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竜魔伝説  作者: 融合
希望編
195/234

194話 死したポーメル国

 門番の姿はなく、血と思われる跡が大量に壁へとこびりついている。

 遂に我慢の限界に達したケンタとルイスが吐いてしまう。

 アバランは冒険者を長年やっているため、多少は慣れているが、シェティーネとレインに関しても既に限界が近い様子。

 

「うそ、でしょ——————」

 唖然となる一同。

 門を抜けた先、更なる地獄が広がっていた。

 充満する血の臭い。

 息を引き取り倒れ伏す数多くのポーメル国の人々。

 まるで獣に食い荒らされたかのような酷い惨状と成り果てている。

 生きている者は見る限り一人もおらず、一方的な虐殺であったことは明らか。

 被害者に特徴はなく、老若男女問わず、子供にすら容赦なく牙を向ける始末。

 

 ポーメル国の地形は円形状となっており、それぞれの都市は半円の形で中央都市「カーディナル」を囲うようにして地形を形成している。

 カーディナルを含めて計七都市が存在している。

 その内二都市が何者かの襲撃により、甚大な被害を被ったことが判明。

 残る五都市の状況は、まだ掴めていない。

 

 シェティーネら五名は、何とかカーディナルの前方都市である「ウェストン」へと辿り着く。

 しかしウェストンもこれまでの二都市と何ら変わらぬ光景が広がっていた。

「マジかよ・・・・・」

 ポーメル国にもいくつもの冒険者ギルドは存在し、ポーメル国一と謳われるギルドはここウェストンに存在する。

 そんな冒険者ギルドですら、たった一夜にしてあっさりと壊滅させられてしまっていた。

 ゴールドハンターは所有してはいないものの、シルバーハンターの数で争えば、全冒険者ギルドトップと言っても過言ではないほど。

 ギルド内に散らばる死体の山には、アバランの顔見知りも数人混ざっていた。

 とうとうシェティーネとレインも限界に達してしまい、吐いてしまう。

「ついこないだまで学生だったんだ。しゃあねぇ・・・俺だって平静を保つのが精一杯だからよ」

「お父さんとお母さんは、大丈夫よね・・・?」

「代々引き継がれる称号とは言え、剣聖と呼ばれるに相応しい人たちだ。無事に決まっている——————」

 前方都市の有様を目の当たりにし、父と母の安否が心配になったシェティーネとレインは、途切れそうになる意識をなんとか保ちながら立ち上がる。

 そうして急いでカーディナルへと向かうも、広がるのは残酷な紅き世界。

 増大し続ける不安を押し殺し、レインのワープにより出た先は、両親の寝室。

 



「あ——————あ・・・・・ア————————————ッ‼︎」

 



 そうであっては欲しくなかった。

 考え得る最悪の光景が息子と娘の目の前に広がっていた。

「お父さん・・・・お母さん——————」

 膝から崩れ落ちるシェティーネ。

 暗闇に溶け込む何者かが、父と母の亡骸を貪っている。

「お前の仕業か・・・・・」

「——————まさか餌の方から来てくれるなんてなぁ」

 喰うことを止め、レインの言葉に反応を見せる謎の存在。

「まだまだ食い足りねぇと思ってたところなんだよ」

 身体中に存在する血に染められた鋭い牙。それら全ての口がニタァっとゾッとする笑みを浮かべてレインたちへと向けられる。

 あまりの恐怖に声の出せない五名。

 けれどアバランは、ブラックハンターとしての役目を果たすため、一人前へ出ようと一歩踏み出した瞬間——————

 

「え——————」

 

 刎ねられた頭が地面へと落ちる。

 切断されても数秒は意識を保てるほど、あまりにも素早く正確に落とされたアバランの首。

 次第にアバランの意識は消失し、死す。

「お、おい! 何だよ、これ・・・・・何でこんなことに何ってんだよ!」

 あまりの恐怖に耐えきれなくなってしまったケンタが身体をガタガタと震わせ、取り乱してしまう。

「最高だぜその恐怖。やっぱそうでなくちゃよ、ぶっ殺し甲斐がねぇってもんだ」

 目の前の存在の全身に存在する口が鋭い牙を見せ大きく開かれる。

 血に染まった赤き唾液がボタボタと地面へと垂れる度、ケンタたちの恐怖心は加速していく。

 最早誰一人逃げ出すことなどできないほど体が硬直してしまっていた。

 本能が逃げることを余儀なく知らせてくる。

 しかし逃げるための一歩がどうしても踏み出せない。

 例え動けたとしてもこの者からは逃げられないだろう。

 そういった恐怖による思考全てが避けようのない「死」の意識を刻み込む。

 

「そんじゃ、遠慮なく——————ガッ!」

 

 ケンタたちの目と鼻の寸前まで迫った「死」の気配は、突如頭上から現れた真っ白な魔法生物によって屋敷の床を突き破り、そのまま地中へとめり込んでいった。

「ヒュォォォン!」


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