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第18話『最強の味方降臨!』

 しかし二人の笑顔は──すぐに消えることとなる。

 数分後。宿屋『ヒヤシンス』になんと衛兵たちが突入。すぐに四人は拘束され、ポラリスも確保された。


 そして四人は──なんと現国王ブラインド・マクトンの眼前に差し出されたのである。城の中へと連れていかれ、豪華な装飾で彩られた廊下を歩き、一般人は絶対に入れないであろう玉座の前に座らせられる。


 玉座には──ブラインドが座っていた。ポラリスと同じ赤い髪。年季の入った手で手にした杖の宝玉を撫でる度にライズたちの肩が震える。

 近くには槍を持った近衛兵。国王の指先一つで自分たちの命を奪える。両腕を後ろで拘束された四人は体液を全部出し切るのではと思えるほどに冷や汗を流していた。


「ポラリス。言い訳を聞こう」


「ないです」


「そうか。正直でいい子だ」


 何のために聞いたんだよ、というツッコミは喉の奥に飲み込む。


「この人たちは?」


「私を助けてくれた恩人です。そしてお父様も助けてくれる恩人となるでしょう」


「私のことを? ほほう、面白い。何をしてくれるんだ?」


 ポラリスはライズから聞いた情報を包み隠さず伝えた。エルフの村で下着泥棒を捕まえたこと。そこに現れたアンダーウェアと名乗る男が王女の下着、あとついでに秘宝も狙っているということ。ライズとテルドリンはそれを阻止しに来たということ。

 とにかく状況を話しきったポラリス。ブラインドはしばらく目をつむり、そして──。


「──コイツらは頭がおかしいのか?」


 ──ポラリスと全く同じ反応を示した。


「あの……国王様。そう言いたくなる気持ちは分かりますが、本当のことなんです」


「信じろと? ポラリスの下着を盗もうとしてる不届き者がいるのはまぁいい。だがマクトン家に伝わる伝説の秘宝が『ついで』だと? ポラリスの下着のついでだと?」


「私も同じ反応をしましたわ。ですがこの人の意見は信頼できます」


「なぜだ。この馬鹿げたことをなぜ信頼できる?」


「──目です。この人の目には確固たる芯が映っていました。王女たる私にすら一切臆することなく宣言したのです。あの目に嘘などありません」


 王女は完全にこちらを信頼してくれているようだ。だからこそ今は殺されないで済んでいるのかもだが。


「さぁライズさん! ぜひお父様にもあの言葉を伝えてください! 私に言った時のような、あの愛の叫びを!」


 ……前言撤回。やばい。ポラリスが完全に殺しに来た。

 言えというのか。イグサとエッチしたいというあの宣言を国王に言えと。ポラリス相手に『エッチ』なんていう不浄な言葉を言ったことを宣言しろと。


「愛の叫びか……面白い。聞いてやろう。ライズとやら、ぜひ言ってみるといい」


「……あの、その……なんと言いますか」


 ダメだ無理だ。言えるわけがない。あんな不純の塊みたいな動機を言えと。エッチの言葉が出てきた瞬間に首を門前に並べられてしまうぞ。


「助けてテルドリン……!」


「無茶言うなでござる! もう諦めて宣言するでござる!」


「なんで俺たちまで捕まったんだよぉ……」


「まだ死にたくないぃ……わぁん……!」


 やばい。国王はこちらを精査するように見ている。……言えというのか。言わなきゃならないのか。言わなくて解決できる方法はないのか。


「……どうした。言わないのか? それとも言えないのか? 言えないようなことを言ったのか? 第二王女、この私の娘にか?」


「あ……ぐ……」


 ──もういい。言わなければ怪しまれる。言っても首を斬られる。どうせ死ぬなら華々しい最後を迎えてやる。


「──俺には、好きな人がいます!」


 大気を震わせる声。こいつ本気で言う気か、と隣で座っていた三人が口を開けてライズを見る。


「相手はイグサさんという素敵な人……僕はその人に認めてもらうため。そして──エッチをするため! そのためにアンダーウェアを追っています!」


 国王は──反応なし。まだ睨むようにライズを眺めている。


「僕はイグサさんと最高のエッチがしたい! 好きな人と最高のエッチがしたい! このまま無視すれば後腐れが残って、イグサさんと気持ちよくエッチができない! だから僕はアンダーウェアを捕まえたいんです!」



 思い出すのはイグサの顔。最後に見たのがあの笑顔なのはせめてもの幸運。本当ならエッチの一つでもしてから死にたかったが、これが運命。

 ライズは目を瞑って覚悟する。首筋に引っかかる剣の感覚。イグサは自分が死んだら泣いてくれるだろうか。たった一粒でも流してくれたら満足だ──。


 剣はライズの──拘束されていた縄を切り裂いた。解放された感覚に思わず前のめりに倒れてしまう。


「──ハッハッハ! この私の前で堂々と宣言するか! 気に入った!」


 疲労。髪が白くなったのかと、皮膚が五十歳くらい年老いたと思うほどのストレスから解放され、思わずライズは脱力した。

 続いて三人も解放。肩で息をしながら自身の生を実感する。


「娘があそこまで言うだけはあるな。その真っ直ぐさ。惚れたよ。そんな馬鹿な宣言をまさか俺の前で言うとはな」


「あ、は、はは。良かった、です……」


「兵士をかき集めろ。アンダーウェアとやらが来るのはポラリスの生誕祭なのだろう。ならその前に対策をする」


「了解しました」


 王女だけでなく国王もこちらを信じてくれたようだ。安心──いや、それ以上の収穫なのではないのか。

 自分たちの意見を聞いて。国王が自ら動いてくれる。自分たちの有利なんてものじゃないのでは。下手すれば自分たちが動く必要すらないのでは。


「……ここまでが俺たちに有利に働きすぎて怖いな」


「? 私にはよく分かんないけど……国王様自らが動くなんて滅多にないことだよ? そのアンダーウェアだかなんだか知らないけど、もう終わりなんじゃない?」


「拙者はライズ殿と同じ意見でござる。ここで慢心するのは良くない」


「心配性だな。アンダーウェアってのはそんなにヤバい相手か?」


「やってる事のチャチさと反比例してるくらいには凶悪な相手だよ。エルフでも真似できない『時間停止』を使うような奴だ。そして部下もまだ一人しか見てないが、そいつですら時間停止を擬似的に再現できるレベルの魔法の持ち主。恐らく十二神将の他の奴らも同じくらいの強さ……下手すればもっと強いかもしれない」


 ……下着を盗もうとしてる奴のことである。実際には見ていないスカイとリアスは怪訝な目をしているが、その恐ろしさを直で見ていたライズとテルドリンは未だ心配を拭うことはできなかった。


「……国王様。僕たちも手伝わせてください」


「? なぜだ。私は貴様らの意見は信頼している。アンダーウェアや十二神将の対策は徹底的にするつもりだ。それこそネズミ一匹侵入できないほどにな」


「アンダーウェアはネズミどころか、アリの子一匹でも侵入が許される警備なら侵入してくる可能性がある。僕たちは一度アンダーウェアと遭遇してます。必ず役に立つことができる」


「……私の警備が信用ならないと?」


「そうじゃありません。相手がそれほどまでに規格外な奴なんです。──お願いします」


 ライズは頭を下げた。


「……貴様にはメリットなどないのに頭を下げるのか。余程アンダーウェアが気に食わないか、それとも貴様の言うイグサとやらへの愛か。──いいだろう。そこまで言うなら手伝ってもらう。ただし馬車馬のように働いてもらうぞ」


「ありがとうございます」


 ライズとテルドリンはハイタッチ。国王の懐に入ることができた。


「スカイとリアスはどうする? このまま着いてくるのもよし。帰っても俺たちは文句は言わないけど」


「スカイはどうすんだ?」


「うーん……お城に入れて、しかもなんか大きな野望を持ってそうな人と戦えるんでしょ? そんな英雄譚みたいな話に参加できるなんて楽しそう!」


「だそうだ。スカイが乗り気なら俺もやる。もう少しお前らの傍にいさせてくれ」


「頼りにしてるぞ?」


「まっかせなさい!」


 スカイはドヤ顔を浮かべながら胸を叩くのであった。

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