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319話 疑心の芽
西側領土の夜から、突如一切の光が奪われる。
空一帯が魔力で覆われ、地上で暮らす誰しもが状況を理解できないまま、闇は地上へ落とされる。
しかし次の瞬間、闇は突如として真っ赤な炎に包まれ、そうして再び月の光が地上を照らす。
ある国は希望を抱き、またある国は絶望の色を濃く示す。
人々の記憶に焼きつく絶望の象徴「竜王」がついに人類へと侵攻を開始したのだと。
しかしそうではないことは、西側領土で唯一、オルタコアスの者たちが気づいていた。
一体何と竜王が戦っているのか、それは誰にも分からない。
ただ分かるのは、竜王がその身を犠牲にして、自分たちを守ってくれたのだという事実。
再び夜に呑み込まれる西側領土。
しかし次の瞬間には、真っ赤な炎が夜を呑み込み、月の光が地上を照らす。
——————守ってくれているのか?
そんな疑心が、次第に西側領土の人々から生じ始める。
しかし歴史上人類最大最悪の敵として君臨している竜王が、人類を助けるはずがないという矛盾により、至るところで葛藤の渦が巻き起こる。
しかしそんな些細な感情の蠢きなど関係なく、上空の戦況は瞬く間に変化する。
地上含めた西側領土一帯が白い霧に包まれた直後、無慈悲な刃が地上の命へと牙を向く。




