プロローグ
改定前の作品を読んで下さった方は、今回も手に取っていただき誠に有り難う御座います。
初めての方は未熟者ですが、どうぞよろしくお願い致します。
6/16 一部表現修正
オンラインゲームと、そう呼ばれるものを知っているだろうか?
きっと多くの人達は、その言葉から様々な要素を連想するに違いない。
簡潔かつ単純に示すなら、オンラインゲームとは即ち世界である、そう私は考えている。勿論この考えは私の想像であり一概に正しい思考だと捉える必要はない。
それに、多くの人々はきっとオンラインゲームという言葉を聞くとき、PCや家庭用ゲーム機を通して様々な人々が場所、あるいは国すら越えて同じモノをプレイすること、そう考えるだろう。
きっと今これを読んでいる多くの、あるいは少数の読者もそう考えているのではないだろうか。
では何故、私はオンラインゲームとは世界であると、そう明記したのか?
それをここに書く前に私はこれを読んでいる諸君に、幾つかの説明をしなければならない。
今現在の西暦は22世紀後半であること。
世界は過去の21世紀諸君が考えているより、多くそして複雑な進歩を遂げてきた。
それは例えば教育に関してだとか、あるいは食品に対してであったり、勿論医療だって大きく発展している。あの忌々しい癌ですら、今では一昔前に進歩した結核の治療のように、幾つかの錠剤で簡単に治ってしまう。
ドナーですら身体の一部であればクローンが認可されている(非常に面倒な手続きが必要ではあるのだが)。
一昔前みたいに適合者が見つからずに、なんて心配はいらない。
そして最大の発展はやはりIT関連だろう、現在の携帯電話、呼称さえ昔と同じではあるが、その内容は全くの別物とすら言える。
そしてその煽りを受けて最初に出てきたオンラインゲーム、と呼ばれる娯楽にも転機が訪れることとなった。
きっと多くの読者も一度は、仮想の世界そして剣や魔法で戦うファンタジー。
エルフやドワーフが居る異世界。
神話にしか出てこない神々が存在する世界。
そんな場所に行ってみたいと、そう考えたことがあるのではないだろうか?
私は専門家ではない為、残念ながら詳しいことは知らないが、とある高名な学者によりそれ等は限定的にとはいえ実現することになる。
体に流れる微弱な電気信号これを解明、応用、そして読み取ることにより、従来のオンラインゲームとは違うものを作り出すことに成功した。
俗に言うVRS(Virtual Reality System=ヴァーチャル・リアリティ・システム)だ。
そしてこれにより上記の世界は正しく、限定的にだが実現された。
世界はその時確かに震撼したという。
この時からゲーム業界は競い合うように、様々なVRS搭載オンラインゲームを販売してきた。
そしてVRS登場から数十年、大手企業連携による一大プロジェクトの元、数年を掛けて開発されたVRMMORPG。
2186年それは―神々の黄昏―と言う名前で発売された、単価35万円という高値であるにも関わらず、僅か1ヶ月で累計1億もの売り上げ総数を叩き出したソレは、過去最高のオンラインゲームとして名を馳せる事となる。
随分と長い前フリとなってしまったが、この物語、詰まる所その神々の黄昏をプレイする一人の男性にスポットを当てたお話である