14話
う~ん・・・正直何度書いても納得いかない内容でした。
そのうち先にあわせて改定するかもしれません。
6/21 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正しました
意識が浮上する。
でもそれは現実への帰還などではない。
そう俺の第六感的な超感覚みたいなものが教えてくれる。
だからきっと、これはあの不思議な夢の続きなんだ……。
それはまるで、墨汁で描いたかのような世界だった。
白と黒の、ぼんやりと輪郭の曖昧な世界。
もしかしたら本当は違う色なのかもしれない。
様々な色に溢れた惑星なのかもしれない。
しかし、残念ながら今の俺には白と黒の墨で描かれているようにしか見ることが叶わなかった。
そんな白と黒の世界に一人の男が立っている。
残念ながら、その詳しい容姿までは分からない。
ただ、その背格好は分かる。
どうやらそれなりの身長で、髪は長い。
色は分からないが背中で紐を使って一纏めにされているようだ。
その男の片手には小柄な女性の手が握られている。
女性の方は随分と小柄らしい。
男の胸元くらいしかその背丈がないように思える。
髪は異常に長く、膝下まであるようだ。
そんな男と女、二人はまるで何かに追われるようにひたすら走っていた。
随分長いこと走り続けているのか、男の表情には僅かな疲労の影が見える。
やがて二人は立ち止まると、男が女に何かを言った。
それに反応して女も何か男に言った様だが、男は短く何かを告げると女の手を掴み再び走り出した。
暫く進むと、再び男と女は何事かを話しだした。
会話は残念ながら聞こえない。
と、いうより音がこの世界では聞こえないらしい。
その口元をみて何か話しているのだと、理解しているだけだ。
女に話しかける男の表情は、この墨で描かれた世界では詳しくはわからない。
しかし、俺には何となくその男の思っている心情が理解できた。
即ち、『諦めてなるものか。私は貴女をお助けすると決めたのです。例え世界の全てに追われる身となろうとも……』只管に諦めないという思い。
それは単純故に強い感情である。
男は再び女の手を取り走る。
この先には広大な樹海が広がっている。
そこまで行けば、逃げ切る事も不可能ではないだろう。
そう考えて走り続ける。
そこで俺はふと、疑問に感じた。
男たちの走る速度は異常な程に早い。
ゲームでいうなら俺並の速度である。
現に、男の顔には疲労の色が窺える。
それなのに隣で走る女性の顔には、疲労の色一つ浮かんでいないのはどういうことなのだろうか?
そこで再び視界が暗転した。
次に光が差し込んだとき映ったのは、男がどこかの町の家で寛いでいるシーンであった。
男の傍らには先程とは別の女性が立っている。
女性は雰囲気から男よりやや若いくらいの年齢だと判断する。
背中まである髪は緩やかなウェーブを描き、その容姿まではわからないが、どこか人を安心させる雰囲気を持った女性だ。
先程はあんなにも鋭い雰囲気であった男は、その女性の甲斐甲斐しいまでの世話に表情を和らげている。
女性もそんな男の反応が嬉しいのか、更にいっそう甲斐甲斐しく男の世話を焼く。
暫く男と女の平凡な日常が過ぎていく。
やがて、飛ぶようにシーンが移り変わり、男が家を出て行くようなシーンになった。
男はなにやら焦った感じで家を出ようとしている。
女性がそれを一生懸命に引き止めている形だ。
やがて男は焦れたのか、半ば強引に家を飛び出していく。
後に残された女性の瞳は涙でぬれていた。
そして再び視界に黒が差す。
次に視界が開けた時、男は見知らぬ遺跡に立っていた。
その傍らには前回と前々回に居た女性とは別の女性が寄り添っている。
現状自身から見える世界は白と黒、更に言うなら昔の水墨画のような感じだ。
お陰で男に寄り添う女性の年齢を詳しく特定することができない。
男と女性は次々と現れる、魔物らしき生物を倒し奥へと進んでいく。
女性は男より戦闘に慣れていないのか、偶に男に助けられている場面が見受けられた。
飛び飛び移り変わる映像の後、遺跡の最深部に到着したのか、男と女性の前には荘厳な雰囲気の巨大な石の扉が佇んでいる。
男と女性、いやこれまでの雰囲気から察して少女は何事かを話すと、やがて男がその両手を扉に当てゆっくりと開いていく。
本来ならギギギギィィと音が鳴りそうなものだが、音のないこの世界では無音のままであった。
やがて扉が開いていくのと同時に、奥から強烈な光が漏れ出してくる。
その光は太陽を直視するよりなお強烈で、俺は思わず瞳を閉じてしまった。
瞳が完全に閉じるのと同時、俺の意識は再びじょじょに霞がかっていくかのようにぼんやりと移ろいゆく。
しかし今度はあの暗闇に沈んでいく感覚じゃない。
例えるなら暗い海の底から海面に浮上するような、そんな感覚だろうか。
そして何とも言えない不思議な感覚と共に、シャットダウンしていく意識。
その途中俺はこの不思議な夢の、最初に聞いたあの儚くも凛とした声を再び耳にした。
『幾千、幾万も繰り返された事象。幾千幾万回も事象を起こした私。忘れられなくて、僅かな希望に縋り、記憶が磨耗するまで繰り返す。それは長い長い時であるのと同時に、ほんの刹那の瞬きでもあるのです。マヨイガでは時間の概念はなく、私もまた時の概念に縛られない存在であるが故の希望。そして幾千幾万回の祈りは漸く……ああ………よう…やく……―――――様、貴方が例えこの夢を覚えていなくても、きっと、きっと時が満ちれば……――――はいつでも――――様のことを想っているのですから』
「……様。お……様! ………お…に様、きて……さい!」
声がする懐かしい声だ、でも随分と久しぶりに聞くような気がするのは何故か?
そして、同時に聞きなれた声でもある。
意識がゆっくりと覚醒していくのが分かる。
まるで悪夢でも見ていたようだ。
「おに……様、朝ですよ! 起き…下さ……。お兄様、朝ですから起きて下さい」
もうそろそろ俺の意識が完全に覚醒する。
この声は恐らく恵理奈だろう。
何故恵理奈が俺の家に居るのかは別として、さっきから妙な感覚が胸を締め付けている。
何か夢を見ていた気がするのだが、思い出せない。
とても重要で、忘れてはいけない内容だった気がするのだが……やはり思い出せない。
小骨が喉に刺さっているような不快感だ。
無理に思いだそうとすると、頭に鋭い痛みを感じる。
でも、どうしてだろうか?
覚えていない筈なのに。
夢のことを考えると、胸が苦しくなる。
それは欲しい玩具に瞳を輝かせる子供の気持ちにも似ているし。
はたまた、異性に恋焦がれる気持ちのようでもある。
しかし、その苦しみは何故か不快な気持ちにはならない。
逆に、何か忘れてはいけないような、とても大事なもののような気さえしてくる。
俺はこの不思議な感情に心の中で首を傾げると、先ほどからめげずに俺を起こそうと躍起になっている恵理奈を安心させる為、その瞳を開くことにした。
俺が目を覚ますのと同時に考えたことは。
まぁ、何時までも分からないことを考えても仕方ないということに。
先ずは恵理奈に何故俺の家に居るのか、それが今日一番のやるべきことだろう……。
ということであった。
後書きぽいもの
長い間またせたくせに結局満足いく内容が書けなかった作者です。
う~ん、作者伏線とか苦手のようですね。
今回の話で思い知りました。
感想・評価・誤字脱字報告。それに小説をお気に入りしてくれると嬉しいです。
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