円と思縁について 不正解へ
夜になった。
20時。若林家。
それとなく家族はリビングにてテレビを見ていると、
「そろそろさ、はじめようか」
と、円が言ったことを合図に、みな、テーブルに集まった。
「単刀直入に言うね」
円は口を開き、
「私は、お父さん、いや、若林夏之夢が、男性として好きなの」
と言った。
碧さんや、思縁は沈黙して、聞いている。
「でね、お母さんに、お父さんを取られるのが、凄く複雑で、ストレスだったんだ。でも、お母さんにも幸せになってほしいし、私、どうすればいいか、もう、分からないよ」
と言った。
円は、感情があふれたのか、声が震えていた。
「俺は、以前、思縁がまだ眠っているときに、円に告白されたことがある。その時は、俺が俺を好きでいてくれる人の前では、かっこよくありたいと思って、父として、家族として、断った。それが、正しい選択だと思ったから。けれど、また、思縁が目覚めたことで、円の中に、また葛藤が生まれてしまったようだ」
俺も、話した。
「うん」
思縁は、円を撫でながら、うなずいた。
こちらを、真剣な面持ちでみると、
「夏之夢はさ、本当は、今は、どうしたいの」
思縁は、口を開き、尋ねた。
「俺は、家族として、円を愛したい」
「それは、円の幸せよりも、自分の幸せを優先したいってこと?あなたは家族のためっていうけれどさ、実際は、円は、こんなにも苦しそうだわ」
「そんなこと、言われても」
「もう一度、聞くわ。夏之夢。真剣に応えて。」
「ああ」
「夏之夢は、何が一番欲しいの? どうして、欲しいの」
「俺は……」
俺は、
「家族の、幸せが、欲しい。みんなに、笑顔でいて、もらいたいんだ。
でも、円の幸せをかなえてしまうと、思縁が、傷つくと思ったし、せっかくみんなが揃った家族が崩壊してしまうんじゃないかって、怖いんだ」
「そう、よくわかったわ。夏之夢は、ほんとうに、優しくて、不器用なのね」
「ただの、馬鹿野郎だよ」
「夏之夢、じゃあさ、私が、円と結ばれてもいいよって言ったら、円と結ばれてもいいと、夏之夢は思う? 円のことを、異性としてみることは、できる? 」
「俺は、もし、思縁がいいと言うならば、本当は……」
「本当は? 」
「円と結ばれてもいい。円の心が晴れるならば、いいと思う。それに、俺は、ずっと、ずっと、思縁と俺の、思縁の血を分けた、子も、欲しいと思ってた。自分には、今が、これが幸せだと思っていたけど、やっぱり、円は思縁に似ている部分もある。似ていない部分もある。一人の女性として、魅力的に思うよ」
「そう。それが、あなたの本心なのね」
「ああ」
「私はね、二人が結ばれるのは、いいと思うわ。世間的にはさ、あまりよくないんだろうけれど。今まではあなたの彼女でもあったんだけれどね。今は、この子、円の母親としても未熟な私だけど、円には、本当の意味で幸せになってもらうことが、私にとっても、幸せだから」
「分かった」
「お父さん、お母さん、私、いいの」
「いいよ、円」
「お父さん、私のこと、好き? 」
円は、黒髪を触りながら、言った。
「俺は、円が、好きだ。思縁も好きだ。思縁の子である、16年も共に過ごした、円を嫌いなはずが、ないだろう」
「ありがとう」
といって、円は、泣き出していた。
「円、ずっと、苦しい思いをさせて、ごめんな」
「いいんだよ、お父さん、いや、夏之夢。私はずっと、待っていたから。お母さんも、ありがとう」
「うん。夏之夢のこと、よろしくね」
「みんながそれでいいなら、私も、いいと思うわ」
緑さんもいいと言ってくれた。
これからは、円の彼氏という立場になるのだろうか。
立場はかわっても、急に心持を変えるのは難しいかもしれないが、精一杯、目の目のことを、なしていきたいと感じる。




