第二話 強くなりたい理由
ジェイドが部下を連れて国に戻った翌日、レックスはつきっきりで修行をつけてもらっていた。
レイヴンの力の源は、魔力だが通常とは違う。
その名も、「魔動力」。体に魔力を注ぎ、身体能力を上げたり大きな攻撃を放つことができる。
だが、この力の本当の強さは『相手の能力を打ち消す』効果があるという点だ。能力による身体、または精神において耐性がつき能力系統の攻撃は一切効かなくなる。
レイヴンはこれを長年の経験を積み上げて、たった1人で完成させた技術。
そして、場面は修行風景に戻る。
「ハァ、ハァハァ、、、くそっ、、。」
今は魔力の緻密な操作の練習をしている。能力自体は魔力がありさえすれば簡単に出せる。ただし、魔動力はど素人が扱えるものではない。
「おや、また乱れてしまったね。だが、少しずつだが魔力量も増えている。わずかながら前進だよ。」
タオルで汗を拭い、手を膝について休憩をする。
緻密な魔力操作は頭も使うため、身体にまで負荷がかかるのだ。
「まずは、深呼吸。焦ってはいけない。努力を積み重ねている途中での焦りは、あまり良いものではない。これまでのことを全て失ってしまうからな。」
ズゾゾゾーとホットミルクを飲みながら説明する。突然、レイヴンがコップを横に置き話しかけてきた。
「レックス、お前はどうして街を助けたいのだ?正直なところ、あまり愛着があるようには思えないが。」
もう一度やろうとしていたところで止まり、レイヴンの方へ向く。
「俺は孤児だ。普通なら金のない人々は誰も面倒を見てくれない。突然捨てられて置いていかれたんだ。でも、宿屋のカレラおばさんとか、嘘つきのキルスでも町長でもみんな俺を優しくしてくれた。幸せだったんだ、、、」
レイヴンは話を聞いて何か自分と重ねているような目をしていた。
「だが、当時ここを自分たちの領地にしようとしていた聖魔王国の圧倒的な力を前に、みんなは元気を無くしてしまった。故郷を守ろうにも非力な自分たちでは守れないと思ったんだろう。だからこそ、何かを返したい。安心して欲しいんだ。昔みたいに笑ってほしいんだ、、」
いつの間にか目頭が熱くなっていた。怒りなのか悲しみなのかわからない。ただ、今の自分の顔は少なくともぐちゃぐちゃな顔だろう。
「すまない、辛いことを思い出させてしまったね。大丈夫だ、君は強くなれる。その兆しはもう見えているんだよ。」
目を見開く。周りの魔力の流れを感知できるようになっていた。強い感情、そして他にも様々な練習と共に強くなれるのだと気づく。
「こんなにも早く、、、これでは悪用されるのではないのか?」
「いや、そこは安心してほしい。魔動力は努力しないと絶対に手に入らないものだ。強い信念と長い努力を積み重ねていくことで魔動力は強くなり、人としても成長できる。」
目標は、どんな奴が来ようとも撃退できる強さだ。こうして俺は、また修行に戻り鍛錬に励むのだった。
ゴルデア王国地下 旧ゴミ捨て場
ごみ捨て場の真ん中の広場に数十人の悪党が集まっていた。
ネイドとその部下たちは、その悪党集団のボスに話を持ちかけた、
「我が主人を、地下のドブネズミから突き放したい。やれるか?報酬はいくらでも払おう。」
「なるほど、取引か、、いいぜ。元聖魔王国騎士団だが、今はどうでも良くなった。さて、人を潰すのは久しぶりだぜ。」
大柄な男の名はベルチェーズ・ライブ。
そして悲劇が起こるのは2年後のことになる、、、
ベルチェーズ・ライブ 能力??? 筋肉質な男。聖魔王国騎士団の時に授かった技術をまだ有しており、かなり戦闘経験が豊富。