5話
活動報告に書いた理由により投稿が遅れたことをお詫び致します。
5/8 ご指摘により一部修正
6/20 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正
今俺たちは転移陣が設置されている(行ったことのある場所且つ、転移陣の存在する場所に飛べる)城下町の南端の正門に向かっていた。
この城下町には門は一つしかなく、出入りは全て転移陣か正門からとなっている。
俺とエリナは雑多な人ごみを抜け、最も大きな道、所謂メインストリート(グランロードと言う呼称もある)に入っていく。
メインストリートなだけあって、道の幅は広く優に10メートル以上はあるだろうか。
それにプレイヤーだけではなくNPCもこの通りでは多く見かける。
道の端々に目をやれば、NPC経営の宿泊施設やアイテム屋、酒場に武器防具屋なんてものが見渡せる。
それも一箇所ニ箇所ではない、宿泊施設一つとっても視認できる範囲だけで3箇所もあるのが窺える。
広場程ではないせよ、やはり人は多く、油断すればぶつかってしまいそうになる。
NPCならいいが、柄の悪いプレイヤーなら難癖を付けられることもあるから注意が必要だ。
んで、この道を真っ直ぐ進めば目的の転移陣が設置された詰所と、正門があるのだが。
人にぶつからない様に歩いていると、何所か幼げな雰囲気を残す声で呼び止められた。
「そこ行くお二方、アリアの命令です。特に男のほうは逆立ちしながら此方を向いてください」
何やら幻聴が聞こえた気がするが気にしない。
決して知り合いが俺とエリナに声を掛けたわけではない。
反応するべきか迷っているエリナを尻目に、俺は歩幅を緩めることなく進んでいく。
「むむぅ……。無視ですか、無視なんですね。アリア怒りますよ?」
それでも無視して進むととんでもない台詞が耳に飛び込んできた。
「ふ、ふぇ~……。ぱ、パパがアリアを置いて行く~……。ひっく……。アリア、要らない子なんだ……うっ……えぅ」
「ちょ!? 何言ってくれるんだアリア! 何時俺がお前の父親になった!」
しまった、と後悔した時には既に遅く、目の前には口元を綺麗に吊り上げたようryではなく少女が一名。
身長はエリナと比べても随分小さい、140cmあるかすら怪しいだろう。
背中半ばまである銀髪は綺麗なストレートで、動きにあわせてさらさらと揺れている。
声も何所か幼さを残しており、初見ならば先ず何処の小学生もしくは中学生かと思うのは必至だ。
だがしかし、このゲーム神々の黄昏は15歳未満はプレイできない決まりがある。
つまり必然的に彼女、アリアは15歳以上と言うことになる訳だが、詐欺だと思うのは俺だけではない筈だ。
「やっとこっちを向きましたか。全く、アリアを待たせるなんてちょっと頭に蜘蛛の巣でも張り付いてるんじゃないんですか? 少しは掃除することを勧めます」
そして俺が何故アリアを無視していたのか、それは彼女特有の毒舌にある。
特に俺に対しては通常より何倍もきれがよくなるという意味不明な現象まで発生する始末。
しかも、口調には感情がありありと浮かんでいるのに表情の方を見れば殆ど変っていないという不気味さ。
しかもやたらとその顔立ちが幼げでありながらも整っているため、余計に性質が悪くなっている。
「あ~あ~。蜘蛛の巣ははってないが、アリアちっさいからな。気づかなかったんだよ」
「そんなこと言いますか。エリナさんに口では言えないピーーーやピーーーなこと話してあげるのはアリアには簡単なことなのですが」
ちょっと意趣返しにからかってやれば、またも爆弾発言をしてくれました。
しかもこいつなら や り か ね な い 。
過去にも似たことがあってそのときはエリナに随分お説教されたもんだ。
「まぁまぁ。アリアちゃんも落ち着いて、ね? お兄様も悪気があったわけじゃないと思いますから、多分」
俺のためにフォローを入れてくれるその心意気はあっぱれ。
しかし如何せん最後の多分が余計である。
それじゃあ俺がまるで悪意を持って無視していたみたいじゃないか。
「はぁ……んでなんでアリアがここに? 何時もなら開拓地の最前線にいるだろ?」
アリアは俺と同じく古参のプレイヤーに入る、まだこのゲームがでて僅か一年ちょいではあるが、アリアの神々の黄昏プレイ暦はおよそ8ヶ月近くにもなる。
必然そのレベルも高く、たしかこの前PTを組んだ時には74レベルだった筈だ。
74、間違いなく上から数えたほうが早いレベルの高さである。
その為、何時もなら新MAPの開拓地最前線にいるのだが。
因みにアリアの職業は3次職であるブレイドダンサー、特徴は数少ない双剣を扱うことだろうか。
その手数と攻撃力は他の前衛と比べても頭一つ抜きん出てると俺は考えている。
その分扱える防具は軽量クラスのみで、防御力に少々難が出るのが欠点なのだが。
「ん? 何、アリアはジン達に何か話しかけるのに理由が必要なわけですか?」
じと~と、へ~、ふ~んと擬音が付きそうな視線を送られる。
まいったな、俺命名「プンプンモード」に入ったぽいぞ。
「いやいや、気分を悪くしたなら謝るよ。只、何時もならこんなところに居ないからさ、どうしたのかと思っただけさ。今からエリナとイヴァール山脈に行くんだけど一緒に行くか? エリナも構わないだろ?」
「ええ、お兄様のお決めになられたことでしたら私に否は御座いません。それに、二人より三人の方がきっと楽しいですから」
「エリナもこう言ってるけど、どうだ?」
本当なら二人で行きたかったろうエリナに目線だけで軽く謝罪の念を送れば、エリナもまた目線だけで「構いませんよ」と苦笑気味に返してくれる。
我ながら気立てのよい妹を持つと楽でありながらもどこか寂しいものだと思う。
「イヴァール山脈……。なんでイヴァール? 二人ならもう少し高ランクでも、いえ、そこの脳内ゲーム男が居ればどこだって行ける筈です」
「実はお兄様がご贔屓にさせて頂いている鍛冶師の方が、欲しい鉱石があるとのことで。それが採れる場所がイヴァール山脈なんです」
「成る程。竜の涙ですか、まぁアリアにはどうでもいいことだけど。でもペット兼僕からの要請です、飼い主としてはついて行ってあげないこともありません」
おいおい誰が誰の飼い主だ……つーか脳内ゲーム男ってどんなんだよ。
と言うか、顔は相変わらず無表情だし、言葉も辛辣だけど口調がどこか嬉しそうだぞアリア。
ん? アリアがどうしてここに居るのかの質問が流されているが、まっいいか。
「んじゃ、転移陣向かうぞ。アリアは装備と道具は大丈夫なのか?」
「ペットに心配されるようじゃアリアもお終いですね。抜かりはありません」
相変わらずの口調に思わず笑みを浮かべると俺は道の隅から転移陣に向かって歩き始める。
幸い人も多く俺達の会話も喧騒に包まれ掻き消えていたらしく、特に注目を集めることもなかったようだ。
エリナは兎も角、アリアの体格じゃ人にぶつかれば危ないだろうと、二人の前に一歩でる形で進んでいく。
やがて、眼前に巨大でありながら荘厳な門が見えてくる。
石塀で囲まれたこの城下町最大にして唯一の門であるそれは、黒々とした金属の門でありながらどこか優美さを携えている。
表面には様々な文様やレリーフが刻まれ、年経た物のみが発する独特の雰囲気に思わず魅入ってしまう。
この城下町が出来た当初から一度も作り直されずに存在するのだから、その頑強さは折り紙つきなのだろう。
「何時見てもここの門は凄いな……。何度みても足を止めてしまうんだから」
「ええ、私もここの門は心に響くものがあると思います。不思議なものですね……」
「アリアも初めて見たときは何時間も眺めていました……」
俺達は不思議な感覚を感じながらも門横に複数設置された転移陣に向かっていった。
後書きぽいもの
怒涛の新キャラ登場です!
や、やべ~3キャラもまわす自信がない・・・・(首が真綿でゆぅくりと絞められていくようだ)。
まぁ、そこは拙いながらも努力と気合で頑張って行きたいと思いますw
感想お待ちしています。