新たな日常
翌日。
「昨日、五年後に円に本当のことを話すことになったんだ」
職場である、病院の食堂で俺は口を開いた。
「円ちゃん、今は10歳になったんだよね」
「ああ。10歳には思えないくらい、大人びた子だけれど、時折子供らしさを見せてくれるところが、小悪魔的というか、父親としては嬉しいが。その分、見方を変えればまだ子どもであって、本当のことを知るには早い気もしている。心配なんだ」
「大変そうだね、夏之夢君」
俺の目の前の席で話しているのは石田歩。大学を卒業し、外科医として父親の跡を追うため、父親と、そして俺と同じ病院に勤務していた。お昼は時間が会えばもっぱら一緒に食べている。
「これから、大変なことになってくるな。今までは俺が仕事とか、頑張れば済む話だったけれど、これからはそれに加えて年頃の娘に嘘をついてたことを白状せねばならん。穏やかにことが運んでくれるといいが、他人がかかわってくる以上はどう転ぶか分からない。最悪、家族がバラバラみなってしまうかもしれないし」
「そうだね。恐れるのも無理はないよ。それだけ、夏之夢君にとって今の家族が、大切なんだよね」
「ああ」
「ならさ、ちゃんと誠意をもって説明すれば、きっと後悔は減らせると思うよ。今は目の前のことに全力でことに当たるのが、いいかなって思うな」
「全力で、か。たしかに、先のことは分からない。恐れるよりも、やり切った方が後悔はすくないか」
「うん」
「そうだな、ありがとう、少し、これから頭冷やしつつ、円とも向き合ってみるわ」
「そのいきだよ」
歩は笑った。
「週末にさ、円のコンクールに行くんだが、歩も来ないか」
「僕も行くのかい」
「まあ久しぶりに、いつものメンバーで集まりたいかなと思って」
「いいね、穂乃果ちゃんにも声かけてみるよ」
「ああ、よろしく頼む」
「うん楽しみにしているよ」
「こっちこそ」
「それじゃ、仕事に戻るね。午後も頑張ろうか、夏之夢君」
「ああ、お互いにな、歩」




