祭り3 二人の舞
「うわあ、綺麗」
「ああ、そうだな」
二人の神楽が始まった。
笛の音とともに、静かに、ゆっくりと舞っていた。時折持っている鈴の音を鳴らす姿は、神様に舞を奉納しているようであった。いや、実際にそうなのだが。
会場には、始まる前までは元気にしていた子供らも、舞を見守る大人たちの雰囲気を読み、特別なものを見るようにじっとしていた。
基本的に流し目で舞っていた二人だが、こちらに気が付くと、にっと笑っていた。
「今、僕たちに向けて笑ってくれたね」
「ああ、ちょっと、ドキドキした」
「僕も」
二人の笑顔の先に俺たちがいたことは近くのおじさんたちにも伝わったのか、あの子、お前さんたちの友達なのかい。いいねえ、青春ってやつで。
などとおじさんたちは口にしながら背中をバンバン叩いてきた。
……。
「ふぅー緊張した。私たちの舞、どうだった? 」
神楽が終わって10数分後に、思縁と穂乃果は戻ってきた。
「よ、よかったよ」
「そう、ならよかった」
思縁と穂乃果は笑っていた。
「うん、でも、なんだかドキドキするよ。さっきまで巫女服を着て、会場のみんなの視線くぎ付けにしてた二人が、こうして話しかけてくれるんだもん」
歩は照れながら、率直な感想を言ったと思う。
「そうだな。さっきの舞は、やっぱり、日常、の中の非日常なんだろうな。俺も、軽く鳥肌が立ったよ」
「そうなんですか。でも、安心してください。今の私たちは、いつもどおりの、二人の友達ですよ」
「う、うんそうだね。穂乃果ちゃん。今日のお祭り、とても楽しかったよ」
「俺も」
「なら、誘って良かったわ。もう少し、夜のお祭りを楽しんでから、帰りましょうか」
「ああ」
……。
そうして俺たちは夜の祭りを回って、四人で記念に写真を撮って家へと帰った。
こんな日がずっと続けばいいのに、なんて思って家路を歩く。
これが青春ってやつか。あんがい悪くないものだな。