球技大会1
4時間目になった。
ホームルームの時間で、様々なことについて話し合った。次第に、議題は球技大会の話になった。来月行われる球技大会のメンバー決めが始まった。思縁はもう一人のクラス委員の男子とともに黒板の前に立ちクラスメイト達の意見をまとめている。
「チームはあらかた決まったみたいね。じゃあ、次はチームリーダーだけど」
思縁はそういうと俺のほうを見て、
「バスケットボールのチームリーダーは明田君にしようと思うけど、どうかな?」
突然のチームリーダーの抜擢に俺は思わず立ち上がる。
「待ってくれ、なぜ俺がリーダーなんだ。他に適役はいるはずだろう」
いくらなんでも昨日今日学校に来はじめた新参者に、チームメイトをまとめるのは無理ではないだろうか。
「いいえ、適役はあなたしか居ないわ、他の子から聞いたんだけれど、明田君。明田君は中学の頃はバスケットボール部で、県大会優勝までいってるらしいわね。このクラスの中でバスケットボールの経験者はあなただけなの。クラスとしてはどうしてもいい成績を残したくて、経験者であるあなたに作戦や練習を見てもらいたいのよ。頼めないかしら」
思縁は俺を見つめていた。
「そんなこと言ったって……」
「僕からもお願いします。明田君」
考え込む俺に声をかけたのは、思縁と同じくクラス委員を務めている男子だった。
「君は確か」
「石田歩です。どうしてもバスケットボールで結果を残したくて、それには経験者の知恵や指導が必要なんです。どうか頼めないでしょうか」
石田歩は真剣な面持ちでこちらを見つめている。
「理由を聞かせてくれないか。なぜバスケットボールで成果を出したいのか」
「それは、実は穂乃果さんというクラスメイトがいて、心臓が弱く近日中に手術があって、どうにか勇気づけられないかなと思っていて……」
石田歩はあまり人前で発表することに慣れていないのか、不安定な声色からかなり緊張しているのが伝わってきた。しかし、その穂乃果というクラスメイトへの思いは、弱弱しい声の中にも確固たる信念を感じるほど、石田歩の目は、また他のクラスメイト達の目も真剣なものだった。
ふと、昨日の思縁との会話を思い出す。「明田に学校に居場所を作ってほしいの」。その時の思縁の目は本気で、今も変わらなかった。
居場所を作る、か。思縁が俺の居場所を作れるように頑張っているように、クラスメイト達も穂乃果の居場所になろうと努力する、ということだな。その二つの事柄は同じ思いからの行動で、つまるところこのクラスの人たちは友達思いの生徒が多いのかなと感じた。
であれば、俺の答えは決まったのも同然だった。
「分かった。みんなが良ければ、俺がチームリーダーを引き受けるよ」
思縁や歩の気持ちに応えようと思った。
「決まりね。みんなも良かったら拍手してもらえるかしら」
クラスの大方は拍手する音が聞こえた。
……。
「精が出るわね」
「ああ、まあな」
週末に体育館に集まってクラスで練習していると、思縁が話しかけてきた。
「どう、うちのクラス勝てそう?」
「相手次第だが、なんとも言えないな。このクラスは文化系のやつが多くて、まずは体力をつけるところからだな。でも、みんなのやる気はすごいから大会までに間に合うとは思うが。」
「それは良かったわ」
「ふと思ったんだが、このクラスって仲がいいんだな」
「まあね。私たちはM高校の特進コースで、三年間クラスが変わらないから。団結力は他のクラスにも負けないと思ってる」
「そうか」
「あとは明田がみんなと仲良くなってくれれば、本当に嬉しいんだけどね」
「そうだな。優しいやつが多いし、良いクラスだと思う。できれば俺も勝たせてやりたい」
「いいこと言うじゃん。この前まで不良かとみんな怖がってたけど、明田はいい人なんだって私知っているんだからね。胸を張りなさい」
「なんだそりゃ」
「日直の時も、今も、私の我儘に応えてくれているんだから、明田は絶対根はいい人だよ。だから、きっと学校も明田にとって良い場所になれると思う」
「そうか。その想いは良く伝わったよ。思縁も良いクラス委員だと思う」
「そうかな、えへへ」
「さて、じゃあ勝つために練習と行くか」
……。




