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竜魔伝説  作者: 融合
復讐編
317/324

316話 悪戯な悪意

「お前は、あん時の——————」

 元々魔大陸へと赴いた理由はギムルら異世界の邪神に会うためだったが、突然の出来事にユーラシアと言えど動揺を隠せない様子。

「随分面白い存在になったみたいで俺は嬉しいぜ。前に会った時は、明らかに場違いなカス程度にしか思ってなかったからよ」

 ギムルの発言に嘘偽りは一切なく、ウィータルでは最強の竜王でも、ギムルにとっては赤子以下の存在だった。

 しかし今は、ギムルの心高鳴らせる存在にまで登り詰めてくれた。

「その割に俺と服装は被るしよ。まぁ、あん時は優哉・・・・・じゃなくてアートに免じて生かしといてやったが、今じゃその甲斐あったって感じだな」

「何を言ってるのかさっぱりだけど、邪魔しないでくれるかな?」

「ああ?」

 ギムルは異世界の邪神であり、今では先ほど勇者を牽制した威圧感の一切を感じさせない笑みを浮かべているため、状況を理解できていないエメラルは無謀にもギムルに怒りの矛先を向けてしまった。

 当然ギムルがそんな態度を許すはずもなく、たった一睨みでエメラルの四肢を捻り潰すと、突風による衝撃でエメラルを王級界の彼方へと吹き飛ばす。

「勘違いしないでくれよ? 確かに俺はお前らとお前らの世界に興味を抱いてるが、争おうだなんておもってねえぞ。勿論アートともな。ただよぉ、こうなんつぅかさ、ただ見てるだけってのも案外飽きてくるものなんだわ」

 ギムルの話などまるで理解できないが、招かれたのならば目的を果たさなければならない。

 シエルの件もエメラルが消えたことにより一先ずは解決したため、ユーラシアは息を吐き鼓動を落ち着かせる。

「ハァ」

 ギムルはウィータルが存在する世界の邪神ではないが、邪神の力と記憶を取り戻したアートの恐怖がユーラシアの細胞へと刻み込まれていることにより、無意識にギムルの前でも緊張してしまっている。

 その緊張を隠すかのように、力強い瞳をギムルへと向けた途端、ギムルは面白そうにニヤリと再び笑みを浮かべた。

「なんか聞きたいことがあるっつう顔じゃねえかよ。それじゃあこうしようぜ。お前の質問に何でも一つ答えてやるよ。その代わり、俺も仲間に入れてくれ」

 思いがけない提案にユーラシアと勇者は眉を顰める。

 太陽の意思は、状況が理解できていないながらもギムルの強さを警戒し、ずっとシエルの近くで座り込んだまま。

「んで、何にが知りたい?」

 気前よくまずは自らが約束を果たす姿勢を見せるギムル。

「オレたちの世界にいる邪神の居場所を知りたい」

「あー、なるほどな・・・・・」

「どうした?」

「それがよ、俺にも分かんねえのさ」

「は?」

「は? じゃなくて、俺にもあいつがどこにいんのか分かんねえんだよ。まぁ、方法はあるにはあるけどよ、あんま進めはしねえぜ?」

 そう言いつつも、心なしかギムルの声色が高く弾みを帯びているように聞こえた。

「その方法ってのは——————」

「ユーラシア、なんか嫌な予感がする。少し待った方が———————」

「他に方法はねえんだ。それに、邪神の居場所が分かればユキの居場所だって分かるかも知れねえんだぞ」

「それは・・・・・」

「構わねえ。その方法ってのを教えてくれ」

「おう」

 ギムルは無意識に漏れた笑み隠すように俯く。

「オレは何をすればいい?」

「いや、何もしなくていいぜ? だってよ、この方法ってのは、お前の望みも、そんで俺の望みも叶えられる一石二鳥の最高のモンだからよ」

 そうしてギムルが視線を向けた先にいたのは、ユーラシアでも勇者でもなく、太陽の意思。しかしその瞳が捉えるのは太陽の意思ではなく、意識を失い今尚地に横たわっているシエル。

「あ?」

 ユーラシアが不審に思った時には既に手遅れだった。

 一瞬にしてシエルは人の姿からエルピスとしてのペガサスの姿へ変身すると、純白の肌は瞬く間に夜空に包み込まれたような何種類もの色を組み合わせた黒に近い色となり、紫色のオーラが周囲には揺らめき始める。更に、まるでユニコーンのような漆黒に染められた角を額に生やし、両翼は先ほどよりも一回り大きなモノへと変化した。

 瞳は黒く覆われ、意思が通じない相手であることをユーラシアは直感する。

「シエルに何したんだよ‼︎」

 ユーラシアは竜の姿のまま容赦なく叫び怒りを露わにする。

 王級界の大気全体が振動する。

「何って、俺特製の破壊兵器を作り出しただけぜ? ほら、追わなくていいのかよ」

「ッ⁉︎」

 気がつくとシエルの姿はそこにはなく、背後の空間に漆黒の穴が生じた状態となっていた。

「お前ぇ‼︎」

 太陽の意思は人の身を捨て、その身を燃えたぎる炎で包み込む。

 直後、王級界は真っ赤な炎に侵食された。

「お前も中々面白いじゃんかよ」

「オデの美しいを汚したお前は、許さないぞ‼︎」

 更に燃えたぎる炎の渦。

 ギムルはその熱さなどもろともせず、蝋燭の火でも消すかのように息を吹いた次の瞬間、太陽の意思が纏う炎以外の全ての炎が消失した。

「なっ⁉︎」

 これには太陽の意思は言葉を失う。

 しかし、勇者は炎を防ぐのがやっとだったため、今何が起きたのか理解できずにいた。

 一方のユーラシアは、ギムルへの怒りを何とか呑み込み、一人シエルの後を追いかけるのだった。


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