61話 三者面談(ヴァロ・ウェールスキー)
続いて入って来たのはヴァロ・ウェールスキー。
ユーラシアと同い年で、既に身長が百八十を超えているヴァロとともに入室して来たのは、二メートルは超えていそうな大男だった。
椅子に腰掛けると、「ギィ」と椅子が軋む音が教室内に響く。
感じる魔力は大したことはないが、大男二人が小柄な女性二人の前にいると言うだけで圧迫感が半端ない。
しかしそんなことを気に留めていては仕方がないので、早速面談を始める。
「そういえば、試験前と比べると、どこかすっきりとした表情をしているな」
「まぁ、自分の中で燻っていたわだかまりがなくなったまではいかねぇけど、随分とマシなくらいには消えたってことだな」
バベル試練直後のヴァロは、とてもピリピリした空気感をしており、周囲の者にそのイライラをぶちまけていた。その主な被害者がシュットゥであり、レインであった。
しかし彼らはヴァロの直接的なわだかまりの原因ではなく、おそらくはユーラシアがヴァロの中に燻るわだかまりの原因である。そしてそのことは、当然担任であるエルナスとミラエラには筒抜けであった。
今日は、そのことを主な話題として面談を進行していく予定であったため、バベル試練の選抜者となったことや授業態度、ダンジョン試験の評価などを交えてヴァロの父アフガン・ウェールスキーとの面談を進行していった。
「いやぁ、先生方もクラスメイトもいい人そうでよかっただよ。実はオデ心配してたんだ。ヴァロはこんな性格だから友達が一人もできねぇんじゃないかって」
少し特徴のある話し方と一人称の父親だが、人様のことなので、特に触れることなく会話は進行する。
「今も別に友達がいるわけじゃねぇよ」
ひねくれた口調で照れくさそうに言葉を発するヴァロ。
しかし、ダンジョン試験でユーラシアに仲良くなれるかもと言われて嬉しく思ってしまったのも事実なため、決して友達が欲しくないというわけでもないのである。
「こんなこと言っているだが、本心では欲しいと思っているだよ。だって、こんな嬉しそうなこの子の顔見るの久しぶりだぁ」
アフガンはヴァロの頭を優しく撫でると、ほっこりとした優しい笑みを浮かべる。
ヴァロもその手をはたく素振りすら見せず、アフガンにされるがままの状態。
「学園では寮に入っちまったせいで、会えなくなるのが最初はすごく寂しかっただよ。だけど、ヴァロが楽しそうでなによりだ!」
ミラエラとエルナスは見ていた。ヴァロとユーラシアが試験三日目の朝に何やら言葉を交わすところを。そしてそれこそがヴァロの表情が明るくなった要因であることも。
試験前の険悪な空気感からどうなることかと思いもしたが、ヴァロはもう大丈夫だろう。残るはレインとシュットゥだが、二人に関しても既に決着はついている。
「もうすぐ学園も一ヶ月の長期休暇に入ります。休暇中は、家族水入らずの時間を思う存分楽しんでください」
「んだ!」
「ったく、親バカすぎて恥ずかしぃったらありゃしねぇぜ」
時計を見るや否やいち早くヴァロが席から立ち上がり、続いてエルナスとミラエラ、アフガンが立ち上がり同時に頭を下げた。
こうしてヴァロの面談も終了し、本日の面談は全て終了した。




