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10話

文字数だけで6000字超えていますw目が疲れるかもしれませんので御注意をw

派手な魔法やスキルは出ません、期待してた方申し訳ありません・・・。

惰弱な作者のしょぼい文才でも少しは楽しめるように頑張ったつもりですが、お楽しみいただければこれ幸いです。

5/12 奇声の部分の一部改定しました

6/20 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正しました。

速い!? 

僅かコンマでトップスピードに達したファーフナーの右腕に掲げた刀、長さが大よそ75cmであることから一般的に太刀と呼ばれるものだと推測する。

対してこちらの獲物であるサーベルに近い形をしたヘリオトロープの全長は大よそ100cm、野太刀にすら匹敵する長さだ。


リーチの差を活かして、ファーフナーが間合いに入らないように迎撃する! 

俺はファーフナーが刀を振り下ろすのと同時、シャの構えから真っ直ぐ振り下ろされた一撃を弾き返す。

キィイインと金属独特の音が響くのと同時、俺とファーフナーは合わせ鏡のように同じタイミングで距離をとった。


『初撃を止めるとはの。速さには自信があったのじゃが?』


確かにあの速度は相当なものである、トップスピードなら俺でも追いつけるかもしれないが……

しかし、初速からトップまでの時間が極端に短いのは脅威だ、流石、見た目が人なだけで本質は竜なだけはある。


『あれだけ大振りならバカでも返せるさ』


俺はヘリオトロープを今度は下段八相に構え、ゆっくりと間合いを詰めていく。

下段八相の構えは基本的に後の先を取ることを想定している為、自身からは先手にでることはない。

こちらには得物のリーチ差がある。


余談だが、こと武器の斬り合いにおいて水月と呼ばれる場所が存在する。

水月とは自身からは攻撃できるが、相手からは攻撃を受けない場所のことを示す。

とどのつまり、この武器の長さの差はそれだけ俺にとって水月を取りやすくしてくれる訳だ。



後は相手を如何に間合いに入らせずに攻撃するかである。

やがて、後一歩でヘリオトロープが届く範囲まで俺は迫る。

その距離で足を止めると、折角なのでファーフナーを挑発してみることにした。


「先ほどまでの威勢はどうした? こけおどしだったのか?」


『ぬかせ。まぐれで初撃を返せたのが嬉しいのかえ? 直ぐにその減らず口を封じてくれるわ!』


どうやら存外に直情型だったのか、安い挑発にも簡単に乗ってくれたようだ。

相手の左足が動いた瞬間、俺は余裕をもってへリオトロープの白刃を煌かせる。


ヒュン ヒュンと風切音が鳴るたびキィーンと甲高い金属音が響く。

左上から迫る刃を右下からり上げるように打ち上げ、続いて右上斜めから向かってくる斬撃を左やや下から同じように打ち返す。


そのまま剣を戻す力を利用して篭手を斬りに行くが、ファーフナーも馬鹿ではない。

すかさず体勢をずらして一撃をかわしてくる。

そして、今度は鋭い呼気と共に突きを繰り出してくるが、俺は下段の構えからすかさず白刃を左後ろに弾く。

俺はファーフナーの刀が斜め後ろに伸び上がるのと同時、構えを上段八相に切り替え、そのまま気合を発しながら直進した。



「きぇえーぃ!!」


俺のいきなりの奇声に籠められた気迫により、一瞬身を強張らせるファーフナー。

はっとした後すぐさま行動を再開させる、が。

その僅かな硬直のお陰だが、俺の方が僅かに次の行動が早い!! 

その一瞬の隙を突いて、上段八相の構えから素早く袈裟懸けに斬りつける。


鎧に一瞬刃の進行を止められるが仮にも神剣であるヘリオトロープ、拮抗は僅かですぐさまに鎧ごとファーフナーを切り裂いていく。

ヘリオトロープを振りぬくのと同時、俺は素早くバックステップで距離を取った。

前方に視線を向ければどうやら傷は浅かったのか、鎧の裂け目から僅かに赤い色が垣間見えるだけである。


『ぐぅ……。主、その動きこの世界の剣術か? 見たことが無い動きぞ』


その台詞に内心俺は笑みを浮かべる。

何故なら、先ほどよりおこなっている一連の動きはどれも古流に属するもの、日本における昔ながらの剣術である。

無論この神々の黄昏にそんなスキルは設定されていないし、存在もなければ伝承に記載されていない。


「どうやら俺の減らず口を封じるのは無理そうだな?」


『ふん、今までは様子見よ。この程度の傷直ぐに癒えるわ。ここからが本番じゃ!』


瞬間弾丸のような速さで斬りかかってくるファーフナー。

一瞬で目の前に迫る姿に刀を打ち返す余裕もなく、真正面から鍔迫り合いの形となる。

力ではやはり不利なのか、じょじょに体勢を押し込まれていく、が。

俺は腰をゆっくり広げ、力を入れやすくすると気合一声、勢いよくファーフナーの刀を真上に弾いた。


「はぁああっ!」


キィーンと金属音が響いた後、すかさず距離をとりヘリオトロープを素早く一閃。

剣先から放たれた魔神剣は残念ながらファーフナーに弾かれてしまうが、その体勢が後ろに仰け反るの確認し、俺はヘリオトロープを星眼に構えなおすと、今度は此方から踏み込む。

一息で間合いを詰め、ヘリオトロープを一閃、二閃、三閃と次々斬撃を浴びせていく。


外から見れば残像しか視認できない程の剣戟を、しかしファーフナーは次々といなしていく。

俺が右上から高速に太刀を浴びせれば、左下から掬い上げる様に合わせ、逆に左下から切り込めば今度は右上から切り返してくる。

近間ちかまと呼ばれる互いが互いを即座に切り捨てられる間合いで、俺とファーフナーは一歩も譲らずに剣戟を繰り出していく。

それはまるで舞を舞っているかのように美しく、金属の奏でる音楽に二人の戦いを観戦しているアリアとエリナは、我を忘れて魅入っていた。


やがて剣と剣がぶつかり合い、またも鍔迫り合いの形となった瞬間。

ファーフナーが行き成り口腔を大きく広げたかと思うと、次の瞬間竜の吐息(ドラゴンブレス)を吐き出しやがった。

俺は上半身を仰け反る形で何とか回避するが、体勢を崩した隙を突いて一気に剣を押し込まれる。


「クソッ、その状態で竜の吐息(ドラゴンブレス)とか少しは自重しろよ!」


その言葉にふん、と鼻で笑うと此方を小馬鹿にしたような台詞を吐くファーフナー。


『誰も人型になったら炎が吐けぬなど、言っておらんだろうに。少々考えが甘いようじゃの?』


言い終わるのと同時、鋭い衝撃と共に数メートルの距離を吹き飛ばされるが、何とか空中からバックステップの要領で転げ回るような無様は回避する。

一瞬後、それがファーフナーに蹴り飛ばされたのだと理解したのと同時。

ファーフナーの口腔から灼熱の炎が迸った。


それは今までで最も熱く、激しく、燃え上がりながら俺の身を焼き焦がそうと迫ってくる。

俺は急いで体勢を整えると、自身が繰り出せるスキルの中でも強力なやつを気合裂帛と共に解き放った。


「うおおおおお! 旋風斬!!」


気合一声、上段に構えたヘリオトロープを可能な限りの高速で、いや神速で何度も振りぬく。

瞬間、あまりの剣速により乱れた空気が渦を巻き、前方に巨大な竜巻を発生させ、竜の吐息(ドラゴンブレス)を巻き込みながらファーフナーに突き進んでいく。

炎の竜巻と化したそれに対してファーフナーを避けようともせず、ぎりぎりまで引きつけ、朗々と練り上げた呪文を開放した。


『押しつぶせ、擬似暗黒空間(ブラックホール)


詠唱が終わった瞬間、半径数センチ程の黒い球体が竜巻の中枢に発生、一瞬で1メートル程の大きさになると硝子が砕け散るような音と共に消滅した。

一瞬後、激しい吸引力を伴った嵐が吹き荒れる。

先ほど黒い球体が発生した場所を見やれば、罅割れたかのような亀裂が空間に発生していた。


「おま!? それ反則だろ! 何空間に穴空けやがってんだ!?」


しかし吹き荒れる暴風で俺の声はすぐにでかき消されてしまう。

なんとか吸い込まれないようヘリオトロープを地面に突き立て持ちこたえるが。

渦を巻くように発生する吸引力は凄まじく、少しづつ空間の割れ目に吸い寄せられていく。

残り2メートル! と言うところで唐突に空間の罅は消え、それと同時に吸引力も収まる。


『なんじゃ、吸い込まれてしまえばいいものを。運のいいやつじゃな』


「……はぁはぁ。流石に今のは危なかったぜ、もう数秒程閉じるのが遅ければ吸い込まれてたな、つーかあれ普通に一発でデッドだろ……」


アリアとエリナは結構な距離を離れていたためか、吸引力の範囲外だったようだ。

その事に安堵し、溜息をつく。

俺は気を取り直し、再度ヘリオトロープを今度はカスミに構え、光の古代強化呪文・加速(アクセラレータ)を自身に付与する。


加速アクセラレータは5分の間詠唱や攻撃速度、反射速度に純粋な行動速度といった、様々な『速度』を強化してくれる魔法だ。

ただし、再使用に30分のクールタイムを必要とする為にここぞと言う時にしか使えない魔法でもある。

そう、お分かりの通り俺は今から倒せないまでも、重症、もしくは致命傷をファーフナーに与える気概で挑むつもりだ。


どうやら此方の強化魔法に気づいたようで、ファーフナーが刀を油断無く構えてくる。

面白い、最後の勝負、5分に全てを託す。


「俺の乱撃、全て受けれるなら受けきって見せろ! 行くぞ。はぁぁあああっ!!」


自身を鼓舞するような気合と共に距離にして大よそ数メートル、近間の距離まで一瞬で詰め、カスミの体勢から視認すら不可能の剣速で乱撃を繰り出していく。


一太刀目を防がれれば瞬時に二太刀目を、同じく防がれれば次を。

相手に一切の反撃を与えずに、ただ我武者羅に剣を振り続ける! 


それは一見傍から見れば優美さも何もあったもんじゃないと、そんな風に見えることだろう。

しかしその実、その一撃一撃には気合が宿り、防がねば此方があっさり斬り伏せられる。

そう相対してる者には感じられている筈だ。


そのあまりの苛烈さに、二人を中心に風が轟々と吹き荒れる。

近づくだけで剣圧により斬り伏せられる死の空間。

瞬きすら許されないその世界で俺とファーフナーは音すらおいて、幾千幾万もの白刃を斬り結んでいく。


キィィイイン! と一切甲高い音が鳴った。

最早数さえ数えるのが馬鹿らしくなる程の激しい攻防はしかし、ファーフナーに軽症と無数の鎧傷を与えるだけに終わりを迎えた。



side ファーフナー


『残念だったの? 確かに恐ろしい乱舞ではあったが、妾の動体視力と反応速度は人を遥かに超えているゆえ、攻略不可能ということはありえなんだ。しかし、鎧を着けてなければやられていたのは此方やも知れぬ、誇るがいい。妾の肝を冷やしてくれたのはそちが初めてじゃ』


まさか妾ともあろうものが、高々人間風情にこうも追い詰められるとは思いもよらなんだ。

正直驚愕ではあるのじゃが、しかし同時に何処か嬉しくもある。

遥か昔、古き時から生きる妾は、時に神々に恐れられながらも自由気侭にこの世界を謳歌してきた。


しかし、いつの日からじゃったろうか? 妾は気づいてしまったのじゃ。

妾よりもなお強き強者つわものはこの世界におらぬのではないか、と言うことに。

勿論それは過ぎたる驕りであろう。上位神と呼ばれる神々や、まして創世から存在する神や獣に比べれば、妾の力などその足元にすら及びもしないに違いない。


だがしかし、上位の神や創世から生きる神なんて大半が封印、もしくは消滅、それか位相の違う空間に住んでいるため、出会うことなど先ずありえないじゃろう。

創世から生きる獣にしたって同じじゃ、殆どがこの世界の何処とも知れぬ場所で眠りについていることじゃろうからな。


ゆえに、妾は生まれてより幾千年、これまで一度たりとも負けを知らずにきた。

それが今、目の前に居る人間にその寸前にまで追い込まれていたのじゃ。

見ればどうやら神格を授かりし者のようじゃが、それでも普通考えられないことじゃろう。


妾は今、目の前で荒く息を吐いているこやつに最大の敬意を持って最高の一撃にて屠ることを決意する。

右手に持った竜牙刀を上段に構える、一撃で終わらせてくれようぞ!! 


『この一太刀で全てが終わりじゃ! ここまでの戦い、妾はじつに満足じゃったぞ。安心して逝くがよい!!』


力強く一歩を踏み出す、そして妾は全力で刀を振りかぶった。


side end



ファーフナーが鋭い斬撃を振りかぶってきた瞬間、俺はスタミナ切れ寸前の身体に渇をいれる。

そして、左下から掬い上げるようにファーフナーの刀を打ち返した。

驚愕に目を見開くファーフナーをよそに、打ち上げた力を利用してそのまま左足で相手の柄を蹴り上げ刀を弾き飛ばす。

刀が弾かれた時にできた一瞬の硬直を見逃さず、神速の突きを三段、全力を持って放つ! 


篭手、胴、喉の順に放たれた神速の突きは、引く度に払うことで傷口を広げていく。

恐らくファーフナーには視認すら許さなかったことだろう。

奥義無明剣ムミョウケンと呼ばれるそれが終わるのと同時に、ファーフナーの突かれた三箇所、特に喉元から激しい出血が迸る。

それは俺の全身に降りかかり、鎧を赤く染めた後、やがて勢いを弱めていった。


『ば、馬鹿な……。まだ……ごほっ! ごほっ! そん……な……ちからが残ってい……た……というのか……?』


その台詞を最後に、頭上のHPバーが完全に真っ黒に染まり、同時にその身体を光の粒子となして消滅させていく。

ふぅ、漸く終わったか……。

緊張が途切れた為か、崩れ落ちるように地面に座り込んだ俺に二人が駆け足で近寄ってくる。


「お疲れ様です、お兄様。今、回復致しますね」


そう言ってエリナは癒しの風を掛けてくれる。

爽やかな風は俺の身体を撫でるように通り過ぎ、傷ついた身体を癒していく。

あらかたの傷が回復し、頭上のHPバーもほぼ全回復したところでアリアが声を掛けてきた。


「ペットの癖に生意気です」


何を言うのかと思えば。よく分からない台詞を送って下さいました。

どういう意味かを尋ねる前に、再びアリアが口を開いたので仕方なく言葉を呑み込む。


「本当ならもっと楽に倒せたはず、わざとゲーム内のスキル及び魔法を自粛しましたね? どうせ、俺はもっと長く戦いたかったんだ! とか、男は拳で勝負だぜ! なんて考えていたのでしょうが」


思わず口元が引き攣ってしまう、何故ならその通りだからだ。

折角出会えた強者つわものだ、正々堂々真っ向勝負! とも考えていたし、どうせなら長く戦いたかったってのも図星である。

しかし、正直に伝えるのも癪なので、ちょっと言い返してみることにした。


「いや、多分魔法を全力で使用しても結果は同じだったと思うぞ? ファーフナーも魔法に関しては自粛していた筈だからな」


まぁ、あの擬似暗黒空間ブラックホールだけは別だが……。

その台詞にもなお、反論を加えようとするアリアをエリナが宥める。


「アリアさんもそれくらいにしておきましょう? お兄様が御心配だったのはよく分かりますけれども」


「べ、別にアリアはこいつの事なんて心配していません」


何時もより若干紅いように見える顔で、素っ気無く言うと。

そのままアリアはダンジョンの出口に走っていってしまう。


「おいおい! 待てって! ここで他の竜族に出くわしたら洒落にならねーから!?」


追いかける俺にエリナも慌ててついてくる。


「お、お兄様!? 置いて行かないで下さいまし!」


アリアを追いかけながら考えたことは、クエストはどうなったんだ? て言うことと。

帰りなら転移の魔法使えばよかったんじゃね? の二つであった。



後書きぽいもの


如何でしたでしょうか?今の作者の拙い力量じゃこの程度が限界でした、少しずつ楽しめるように精進していくつもりなのでご容赦を。


これにてファーフナー編を終了です、当初の目的であった竜の涙に関しては次で記述されますのでそこで。


なお、次回からしばしの日常編に突入したいと思います。


実は今回のファーフナー編ある意味伏線でもあるのですが、現時点じゃ流石に分からないと思います。

物語に絡んでくるのも相当先ですし、もしこの先の展開がよめたら凄いですw


それにしても戦闘書くのって大変・・・。


それでは、感想・評価・誤字脱字等お待ちしております!

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