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4話

5/8 ご指摘により一部修正

6/20 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正

結局頼んだココアをエリナが飲み終わった後、俺らはこれから何をしようか話し合う事にした。

エリナとは今日一緒に遊ぶ約束をしていたのだが、どうやらエリナ自身も何処に行きたいのか決めかねていたらしい。


え? こういう場面では男である俺がリードすべきだ? 

それは御尤もな意見なのだが、如何せん俺はその手の経験値が非常によろしくない。

なので、現実的に二人で考えたほうが良いだろうってこと。


「私はお兄様と一緒なら何処でも構わないのですけど……。お兄様は行きたい場所、ないのですか?」


ふ~む、行きたい場所ねぇー。

このゲーム、神々の黄昏はその独自の運営方法により、常にフィールドの増加が繰り返し行われている。

お陰で昨日は存在しなかったダンジョンが次の日には誕生してました、なんてことはザラにあるのだが。

その気になれば、二人で未だ見ぬ未開の地へ! なんて冒険も可能ではある。


幸い自身は前衛で、エリナは後衛のしかも回復職である、下手な火力職より火力があると自負する俺となら十分二人でも未踏の地への挑戦は可能であろう。

ふと、あ~でもない、こ~でもないと自問自答を繰り返していると、メールの着信を知らせるSEが脳内に響いた。

はて、誰だろうか? 


「ちょっと待ってくれエリナ。誰か分からないけどメールが届いたみたいだ」


「あ、はい分かりました。私もいい場所がないか考えていますので、ゆっくりで構いませんよ」


こっちがどこに行くのがいいか考えてる間、どうやらエリナも一緒に考えていてくれたらしい。

とにかく、メールの内容を見てみることにしよう。

仮想スクリーンを呼び出し、メールボックスを開いてみれば最上段にはエドワードの文字が………


マジか、エドの奴からのメールだとは………

み、見たくねぇ~、今すぐ削除してしまいたいぞ、おい! 

だが、しかし、落ち着くんだ俺。


よーく考えろ、そしてメールの中身を想像しろ! 

そうだ、恐らくだが内容は今日確認した鉱石に関する事、それで間違いはない筈だ。

こちらからも必要なリストを送ってくれと返事したしな。


シット! それじゃあ中身を見ないと意味がないじゃないか! 

お~……ガッデムOTL……

さて、そろそろ現実逃避の時間はお終いにせねば。

のんびりしている時間もないことだしな。


俺は緊張により口内に溜まった唾液を飲み込むと、おそるおそるメールを開いた。


from エドワード

件名:鉱石の入手してほしいリスト

本文:うふふ、私のマイ・ダーr


ふぅ……なにやら一瞬幻覚を見てしまった気がするのだが、気のせいだろう。

決して俺の貞操危機センサーが警報を鳴らして、思わずメールを閉じてしまったなんてことはない。

本当だぞ? しかし、中身を見ないと話が進まないし………



暫くお待ち下さい 猥褻物陳列により内容をお見せできません。






まさかメールを見るだけで3分もかかってしまうなんて、あの卑猥で脅威に満ち満ちたメールを読者の皆様にお見せするわけにはいかないからな。

正直やめて! 俺の体力はもう0よ! とでも叫びだしたいくらいではあるのだが。

取り敢えず拷問にも等しい内容に目を通した結果、以下の鉱石が必要らしい事が分かった。


妖精鉱(ランクB)

竜の涙(ランクB+)

魔力石(ランクC)


ぶっちゃけ全て倉庫に眠ってる訳なんだが、これはチャンスではないだろうか? 

妖精鉱と魔力石に関しては採掘で入手できるが、竜の涙は高レベルの竜族からしかドロップしないという特性がある。

何がチャンスなのかって? そりゃー、エリナとの冒険に丁度いいからに決まってる。


エドの頼みも解決して、エリナとの冒険にも丁度いい。

一石二鳥とはこの事である。

善は急げとも言うし、早速伝えないとな。


「エリナ、ちょっといいかい?」


「はい。どうかなさいましたか、お兄様?」


同じく思案顔だったエリナの顔が、うつ向き気味からしっかりとした体勢に戻る。

その表情には『何か提案が見つかったのですか?』と書いてあって、思わず笑みを浮かべそうになるが、寸前のところで思いとどまる。


ここで笑おうものならエリナの御機嫌を損ねてしまうかもしれない。

それは自身としても望まぬ結果である。


「さっきのメールなんだけど、エドからだったんだ。で、調達してきて欲しい鉱石があるって話なんだけど。どうせならこれを二人で取りに行かないか? どうせ行く当てもないんだし、丁度良いと思ったんだけど」


「ええ、勿論私に否はありませんけど。どのような鉱石をお探しですの? エドワードさんは」


「竜の涙って鉱石なんだけど、高位の竜族からしか入手できないんだ。腐っても竜、それも高位ともなると最低でも45レベルは必要だし、効率を考えるなら55は欲しいところじゃないかな。行くならイヴァール山脈か、プロキシナ坑道になると思うけど」


このゲームの特徴としてレベル40から、つまり3次転職後から急激にレベルが上がりにくくなるという特性がある。

経験値テーブルが40からは、1レベル上げるのに必要な経験値量が大きく増加して行く為だ。

その為現在上級者、もしくはベテランと言われるプレイヤー層の平均レベルは55~60だと言われている。


そんな中、俺のレベルは言わずもがなら、エリナだって実は69レベルだったりする。

因みにプロキシナ坑道が推奨50レベルからで、イヴァール山脈に至っては推奨レベルは55だ。

確かにレベルの面から見れば十分二人でも攻略可能に見えるのだが、竜の巣窟たるイヴァール山脈では推奨レベル+5、つまり60以降でのPTで向かうのが暗黙のルールだったりする。


理由は簡単、竜族は他の魔物や魔族より大抵強力だからだ。

同レベル帯の魔物となら、圧倒的に竜の方に軍配が上がることになる。


「成る程、それでは行くならイヴァール山脈の方がよろしいですね。あそこは出現する魔物の大多数が龍に分類されますし、高位の竜も数多く分布しています。それに、折角お兄様とのお出かけなのに辛気臭い坑道だなんて、考えられません」


お茶目のつもりなのだろう。

何所か不貞腐れたかのように、口を尖らせるその姿は自身が彼女の兄役だと自覚していても、思わずガクッとくるものがあった。

してやられた気持ちを仕舞い込み、少しからかってみることにする。


「はは、そうだね。折角のエリナとのデートがかび臭い坑道だなんて、俺は兎も角エリナに申し訳が立たないな」


「も、もぉ……。そうやって可愛い妹をからかうのはお兄様の悪い癖ですよ?」


「いやいや、からかう気なんて全くないんだけどね? よし、それじゃあ移動方法は転移陣で行こうか」


これ以上薮蛇やぶへびを突付くのは得策ではないと、会話にピリオドを打つ。


「まったく……本当に反省なさって下さいね? 転移陣でしたら、城下町の門前でしたね。それでは参りましょうかお兄様?」


「了解」



立ち上がり、片手を差し出してきたエリナの手を取り立ち上がる。

店員に飲み物代を支払うと、カランコロン「またのご利用をお待ちしております」と、店員の言葉を背後に自身が前に出る形でエルトワーズを後にした。



これから向かうのは竜の巣窟、一筋縄ではいかない難所だ。

だがしかし、不思議と不安はない。

今の俺の心に広がるのは昔の俺とは違う、グランスバール上空と同じ晴れやかな青なのだから。


俺はエリナに感謝している、只ならぬ感情を抱いてると置き換えてもいいだろう。

しかし、それは兄弟愛だとか、友達との友情だとか、ましてや恋愛感とも違う。

それは一番近い例を挙げるなら、きっと恩義が一番近い。


俺はエリナに感謝している、遥か昔、俺たちがまだ小さかった頃、一つの約束を交わした。

その約束の内容は今思えばとても気恥ずかしいものだけど、俺はそれを守っていきたいと思っている。

それこそが、エリナに対する俺ができる精一杯の恩返しなのだから………











後書き


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