7話
消えたデータの復旧してたら筆が乗って何時もより進んだので、寝る前にもう一話投稿しておきます。
5/8 ご指摘により一部修正
6/20 指摘により、感嘆符・三点リーダを修正
休憩を終えた俺たち三人は、山頂部を目指して進んでいる。
途中二度程中位竜と戦闘になったが、竜の涙も落とさず結局現在俺たちが居る山頂部入り口まで来てしまった。
「ここが山頂部入り口だ、ベテランのPTでもそれなりの確率でデッドする難所でもあるから気をつけてくれ」
特にエリナは山頂部に踏み入るのは初めてだったはずである。
「はい、私は支援がメインですから。お気遣い有り難う御座います、お兄様」
「アホですね。アリアがこんなところでデッドする筈がありません」
なかなかに心強い言葉をいただき、俺は安心してその足を進めていく。
標高にするなら既に6000メートル近いだろうか、イヴァール山脈にきて既に3時間が経過している。
周りを見渡せば中腹に立ち込めていた霧もなく、壮大な景色が広がっているのが見えた。
下を見渡せば分厚い雲が見え、周囲を見渡せば灰色の石柱が幾つも天に向かって聳えている、足場は比較的安定しており、中腹よりは戦いやすいだろうか。
下界より遥かに空気が薄いこの場所は、油断すればあっというまに体力を持っていってしまう。
歩き始めて数分、俺は片手で二人の進行を止めるよう合図した。
「お出ましのようだぞ。この気配の濃度、間違いなく上位竜だ、エリナは下がって。アリア、済まないが一分でいい、時間を稼いでくれ」
side アリア
上位竜相手の時間稼ぎ、それは普通のプレイヤーなら不可能と断言できる行い。
それなのに彼はアリアに一分稼いでくれ、そう気負った風もなく言ったのです。
その言葉に含まれる信頼が、アリアには嬉しい。
彼が一分と言った、それはつまり一分あれば上位竜さえ仕留めれる魔法、もしくは剣技が発動できるという証。
アリアは知っています、彼がこの世界において比類なき実力の持ち主だと言うことを。
彼は知らないでしょう、過去幾度も巡る同じようなやり取りを行う度に大きくなるアリアの鼓動に。
ともすれば彼に聞かれてしまうのではないか、そんな心配をしてしまうほどの歓喜に。
だってアリアは、彼に救われて、その背中を見つめながらここまで来たのだから。
いつの日か、来るかも分からない彼の力と成れるその日に備えて、隣に立てるように力をつけていく日々。
だから、アリアはその信頼に応えられるように気持ちに蓋をします。
表情に乏しい自身に感謝を何度したことか分かりません。
そして、何時ものように答えるのです
「ペットの頼みを聞くのは飼い主の役目、トカゲの時間稼ぎくらい1分でも2分でもお茶の子さいさいです」
と。
side end
「ペットの頼みを聞くのは飼い主の役目、トカゲの時間稼ぎくらい1分でも2分でもお茶の子さいさいです」
何時もどおりに毒を吐いたアリアは、両手の剣を前方に油断なく構える。
同時にエリナの補助呪文、強化呪文が次々とアリアと俺に掛けられていく。
そして一通りのバフを掛け終わるのと同時、ソレは現れた。
「なんじゃ、人の子の気配がすると来てみれば警戒心全開ではないか。そんなに構えんでもよいぞ? 退屈凌ぎに妾は来たまでだからの」
その姿に思わず脱力しそうになるのを堪えるのと同時、システム音が鳴り響いた。
『クエスト、ファーフナーの試練が発生しました。強制イベントです』
「お、お兄様こ、これは一体?」
エリナが動揺した声音でこちらを伺い見る。
俺も何が何やらさっぱりなのだが……
攻略サイトの関連にすら載っていない情報だし。
アリアに至っては何故かぽか~んと目の前に現れた童女を見ている。
それは例えるなら悲壮な決意をいきなり挫かれた後のような……
そう、俺たちの前に現れたのは見た目10歳にすら満たないように見える童女だった。
濃い紫の髪は長く膝まで綺麗に伸びている、瞳も黒に近い紫紺で、その瞳孔は縦に開いている。
小さな顔にこれまた小さな小鼻、ぱっちりした目に艶めいた赤色の唇、肌はまるでアラバスターの如き白さ。
見た目に裏切ってどこか色気すら感じられるその姿に、魅入ってしまいそうになるのを頭を振って振りほどく。
しっかりと観察してみれば服装は何故か天女の様なもので、羽衣がゆったりとたゆたっている。
童女はさっきの言葉を発した後、こちらを見つめるだけで行動に出ない。
「取りあえず、アリアとエリナもクエストの内容を確認してみてくれ」
「あっ、はい。分かりましたお兄様」
「……ん、分かった」
クエスト:ファーフナーの試練
難易度:???
条件:イヴァール山脈山頂部にPTで尚且つ平均レベルが75以上で訪れること。
更に、一週間に一度現れるファーフナーの出現時に訪れること。
内容:邪竜ファーフナーは一週間に一度、どこからともなくイヴァール山脈山頂部に訪れては、周りの生物に戯れで戦闘を仕掛ける。
このままでは被害が拡大する一方だ、なんとかファーフナーを打ち負かし被害を未然に防げ。
報酬:????
「お、お兄様。これって所謂レアイベントに該当するのでは?」
「ああ、俺が過去幾度も来てたのに発生しなかったのはPTが条件だったのか……」
「アリアはこの報酬の???? が気になります」
軽く状況の確認を終わらせるのと同時、今まで黙っていたファーフナーが口を開いた。
「話は纏まったようじゃな。妾は退屈しておっての、偶にこうやってここに訪れては勝負を仕掛けて遊んでおるのじゃ。しかし如何せん、竜も人もエルフも魔人も獣人も妾に比べれば脆弱よ……。うぬらは妾を楽しませてくれるかえ? 見事打ち勝って見せれば褒美を取らせようぞ!」
その最後の台詞と同時、童女の姿であった筈のファーフナーが濃い霧に包まれていく。
霧は徐々に膨張していきやがて晴れていった。
そして、そこに現れたのは全長15メートルを優に超える巨竜。
姿はまるで昔はやったドラゴ○クエストの現代リメイク版の竜王とそっくりである。
ただ、違う部分をあげるとすれば竜王が男性なのに対してファーフナーが女性であることだろうか?
いやいや、そんなことはどうでもいいから。
俺は素早く探査魔法ライブラをファーフナーに掛ける。
邪竜ファーフナー
称号:邪神の加護
レベル:80
属性:暗黒+
総合戦闘能力:A-~A+(HP減少による逆鱗の効果によるステータスUP)
HP????
MP????
SP????
特徴:遥か昔からこの世界で生きる邪竜。邪竜と言っても本質が悪と言うよりその属性による区分である。
その戦闘能力は既に下級神クラスをも凌ぎ、その竜の吐息は天をも焦がす。
総合戦闘能力A+!? 俺で通常A、バフや装備込みで漸くA+だぞ? どんな化け物だよ。
しかも明らかボスクラス、HPやMP、SPに至っては此方を大きく凌駕するだろう。
間違いなく過去最強の相手だ、正直俺一人なら厳しかったかもしれない。
だが、今回は信頼に足るメンバーが二人も居る。
いける、エリナは総合戦闘ランク自体はC+だが支援特化なので問題ないし。
アリアに至っては通常でB+、装備やバフも加えれば(アリア自身は支援呪文が使えないが)A-にぎりぎり届くレベルだ。
呼吸を整える、大丈夫、さぁ指示を出そう。
「二人とも、エリナは何時もどおり支援重視で特にHPに気を配ってくれ! アリアは一撃貰うと危ないから、攻撃よりも回避重視で一撃離脱を中心に。俺はある程度まで削る為に前衛で壁役兼アタッカーをやる! 散開!!」
「「了解!」」
天をも揺るがす咆哮と共にファーフナーが此方に向かってくる。
その身より放たれる覇気が自身に叩きつけられた。
咆哮と呼ばれる上位竜独特の精神攻撃、いや、生物としての格の違いが下位にあたる俺たちには攻撃のように感じるだけなのだが。
それをやり過ごし神剣ヘリオトロープを星眼に構える。
『用意はいいようじゃな! さぁ足掻いて見せよ、か弱き神の子等よ!!』
後書きぽいもの
一言・・・「どうしてこうなった!?」
データ消失前の話じゃファフさん実は人型にはならないんです、それなのに気づけばご立派な童女さん・・・。
べ、別に作者の趣味じゃないんだからねっ!?(誰に言ってるww
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