314話 罠
一人、別の世界に存在している邪神に通じる手がかりを探す勇者。
あちこちが凸凹した地形となっており、とても手がかりなど見つかる気がしない。
「あれは・・・・・?」
勇者の視界へと一箇所のみ地形の盛り上がり方が歪な箇所が飛び込んできた。
それは山のようであり、目を凝らしてみると瓦礫が重なった集合体であることを理解する。そして、魔大陸に存在する建物でまず始めに思い当たったのは、かつて激戦を繰り広げた場所でもある魔王城。
今は立派さなど見る影もなく、跡形もなく崩れ去っている。
「ユーラシアは、邪神である元魔王と異世界の邪神に会いに行ったことがあると言っていたよね?」
「そうだな。そんで異世界の邪神に繋がる扉があるとも言ってたな。それってさ、魔王城にってことなんじゃない?」
「僕もそう思う。そしてこの世界から行けるとなると、魔法陣——————」
「最高神の記憶から魔法が存在するのはこの世界だけみたいだけど、まぁそれはこの際置いておくとしてさ・・・・・本当に魔法陣が描かれていたんだとしたら、この有様は随分と絶望的じゃない?」
魔法陣は通常、魔法を使用する際に魔力を込めるため視認する必要がある。
この山のような瓦礫の残骸からたった一つの魔法陣を見つけ出すのはかなりの困難を極める。
それでも、勇者には諦められない理由がある。
勇者は瓦礫一つ一つを端から順に手探りで調べていく。
例え魔法陣が崩れていたとしても、瓦礫と瓦礫を組み合わせることで魔法陣の構造さえ把握できれば、真実の魔眼を持つ勇者ならば復元が可能。
するとここで、ヒナタがあることに気がつく。
それは、山の頂上部分に見える一際大きな瓦礫。
他の瓦礫は細かく粉砕されているというのに、それだけは3メートルほどの大きさを保ったまま瓦礫の上に置かれている。
素材はガラスであり、表面には傷一つついていないことが伺える。
裏返してみても特に魔法陣らしき模様は描かれていないが、どうしても引っ掛かりが取れない。
「魔力を込めてみるか」
「そうだね」
恐る恐る魔力を込めた瞬間、一瞬にして辺りの景色が変化する。
まるで異次元。
絶えず動き回る黄金色の鉄格子と、それらの隙間から照らされる眩い光。
眼光に直接光が届いたことで勇者は目を細める。
そしてしばらくして目が慣れて来た頃、すぐ近くから何者かの声が聞こえて来た。
「待ってたぜ。まぁ正確にはお前を待ってたわけじゃねえな。お前が道を開いてくれたおかげで一時的に俺の力を干渉させられるようになった」
「・・・・・誰だ?」
「あ? さっきから散々口にしてたろうがよ。俺はお前らの言う異世界の邪神だ。魔力や魔法なんてモノはねえから、見よう見まねでもっかい転移陣を作って見たが、無事見つけてくれてホッとしてるぜ。感謝だな」
「それなら、僕たちの質問に答えてほしい」
「あぁ?」
次の瞬間、今まで感じたこともない悍ましい気配と、絶望的なほどの実力差を感じさせられるほどの威圧感が勇者を襲う。
向けられた睨一つみで、勇者はその場から動けなくなってしまった。
「感謝してるが、てめえは俺に質問できる立場じゃねえんだよ。まぁ、役者が揃えば一つくらいなら聞いてやっても構わねえがな」
そう言うと、途端にのしかかっていた圧がスッと消える。
「はぁはぁはぁはぁはぁ——————」
「まぁ、少し待ってろ」
異世界の邪神であるギムルは、何もない目の前の空間へと手を翳す。
「来い」
たった一言。
そう呟いただけで一気に時空が歪み、強烈な磁場が王級界に発生する。
「ガハッ」
脳みそが押し潰されてしまうかのような強烈な錯覚に襲われ、勇者は血を吐く。
少しして時空の歪みが元に戻ると、勇者の横には先ほど別れたユーラシアと太陽の意思、そしてエメラルとシエルの姿があった。
「まぁ、干渉できるっつってもやっぱこの程度が限界か」
少し不満げにそう呟くギムル。
「久しぶりだな、赤いの」
ギムルは愉しげな笑みを浮かべて、竜の姿と化しているユーラシアへと視線を向けるのだった。




