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竜魔伝説  作者: 融合
反撃編
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299話 竜王の敗北

 竜王と太陽の意思との戦いは、海上から天空戦へと移行していた。

 始め周囲は雲で覆われ、既に地上の様子など見えなくなってしまうほどの高度へ達していたはずなのだが、両者が拳を交えるたびに周囲の雲は煙のように瞬く間に姿を消し、その衝撃は地上を揺らす。

 先ほどまでのユーラシアが人状態ならば圧倒的に劣勢だった戦況も、竜王本来の姿となり力を発揮することにより、全く差のない互角の戦いが繰り広げられていた。

 

「『サンシャイン』」

 

 やはり力任せの太陽の意思の大振りの姿勢には隙が多く、ガラ空きの胴体へと手のひらを添え、力によるゴリ押しではなく、魔法による策に出る。

 この技は、以前オーレルに使用したものであり、外側からではなく、内側からの攻撃となる。

 大抵どの種族でも、内側に弱点を持つ者は多い。

 太陽の意思はその姿を、宇宙に残した外殻のような球体へと変化させていく。

 もの凄い勢いで巨大化していき、その大きさはあの時のオーレル並みにまで到達する。

「えっ! これめっちゃおいしい⁉︎」

 しかし直後に響き渡ったのは爆音でも悲鳴でもなく、歓喜する声。

 それは紛れもなく太陽と化す存在から聞こえてきた。

「ありえ・・・・・ねえだろ。まさか、魔法が効かねえのか?」

 ユーラシアは、ユグドラシル時代含めて自らの力が通用しなかったのはたったの一人——————邪神だけ。かつて竜王の生を終えた時に対した最高神にさえ、竜王の炎の力は届き得た。

 しかし、得体の知れない目の前の奇怪な存在は、月程度ならば余裕で破壊できてしまうほどのユーラシアの魔力をあっさりと呑み込み、いつの間にか小さき姿へと戻っていた。

「ねぇ、今のもっとちょうだいよ」

 瞳に宿るは怒りと殺意。口元に浮かべられるは、未知の極上を味わったことによる喜びの笑み。二つが重なり、それはユーラシアに狂気を見せる。

「お前一体何なんだ? 何が目的だ?」

 しかしユーラシアが質問した途端、浮かべられた笑顔は一瞬で姿を消し、怒りの感情が全面に表へと押し出される。

「——————気持ちよく眠ってたのにさ、もううるさいんだよ! 殺せとか奪えとか、オデには関係ねえだろって!」

 感情は次第にヒートテックアップしていき、もう理性では歯止めが効かないほどに奇声を上げて取り乱すほどに。


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい——————うるさいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」


 奇声とともに発せられる莫大な量の熱。

 身体中を黄金色に発光させ、周囲には高密度に練られた真っ赤な炎のオーラが分厚く展開されている。

 先ほどまでの熱量とは比べ物にならないほどの熱さ。

 強靭な鱗に覆われているユーラシアの表皮から次第に湯気が立ち上がる。

 地上の海からも真っ白な湯気が巨大に立ち上がり、ユーラシアの視界を白く染め上げる。

「やっぱりな。お前の炎は、物理攻撃だと見做されんのか」

 魔力でも神の力でもない自然のエネルギーを秘める太陽の意思の炎は、ユーラシアに熱さによるダメージすら与え得る力。

 更に、あれほど巨大な魔力の塊を吸収したにも関わらず、一切の魔力の気配を感じないことからも、ユーラシアの炎の力を己のモノとして活用することもできるということ。故にユーラシアの魔法ではダメージを与えるどころか相手を強化してしまうこととなる。

 これではあまりにも分が悪い。

 

 (どっからだ・・・・・どっから来る?)

 

 直後、油断など一切していなかったはずだというのに、全身に電流が走ったようなビリっとした衝撃が走ると同時に、左の脇腹に異常なほどの痛みを感じた。

「グハッ!」

 「バキッバキッ」と不愉快な音を立てて自身の体にめり込んでいく炎を纏った紅き拳。

 拳の大きさは人間の子供程度の大きさなため、範囲は豆粒程度だが、尋常ではない痛みが全身を駆け巡り、気がつけば海面に突撃していた。

 巨大な水飛沫を立ち上げ蒸発していく海の水。そのまま竜王は何のクッションにも守られずに水の乾いた海底に激突。

 直後に周囲の波が一斉に押し寄せ竜王を覆い隠そうとするが、続けて地上へ現れた太陽の意思の熱によりまたしても視界一帯の海は蒸発。

 そのまま容赦なく竜王の全身へと休む暇を与えないほどの速度と威力の拳が放たれていく。

 絶え間なく全身をかける痛み。

 敗北による無力感。

 先を見据えた絶望。

 そしてプライドをへし折られた悔しさが一気に胸の底から込み上げて来るも、現状は力の差がありすぎて手も足も出ない。

「カハッ——————グゥ——————グホッ」

 これほどまで血を吐いたのは初めての経験。

 邪神との戦いは、戦いにならないほどの一瞬の出来事であり、なんなら一撃で決着がついてしまったために、何度も何度も血を吐くことはなかった。

 しかし今、凄まじい量の血液が自らの体内から溢れ出している。

 次第に意識が遠のいていく。呼吸は荒く、小さくなっていく。

 既に体に力は入らない。

 力尽き、竜生・人生合わせて三度目の敗北となる直前だった。

 無意識に、シエルの気配を感知する。そしてそこに、いてはならない憎き存在の気配が出現した。

「——————エメラル!」

 ユーラシアは閉じそうになっていた目をカッ開き、太陽の意思を片手で握りしめる。

 そのまま遠方へと投げ飛ばそうとするも、逆に自身が地面へと叩きつけられてしまう。

「クッ——————邪魔すんな!」

「それはオデのセリフ!」

 そうして両者は再び睨み合う。

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