思縁の家で夕食
そうこうしている間に、思縁の家に着いた。
がちゃり、とドアを開けた思縁に連れられて中に入ると、思縁の母親らしき人が出迎えてくれた。
「ただいま、お母さん」
「ええ、おかえりなさい、思縁。その子が夏之夢くん? 」
「うん」
「そう、ゆっくりしていってね」
と、思縁の母は笑顔でそう言った。
「ありがとうございます」
「さ、なかに入って」
思縁は俺の手をひっぱって、奥の方へと誘導すると、広い部屋に着いた。
そこにはテレビやソファ、また大きなテーブルがあり、テーブルの上にはたくさんの料理が置いてあった。
「今日は思縁が、彼氏を連れてくると聞いたから、奮発して作ったんだ」
と、思縁の母はにこにこしてそう言った。
「そうなの。夏之夢っていつも栄養あるもの、しっかり食べてないように見えたから、良かったら今日は家で食べていかない? 」
思縁の誘いを、断る理由もないため。むしろ喜んで、食べることとした。
「ああ、ありがとう。そうするよ」
「じゃ、手洗い、うがいをしてから、またここに来ましょうか」
「ああ」
「あ、あとそれと」
といって、思縁はまた祈りを捧げていた。
……。
「ごちそうさまでした」
「どうだった、私のお母さんの料理」
「美味しかったよ」
「そうなんだ~。じゃあ、この前の私の料理と、お母さんの料理、どっちが美味しかった? 」
そうくるか。俺は悩んでいると、思縁はさっきのお返しと言わんばかりに得意げな顔をしていた。そんな俺たちの様子を見て、思縁の母も笑っていた。
「うーん、思縁」
そういうと、思縁は驚いたような、嬉しいようななんとも言えないような顔になり、目を伏せながら、
「そう、ありがとう」
と言った。
「二人とも、すっかり仲良しね」
と、思縁の母は嬉しそうに言う。
「思縁さんには、いつも学校で世話になっています」
「まあね、ふふん」
「そう、ならよかったわ。今日のご飯、いつもは精進料理ばかりで、お客様用のご飯を作るのは久しぶりだったから、思縁に負けたのかもしれないわね」
「そうだったんですか」
「あとは、若い男の人の好みの味付けが分からなかったのも敗因ね。うちの主人は何年も前に、修行中の事故で亡くなってしまって、薄い味付けだったかもしれないわ」
「そんなことないです、思縁のお母さんの料理も、美味しかったです」
「ならよかったわ。思縁から聞いたんだけれど、夏之夢君、あなたは事情があって一人暮らししているのよね」
「はい」
と、そこに思縁が入ってきて、
「夏之夢、お母さんに、一人暮らししてるって言っちゃった。嫌だったらごめんね」
と言ってきた。
「いや、全然いいよ。」
「ならよかった」
「それでね、夏之夢君、私も思縁、この子と話したんだけれど、ここがあなたの、お家みたいな居場所になったらなって思うの。」
「居場所ですか」
「ええ。いつでも寂しくなったら、この家にいらっしゃい」
そう聞いて、俺は、思縁とそのお母さん。この親子は似ているなと思ったし、ありがたいと思った。
「ありがとうございます。お母さん」
「うん、それでいいわ」
「ねえ夏之夢」
ふいに、思縁が俺に話しかける。
「ん、なに? 」
「今、楽しい? 」
「ああ。思縁と付き合ってからは、色々なことが新鮮で、楽しいよ」
「それはよかった」
と、俺も笑っていると、
「ところで夏之夢君、進級のための出席日数、大丈夫? 」
ぎくり。
「ちょっと、んー、いややばいかもしれないです」
「夏之夢が学校に居場所ができたのなら、やっぱり学校に行ってほしいな」
「う、うん。頑張ってみるよ」
「その意気だよ、夏之夢君」
「そうね」
といって思縁のお母さんと、思縁は笑っていた。どうやら二人とも、面倒見がいいというか、教育関係には人並みには熱心らしい。




