人の視線に緊張で膀胱が震えるが、気合を入れて口を開いた。


「国王様が述べてくれた通り、アンダーウェアの能力は『時間停止』です。自分を除いた全ての時間を停止し、その中を自由に動けるというもの。単純に相手をしようとすれば、まず勝てない相手でしょう」


「警備を固める……という手もあまり意味をなさないな」


「ただこれには弱点があると拙者たちは考察しています。時間を止めるというのは魔術の領域。魔術使いは基礎魔法の三つしか魔法は使用することができない。つまり魔法での遠距離技がないと思われます」


「武器による遠隔攻撃は可能だろう。ただそれを加味しても弱点は大きいな」


「そう。このことから予想するに、アンダーウェアは直接戦闘をせずに下着と秘宝を盗み出すと考えます。戦闘をするのは十二神将。単純な作戦と仮定すると、十二神将に陽動を任せて自分は秘宝を盗みに行くとか」


「ですが下着をメインに盗もうとしてる変態とはいえ、相手は王家に伝わる秘宝をも盗み出そうとしている奴。単純な作戦をしてくるとは思えない。何かしらの行動を起こしてくるはずです」


「……それなら、君はどうするライズ殿?」


 ブラインドの問いにライズはニヤリとしながら答えた。


「アンダーウェアの能力は『時間停止』です。罠系の魔法などは意味をなさないでしょう。ならば──持続的な罠を仕掛けるんです」


「持続的な罠と?」


「拙者がリバーウッドで捕まえた下着泥棒は時間停止を擬似的に再現した魔法を使っていました。『周囲の生物の動きを止め、魔法を無視する』というもの。しかしこの下着泥棒は落とし穴を使って仕留めました」


「アンダーウェアの魔法は確かに強力です。だが制限ももちろんある。停止できる時間は長くない。そしてクールタイムも必ずある。リバーウッドのように落とし穴や魔法の罠などは瞬間的なものですから、時間停止とは相性が悪い」


「──なるほど。例えば炎の壁、氷の床など、常に効果を発揮している罠や魔法を展開させておく、ということですな」


 貴族連合リーダーのキャノンの言葉にライズはうなずいた。


「仮にそこを突破されても次の持続する罠がある。時間を停止しようと逃げられない」


「しかし常に展開し続けるのは魔力的にも厳しいのでは? そんな魔力量を持つ者など──」


「──そこで拙者の出番です」


「エルフ……そうか、エルフは他の種族と比べて魔力量は多い!」


「拙者はエルフの村でも随一の実力。魔力量もそれ相応に多い。持続する罠も複数発動が可能、そしてそれを持続させることも可能です」


 流星商店連盟の会長ラートムは唸った。


「だがいくらエルフといえども、この城全体をカバー出来る魔法を同時に複数展開し、持続させ続けるのは厳しいのでは?」


「いや、むしろそれはこちらに有利に働きます。城全体をカバーする罠を貼ると、アンダーウェアは潜入という方法以外を取る可能性がある。国民全体を人質にする、城そのものを攻撃する……異常者の考えることは分かりません。下手すれば民間人に被害が及ぶ」


「それだけはならん……! 下着を盗むなんてくだらない理由で国民に被害を与えるなど国王として失格だ!」


「だからあえて隙を作るんです。適度に休憩スペースのようなものをつけ、適度に少ない兵士を配置する。相手が疑問に思わないくらいに手加減する。そして油断したアンダーウェアを罠で攻撃。あとは一気に叩く」


 ライズの拍手。部屋は一気に沈まりかえった。


「十二神将に関しては不明な点も多いです。どんな人間か、どんな魔法を持っているのか。対策を考えるだけ無駄。ならば最も驚異であるアンダーウェアのみを倒すことに注力するべきです」


「……確かにな。だが十二神将を取り逃がすのも後に面倒となる。そこは我ら王国騎士団が警備を強めよう。最優先をアンダーウェア、次点で十二神将とする」


「ありがとうございます。……ぶっちゃけ、アンダーウェアが秘宝を盗んでもあまりデカい被害はないと思いますが、だからといって見逃すのは人として名折れです。それにアンダーウェアが誰かに渡す可能性もありますしね」


「不敬な言葉……と言いたいが、私も話聞く分にはそう思ってしまう……国王として失格だろうか」


「今回が例外なだけで国王様は立派だと思います。前例が流石にないですからね。国家に仇をなす変態とか……」


 ──色々あったが作戦は決まった。話を終えた二人は座り、今度はブラインドが立ち上がる。


「作戦はライズ殿とテルドリン殿が言った通り。城の中の兵士を少し減らし、その分を生誕祭の対応に当たらせる。テルドリン殿がその隙に城の中に罠を貼り、アンダーウェアが罠にかかるのを待つ。ラートム殿は引き続き生誕祭を盛り上げてもらいたい。キャノン殿は貴族に全面的に出てもらい、騎士への対応を迫って、アンダーウェアに『兵士が少ない』と思わせてくれ。ルドロフ殿は兵士に情報を伝え、最大限の対応を頼む!」


 的確な国王の指示に部屋の全員が呼応。国家を統べるこの世で最も偉い王の名は伊達ではない。ただ指示を出してるだけにもかかわらず、四人はそのカリスマに圧倒された。


「テルドリン殿は作戦通りに。ライズ殿、スカイ殿、リアス殿は生誕祭に参加しつつ、国民の中にアンダーウェアや十二神将が紛れ込んでないかを調べてくれ」


「分かりました」


「す、凄い……国王様に命令されちゃったよリアス!」


「落ち着け。……無理無理、やっぱり落ち着けない……!」


 意見はまとまった。やることも固まった。作戦も知らされた。あとは──アンダーウェアを捕まえるのみ。

 王都の存亡をかけた戦いが幕を開けようとしていた──。

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