流転の國 ティータイムの前に②
シロマが目覚めるのを待つルーリ。
マヤリィ様と過ごすティータイムの為の洋服選びはここからが本番です。
「…………」
気付くと、ソファの上だった。
ここは衣装部屋。シロマの身体には毛布がかけられている。
「ルーリ様…!?」
慌てて飛び起きると、ルーリは何事もなかったような顔でシロマに微笑みかける。
「目が覚めたみたいだね」
「はい…。あの、先ほどは……」
ルーリの美しい笑顔に見とれながら、シロマはようやく自分の身に起きた出来事を思い出す。
「悪かったよ、シロマ。貴女が可愛すぎて、身体が黙ってなかった」
既にルーリは来た時と同じ服装に戻っている。
今日の衣装はワインレッドのロングドレス。シンプルなデザインながら、ルーリのスタイルの良さを強調している。
一方、シロマは自分の今の姿を確認する。
「これは…ワンピース、ですか…?」
シロマは新しいブラジャーとショーツの上に、スリップを着せられていた。
キャミソールワンピースのような形をしたベージュのスリップ。シロマがこれを着用するのは初めてだった。
「淡い色の洋服を着る時に必要なアイテムだ。それを着ていれば、下着の色が透けることもない。…例えば、こういう服を着る時にな」
そう言うと、ルーリは白い膝丈のワンピースを手渡す。
「これは……?」
「シロマに似合う服がないか探してた時に見つけたんだ。…よかったら着てみてくれ」
「ありがとうございます、ルーリ様。…されど、坊主頭の私にこんな可愛らしいワンピースは似合わないのではないでしょうか…?」
シロマは手渡されたワンピースにときめきつつ、髪型とのギャップに戸惑う。
「大丈夫。ウィッグもあるから、好きなヘアスタイルを選んでみるといい。…せっかくのマヤリィ様とのデートだろう?」
ルーリは既に幾つかのウィッグを用意していた。
「さて、シロマちゃんの好みはどれかな?…剃髪する前はどんな髪型だったの?」
「ロングヘアです。…顕現した時には腰まであったのですが、魔術訓練の際に煩わしくなり、邪魔にならないようにと思って丸坊主にしてしまいました」
シロマはそう言って微笑むと、
「ルーリ様。ウィッグを貸して頂けるなら、ショートヘアがいいです。…やってみたことがありませんので」
そして、ルーリが用意した中からシロマが選んだウィッグは、茶髪のショートボブだった。
ワンピースの可愛らしい雰囲気ともよく合っている。
「前髪、長すぎない?少し整えようか?」
「よろしいのですか…?」
「これは貸し出しじゃなくて、シロマのウィッグだからな。…そのワンピースも靴も、ここに返しに来る必要はない」
ルーリはそう言ってシロマを椅子に座らせ、彼女と相談しながらウィッグの長さを調整した。
「この髪型、とても可愛いです…!」
仕上がりを見て嬉しそうに笑うシロマ。
ルーリは彼女が小さな鏡を覗き込んでいるのを見て、
「可愛いのは髪型じゃなくてシロマだろう?…ほら、姿見は向こうだ」
ワンピースにショートボブ姿のシロマを姿見の前まで移動させる。
清楚なイメージの彼女に真っ白なワンピースはよく似合っていた。
「シロマは可愛いから何でも似合うと思うけど、とりあえず正統派で決めようかと思ってさ。…それとも、もう少しセクシーな方がいいかな?」
それを聞いて、シロマはルーリのブラジャーを思い出す。
「い、いえっ!私には露出度の高い服装はちょっと…。胸もありませんし…」
「いや、そんなことないよ。だって…」
マヤリィ様はもっと小さい、と言いそうになってルーリは黙った。
「だって…何でしょうか?」
こういう時に限って続きを聞かれる。
「ほら、ブラジャーを選ぶ時にサイズを測らせてもらったから。シロマの胸が小さくないことは知ってる」
「っ…!」
シロマが絶頂を迎えて気を失っている間に彼女のバストサイズを測り、可愛らしいブラジャーとショーツを選んだルーリさん。
「私イチ押しの可愛い上下セットを選んだから、今夜、着替える時をお楽しみにね」
「〜〜〜〜!」
文字通りのトータルコーディネート。
シロマは先ほどの恥ずかしさを思い出し、再び顔を真っ赤にするのだった。
余談。
シロマは流転の國に帰還したクラヴィスに会いに行く時、この日ルーリに選んでもらった服を着てショートボブのウィッグを被った。
そして…
「ルーリ様が可愛らしいブラジャーを選んで下さったお陰で、クラヴィスを第2会議室に誘える…!」
思いがけずシロマに女としての自信を与えたルーリの下着選び。
ルーリ本人は知る由もないが、クラヴィスが帰還したその日、シロマはそれを身に付けて彼の部屋を訪ねたのだった。
修道女ゆえにそれまで質素な下着しか持っていなかったシロマの為にルーリが選んだ可愛らしいブラジャーとショーツのセット。
シロマがクラヴィスと結ばれたいと願った時、それが彼女を後押しすることになりました。
実際、サキュバスセレクトの勝負下着(?)を身に付けたシロマさんはなかなかに積極的でしたね(「新しき顕現者⑱」参照)。




