表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜魔伝説  作者: 融合
反撃編
301/324

300話 迫り来る歪んだ想い

 ブラッドアイスに存在する国々は、各国の王の下、勇者が完成させた魔法陣へとひたすらに魔力を注ぎ続けていた。

 王族、貴族、民が一致団結して一つのことを成し遂げるその様は、緊急事態だというのに、人間社会の理想を体現しているかのよう。

 そうして次々とガンデルの下へと転移完了の知らせが思念となって届く中、ブラッドアイス一の大国であるムンテルダルクも後少しで転移が完了する段階へと迫っていた。

 現在進行形で結界に刻まれた転移魔法陣へと魔力を注いでいるのは、勇者、国王であるガンデル、ジルマとロシルア、そして国王配下数十名。

 元々万にも及ぶほどの兵力を王国は有していたのだが、ムンテルダルク各地と剣王堂の警備、先ほどのドラルドとトロプタと勇者の戦い、そして太陽の意思と竜王の激突の影響により、戦力は大きくばらけてしまった。

 遠方へと吹き飛ばされた者、地中や瓦礫に埋もれてしまった者たちと、勇者とシエルの全力の結界を有しても被害は甚大。しかし、幸いにも直接攻撃が当たったわけではないため、かなりの重症者はいるものの死者は国王の配下にはおらず、民たちは皆剣王堂に集まっているため、ムンテルダルクの人的被害の死者数は今のところゼロ。

 その事実を一兵士たちが知る由もないが、なんとか意識を保ち、戦意喪失することなく戦い続ける者たちは、命懸けで魔法陣へと魔力を絞り注ぎ続けている。

 息を切らせる兵士たち。もう限界は近いと見えるが、誰一人として倒れず、魔力欠乏を起こさないのは、シエルによる『白銀の贈り(クリスマス)』の効果である。そして転移させたはいいが、戦意喪失で動けない者たちもこの場には少なからずおり、その者たちにまでシエルは魔法を施し続けている。

 シエルは結界魔法も得意とするが、知っての通り防御系結界は、内側からの衝撃に強くない。そのため、自らの力を魔法によりムンテルダルクの全国民へと分け与えることで、あらゆるステータスをアップさせている。それは防御力も当然含まれ、魔法の効果を得た者の周囲を纏う魔力のオーラは、それ自体がバリアと化している。

 そのため、まず最初に限界を迎えたのはシエル。

「ハァハァハァハァ——————」

 今のシエルの元はペガサスなため、当然魔力樹は存在しない。故に、神の力同様に体内で力を生成するしかない。

 シエルは神の力を有しているわけではないが、最高神が使役していたユニコーンの派生形とされ、神の手から独立した一つの生命とされているため、魔力樹はなく、自動生成機関を有している。仕組みはこの場では省かせてもらうが、魔物や魔人のように『魔孔』を利用し、周囲の魔力を利用しているわけではない。故に『刹那凍刃』も、周囲の魔力に干渉したのではなく、あくまでも干渉したのは水分子であり、自らの魔力を飛ばしたにすぎない。

 詰まるところ、限界を迎えた今のシエルはすぐには復帰できないということであり、勇者を除く皆に施されていた『白銀の贈り(クリスマス)』の効果が消失する。

 その影響により、兵士たちもシエルに続いて次々と倒れ始める。

 ジルマとロシルアも魔力が枯渇してしまったらしく尋常ではない汗をかき、その場へと倒れ込んでしまった。

 そしてガンデルもまた、限界に近い。しかし、皆の命を預かる一国の王として、この場で倒れるわけにはいかない。後少しで転移魔法は発動する。それまでの辛抱だ。

 勇者もラストスパートに向けて、より一層の魔力を注ぎ込む。

 しかし次の瞬間、背後から魔力と神の力の両方の気配を感じ取る。

 魔力ならまだしも、神の力など、この場においては見過ごせるはずがない。そしてその現象に気がつけたのは幸か不幸か、シエルによる強烈なまでの魔力の気配が姿を消したため。

 勇者はすぐさま後ろを振り返る。

 それはシエルのすぐ背後に出現していた。

 始めは見間違えるほど小さな緑色の点だったのが、一瞬にして人一人分ほどの大きさへと変化する。見た目は緑色の炎ゆらめく円形の何か。

 しかし勇者はそれが何かを瞬時に察する。

 ———転移魔法だと———

 緑色の炎など、考えられるのは一人だけ。

「シエル‼︎」

 地面へとへたり込んでいたシエルだが、勇者の焦った叫び声にビクリと体を反応させ、更に背後から迫り来る悍ましさに体を震わせる。

 視線を背後へと向けた瞬間、姿を捉える前に視界一帯が緑の炎で覆い尽くされてしまう。

「捕獲完了〜」

 呑気な声が鬼気迫る戦場へと静かに響き渡るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ