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9話

ファーフナー編は後1~2話で終わるかと思います。

随分長くなってますが気長に付き合ってやって下さいw

6/20 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正

「はぁ……はぁ……。やっと2回目の逆鱗つーか変身ですかってか?」


俺達が一回目の変身を終えたファーフナーと戦闘して既に30分、周囲の地形の変化がその戦闘の激しさを物語っていた。

抉れた岩肌や不自然に隆起した台地、上位爆裂呪文(グランイオール)で吹き飛ばされた山頂の一部分、上位凍結呪文(コキュートス)により凍りついた跡、ドロドロに溶けて煮えたぎる地面。

HPに関してはエリナのお陰で全回復でこそあるが、SPやMPに至っては消耗品まで使用しないと追いつかない始末である。


対してやっこさんは現在4割まで減らされたHPで漸く2回目の変身? をおこなおうとしているところ。

流石にここまでのダメージが全回復されると思うと、どこかやるせない気持ちにもなる。


「アリア、疲れたです……」


俺より基本的な体力値やステータス値が低いアリアに至っては全身汗まみれ、これ以上の戦闘は厳しいと言わざるを得ないだろう。


「兎に角今のうちに支援呪文掛けなおしますね」


そう言って詠唱を始めるエリナの表情にも疲労の影が差し込んでいる。

前衛で動き回る俺やアリアと違って、後方支援であるエリナは体力的には余裕があるのだろうが、その分精神力を大きく消耗している筈だ。

この神々の黄昏ではスキルを使えばSPは勿論スタミナと呼ばれるものが減るし、魔法を唱えればMPだけじゃなくて精神力と呼ばれるものを消耗する羽目になる。

精神力に関してはレベルで増えていくが、使いすぎれば疲労感はもとより、脱力感や目眩を起こすことになる。


『ここまで妾を追い詰めたのはそなたらが初めてじゃぞ。何、妾はまだ後3回変身を残している! などとは言わんのじゃから安心せよ。誇るといい、正真正銘次が最後の変身であり最強の姿であるぞ? しかとそのに焼き付けるがよい!!』


「……ッ!?」


ファーフナーが傷だらけの両腕を振り上げると、全身から漆黒の霧が噴出する。

闇よりなお暗いその霧は、ファーフナーの全身を包み込むと無音と化した。

軽く魔法をぶつけてみたが闇に弾かれるだけで、意味が無いようなので攻撃は諦める。


1分2分と経過し、エリナの支援呪文も全て掛け終る頃、漸く漆黒の霧が晴れてきた。

やがて映り始めたぼんやりとしたシルエットは、予想していたよりずっと……小さい? 

今度は全長20メートルだとか、或いは全身から不思議パワーがオーラの如く! みたいなのを予想していただけに拍子抜けしそうになる。


横を見てみればアリアもどこか釈然としない表情を浮かべていし。

エリナに視線を送れば、私もさっぱりです、とアイコンタクトを返される始末。


『待たせたようじゃな。これが妾の最終形態よ、油断しているとあっと言う間に終わってしまうゆえ、精々気張ってくりゃ?』


やがて霧が晴れた先に立っていたのは一人の童女であった。

そう、俺たちが一番最初に見たファーフナーの姿である。

ただし、補足するなら、その格好は漆黒の顔以外をガードする俺と同じタイプの全身鎧、盾はなく、その腰に一振りの刀を佩いている。

更にはその背中からは自身の身長にも匹敵する、紫の翼が二対突き出している。


その全身から滲み出る闘気は今まではただ、巨大なだけだったとするなら、研ぎ澄まされ更に圧縮したかのような印象を受ける。

まるであの巨体を人型にまで凝縮したかのような、そんな雰囲気だ。

だがしかし、好都合。


相手が人型ならそれこそ俺の本領発揮といえる、本来俺は大型の敵より小型、もしくは中型や人型相手の方が得意である、それは強力な魔法や威力の強いスキルは勿論使えるのだが、俺本来の戦闘の仕方が技量による相手の凌駕の為だからだ。


「その姿から想像するに刀を使うのか……? まぁいい、エリナは兎も角アリアはもう限界だろう? 二人ともこの先手出しは無用で頼む、構わないか?」




side エリナ


「その姿から想像するに刀を使うのか……? まぁいい、エリナは兎も角アリアはもう限界だろう? 二人ともこの先手出しは無用で頼む、構わないか?」


そうお兄様は突然仰られました、本当なら無茶です! 一人で戦うなんて!? と言うべきなのでしょう。

でも私は知っているのです、お兄様が本来なら一対一を得意とし、人型を相手にした方が実力を発揮できることを。

私は知っているのです、先ほどまでの戦闘はお兄様にとっては茶番、魔法による枷を嵌めた状態であることを。

それはお兄様本来の実力を制限する物、例えるのなら全身に数百キロ以上の重りを乗せて動くようなもの。


だから、私が言うべき言葉はきっと決まっていて。

それはお兄様が心置きなく戦えるようにとの、呪文でもあります。


side end




side アリア


「その姿から想像するに刀を使うのか……? まぁいい、エリナは兎も角アリアはもう限界だろう? 二人ともこの先手出しは無用で頼む、構わないか?」


そうジンはエリナとアリアに言ったです。

アリアは知っています。

ジンがこと対人戦においては最強無比の実力を誇っていることを。


アリアは過去何度かジンに一対一の勝負を仕掛けたことがあります、1レベルの差が大きな意味を持つこの世界ではアリアとジンの差は明白でした。

なので、ジンはハンデとして強化呪文は勿論スキルも封印した状態だったのですが。


それでもアリアは一度としてジンに、こと一対一での戦闘では勝てた試しがありません。

それはレベルの差だとか、ステータスの違いとか、相性の差なんだとかじゃなくて。

もっと根本的な、純粋な戦闘における心構えだとか、或いは技力と呼ばれる部分でどうしようも無いほどに差があったから。


だからアリアが言うべき言葉はきっと決まっていて。

どこか悔しいと思いながらもきっと口にするんです。


side end


「お兄様がなされたいことを、どうかお進みください。私はどんな時でもお兄様の味方なのですから」


それは随分昔から聞いてきた言葉で、きっとこれからも答え続ける言葉でもあるのだろう。


「アリアはジンの保護者じゃありませんから。ジンがそうしたいのなら否はありません」


PTとして何か一言文句が本当ならある筈なのに、何時ものように毒を吐くこともなく真摯に答えるアリア。

だから安心して一歩進んで前を向く、きっと今の俺は少し情けない表情かおをしているだろうから。

たかがゲーム、されどゲームである。

俺はこの神々の黄昏(せかい)で数々の信頼できる人達とこうやって行動できる事を本当に幸せだと思う。


だから、こんな俺を信頼してくれた二人の為にも、俺はきっと負けられない。

自身に枷として、常時発動させてある束縛型の魔法を解除する。

すると久しく感じていなかった解放感が身を包んだ。


それは例えるなら陸に上がった魚が海に帰るような、そんな解放感である。

前方に視線を向ければ、律儀にもこちらの準備が終わるまで待っていてくれたファーフナーが立っている。


『どうやら、準備の方はいいようじゃな。まさかお主一人で妾の相手をするつもりかえ?』


「ああ、その通りだ。安心してくれ、失望はさせないと約束しよう」


言葉を伝えるのと同時に、思わず口の端を吊り上げてしまう。

自身でも興奮を抑えられないときに出る癖だ。

その表情を挑発と受け取ったのか、犬歯をむき出しにしてファーフナーが吼える。


『アッハッハッハッハッ! 人間風情がようほざいてくれたわ。ならばその自信、どこまで持つか試してくれようぞ!!』


瞬間俺がヘリオトロープをシャに構えるのと同時、爆発的な速度でファーフナーが腰に挿した刀を抜き放ち突進してきた。



後書きぽいもの


取り敢えず小休憩!的な感じで戦闘再開は次回からです。

次回ちょっと長めの文章になると思うので、明日更新できるか・・・。


関係ない話ですが、他の小説書いている方たちって書く速度ってどれくらいなんでしょうかね?

自身はおおよそ3000字(1話相当)書くのに1時間15分~2時間程かかるのですが。

揺れ幅が大きいのは難産であったり、筆が乗ったり乗らなかったりとw


もしよければ参考程度に感想と一緒に書いてくれると助かります。


それでは、評価や感想、誤字脱字等、心よりお待ちしております!

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